【感想・ネタバレ】顔に取り憑かれた脳のレビュー

あらすじ

デジタル時代の今、ネット上は過度に加工された顔であふれている。これはテクノロジーの急速な発展がもたらした、新たな現代病なのかもしれない――なぜ、人間は“理想の顔”に取り憑かれるのだろうか。そのカギとなる「脳の働き」に最新科学で迫る。そこから浮かび上がってきたのは、他者と自分をつなぐ上での顔の重要性と、それを支える脳の多様で複雑な機能の存在だった。

鏡に映る「自分の顔」が持つ、新たな意味にあなたは驚くかもしれない。


【本書のおもな内容】
・脳の底に横たわる、巨大な「顔認識ネットワーク」
・加工写真に反応する脳の部位とは
・人が覚えている顔の数は…推定5000人!
・卒業アルバムを懐かしがるのは高度な能力
・偶然できた模様や形が「顔」に見えるふしぎ
・「つらい時ほど、笑顔」は間違い?
・赤ちゃんはサルの顔も見分けられる?
・「真の笑顔」と「偽の笑顔」
・まるで実在する人物。人工知能がつくりだす「存在しない顔」
・顔が果たす「通路」の役割とは

【目次】
第1章 顔を見る脳の仕組み
第2章 自分の顔と出会うとき
第3章 自分の顔に夢中になる脳
第4章 自己と他者をつなぐ顔
第5章 未来社会における顔

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

顔というのは人間の社会活動において欠かせない存在である。どの人種にも共通の感情を表すパーツであり、相手の能力や信頼性を判断する際の重要な指標となる。人間の目は他の霊長類よりも白い部分が多く感情を伝えやすく、自分の顔を他人の顔よりも歪んで評価しやすい。また、犬や猫は長年の歴史の中で人間が判断しやすい顔の表情を伝えやすいように進化して来たという観点も面白かった。この本の重きを置くところは、昨今のディープテクノロジーやバーチャル空間、AIの発達による顔を取り巻く環境の激甚な変化であり、初めて1万年前に現在のトルコで鏡が使われ始めた時と同じくらいの劇的な役割の変化が、私たちの周りで起き始めているのかもしれない。どうなるかは誰にも分からないが、人間が顔を通して悩むのは、犬や猫にはできず、鯨や像や人間にしかできない、鏡像的認知ができるゆえなのである。

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2025年06月21日

Posted by ブクログ

 ∵ という記号だけでも、何となく顔に見える。これが人間の脳機能であるが、本書は、こうした顔に関する最新研究の四方山に触れる内容だ。なんでそんな風に顔を認識する事が重要なのか、自他にとって顔の見え方はどう違うのか、表情の重要性、どれだけの数の顔を認識できる能力があるのか、などなど。美しい顔とは。

ー 紡錘状回、後頭顔領域、下側頭回の3つの領域が、それぞれ顔の要素と構成(全体配置)のどちらの情報表現により深く関わっている。…誰にでもパレイドリア現象は起きるので、人面魚ブームが起きるわけなのですが、レビー小体型認知症では、この錯視が特徴的な症状の一つとなっています。例えばなんでもない模様が顔に見えたり、壁の黒い点々が虫に見えてしまったりする、というケースなどです。

誰にでも、黒い点やシミが顔に見える機能が備わっている。これは、生きる上で必要な機能だったという事が本書で説明される。乳幼児が顔を持つものを識別できる必要が最初にあるからだ。

ー 人が知っている顔の数は、およそ5000人と推定されました。人間が維持できるソーシャルネットワークのサイズは100~250人と言われていますので、その数十倍もの顔を人は覚えることができるのです。このように大勢の人の顔を覚える能力があるおかげで、私たちは、世界を大きく広げることができるのです。ただし、顔を覚えている数の個人差はとても大きいようで、この研究では、人によって1000人から1万人の幅がありました。

ロビンダンバーの仮説ではネットワークで150人程度との事だが、認識するだけならば、人間の脳は5000人までいけるらしい。でも、名前まで5000人覚えられるだろうか。恐らく、この人見たことあるな、程度の話だろう。それならば納得感がある。

これも面白いなと思ったのは、以下の内容。

ー ニック・イーらは、アバターの見た目が、そのユーザーの気持ちや行動に影響を与えることを、ギリシャ神話に出てくる変幻自在に姿を変える神、プロテウスにちなんで「プロテウス効果」と名付けました。このプロテウス効果のすごいところは、アバターを1分間ほど操作しただけで、瞬時に自己評価が変化し、行動変容が起きる点です。アバターをツールとして使いこなしているだけでなく、自己の一部として取り込んでいるのです。

自己認識を向上すると人の態度が変わる。人間は顔や見た目に敏感であり、その見た目で瞬時に自己を含めた序列化をするような社会性機能が備わった生き物だ。顔に特化した興味深い内容だった。

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2024年09月27日

Posted by ブクログ

全5章にわたって顔の認識について考察。
1章2章の顔の認識と脳の働き仕組みや新生児がどのように顔を認識していくかなど詳しい説明。3章や4章は自分の顔への重要性、ドーパミンとの関連、そして他者の顔認識と自分の顔を使ってのコミュニケーション。表情へのこだわりも興味深かった。
AIやSNSにより顔の意味が変化している。他者への通路としての関係性がどうなるか興味深い。

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2024年04月12日

Posted by ブクログ

難しく、読み進めるのが大変
でも気になるテーマなので興味深く、最後の方は内容に慣れてスラスラと読むことができた

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2024年03月29日

Posted by ブクログ

 著者は「心」の仕組みを解明する研究に取り組む認知神経学者。脳神経学を軸に精神科学や文学の分野にまで切り込みながら、「自分の顔」にまつわる種々のテーマを掘り下げていく。

 まず1章で顔を認知する脳神経ネットワークが、続く2章で鏡に映る自分の顔を社会的文脈の中で象徴化された客体として解釈する能力の獲得過程がそれぞれ紹介されたのち、3章ではいよいよメインテーマとなる「自己の顔を編集することの喜び」が語られる。自分の顔を見ると脳幹のVTA(腹側被蓋野)という部分的が活性化されドーパミンが分泌されるのだが、このドーパミンは報酬に伴う快楽そのものではなく、事前に期待された報酬からの快楽と実際に得られた報酬からの快楽の開差に応じて分泌されるため、毎日見ることで刺激が薄れていく自分の顔からは次第にドーパミンによる報酬系の賦活化の度合いが逓減していく。その結果としてモチベーションの低下をもたらすため、我々の動機は自己の顔をより極端に編集・加工する方向にドライブされることになる。

 それではそもそも自分の顔を魅力的に見せることでこのような報酬が得られる理由は何か、ということになるのだが、それは自分の外見の内面化、すなわち本来自分では伺い知ることのできない自分の社会的評価を鏡や写真により知ることができるようになったという社会的・文化的要因によるのだという。しかも昨今では画像編集などで容易に自分の社会的容貌をコントロール下に置くことができてしまうのだから尚のことだろう。

 面白いと思ったのは、この報酬系のスキームを構成する要素には「他人からの自分の評価」は含まれているが、「他人の視点」そのものは巧妙に取り除かれているという点だ。他人の視点を内面化するということはすなわち「他人はこう自分を見ているはず」と自らを思い込ませることに他ならず、そうなってしまえばも最早本当に他人がどう思っているかは問題にならない。これが自己イメージの編集作業に、独り善がりな印象が伴う理由なのだろう。

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2024年03月02日

Posted by ブクログ

顔の写真加工の評価が、他人の顔に対するものと自分の顔に対するもので違う(自分の顔には強い加工を好む)とかって話はおもしろい。あれはへんだもんねえ。

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2024年05月21日

Posted by ブクログ

覚悟していたけど私には難しかった〜心理学的なところが知りたかったけどがっつり脳科学でした。2章はだいぶ飛ばしてしまった
内容としてはとても興味深かった

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2024年06月06日

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