【感想・ネタバレ】小説帝銀事件 新装版のレビュー

あらすじ

昭和23年1月26日、帝国銀行椎名町支店に東京都の腕章をした男が現れ、占領軍の命令で赤痢の予防薬を飲むよう告げると、行員らに毒物を飲ませ、現金と小切手を奪い逃走する事件が発生した。捜査本部は旧陸軍関係者を疑うが、やがて画家・平沢の名が浮上、自白だけで死刑判決が下る。膨大な資料をもとに、占領期に起こった事件の背後に潜む謀略を考察し、清張史観の出発点となった記念碑的名作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

事件を客観的にグイグイと。
果たして真犯人は?証拠なく検察側の都合の良いように積み上げられた事象で犯人とされた平沢。戦後の法改正寸前の混乱期の様がうかがえる。

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2025年04月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

レビュー
歴史の教科書などで子どもの頃から知っていた事件ではあったが、都心で起きた事件だったのねという程度の認識だった。3年ほど前NHKスペシャルの未解決事件ファイルを視聴したことにより、興味の扉が開き、底なし沼に落ちていった。
さらにその頃実家の墓探しをしており、椎名町の寺に墓見学後、後日帝銀事件はその寺のすぐ裏手で起きた事件だったことを知り益々事件が身近なこととして感じられるようになった。
私にとって松本清張は若い時分にもちろん読んだことはあったが、代表作を数点読むのみで当時はあまりハマらない作家だった。
帝銀事件は松本清張の作品をまず基礎知識として読まないと始まらないというわけで、この作品から読み始めた。
丹念に調べ上げて一応フィクションという設定で作られている。
これを読む限り、警察の捜査は旧日本軍の731部隊関連まで追求していたにもかかわらず、名刺捜索班からあぶりだされた画家を犯人に仕立てあげられてゆく。
その画家は、性格的にも金銭的にも清廉潔白ではなかったことが災いしてしまったという筋書き。
個人的には名刺捜索班からあぶりだされた容疑者の中に歯科医がいてこの人のほうがまだ怪しそうだったが、事件後死亡していたのでそれ以上の探索はできなかったようだ。凶悪事件には生きている犯人の逮捕が必要なのだ。
物的証拠もないのに自白があったり、アリバイがない(実際はあるのだが家にいた、家族と一緒にいたはアリバイにならない)ことで犯人に仕立てられてしまう旧法の恐ろしさも思い知らされた。
当時から何でも犯人はGHQがらみだという結論に不満を訴える読者はいたようだが、GHQ占領後まだ日も浅い時期にこの内容を小説という形でも発表できた松本清張という作家はあらためてすごい。
満足度★★★★
小説帝銀事件 新装版
角川文庫

著:松本 清張1909-1992
ISBN:9784041227695
。出版社:KADOKAWA
。判型:文庫
。ページ数:288ページ
。定価:600円(本体)
。発行年月日:2009年12月
。内容紹介
占領下の昭和23年1月26日、豊島区の帝国銀行で発生した毒殺強盗事件。捜査本部は旧軍関係者を疑うが、画家・平沢貞通に自白だけで死刑判決が下る。昭和史の闇に挑んだ清張史観の出発点となった記念碑的名作。発売日:2009年12月25日

以上出版書誌データベースより引用

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2024年05月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どのようにして、無実の人間が犯人に仕立てられていくのか、はたして平沢が本当に犯人なのか?疑問が残る実際にあった事件を記者の目線で書かれた小説。事件についての真相はわからず、作者も想像するしかなかった。

戦後という時代のGHQの影響力、細菌部隊(731部隊)の関与や陰謀説がしばしば噂された。

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2024年09月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

気になっていた事件。
ついに読むことができた。

タイトルに小説とついているが、
帝銀事件をそのまま描いている。
編集者があるきっかけでこの事件を調べ
まとめた形になっている。

帝銀事件は昭和23年1月26日に起こった
毒殺・強盗事件だが、
その手口があまりに手慣れていて
犯人は軍関係者だと目された。
しかし、操作は行き詰まり
名刺という証拠品から絵描きが浮上する。
物的証拠は間接的なものばかりなのに
強要された自白により
犯人とされ死刑判決を受けてしまう。
旧刑訴法では、自白を証拠とできたためだ。

この犯人はおそらく冤罪と思われる。
死刑執行はされず獄中で高齢でなくなっている。

この本は、事件の内容を
緻密に淡々と説明していて
なかなか読みにくい本ではあった。

操作資料や裁判資料をもとに事実確認をしていく。
犯人として疑わしい描かれ方をするとき
犯人かもしれないと思ってしまい、
また犯人ではあり得ないと主張されるとき
これは冤罪だと感じてしまう。
自分が簡単に説得されやすく
流されやすい存在だと気づかされた。
世論といったものも似たようなものだと思う。

GHQ統治下の時代の空気がわからないので
なんとも言えないが、この本は
事件の真実に迫ろうとする
危険も伴う作品なのではないかと感じた。
表向きは解決しているが、
本当の意味では迷宮入りしているこの事件に
問題提起する形で、小説というよりは
ジャーナリズムを感じる作品だった。


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2025年07月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 松本清張が描く、帝銀事件。

 平沢は果たして真犯人だったのか。犯行の様子、平沢の暮らしぶりから事件が書き起こされる。そのあとの捜査では、生存者の記憶をもとに作られた似顔絵と本人の自供をもとに平沢犯行説が組み立てられた。

 確かに怪しいところはあり、平沢が捜査線上に浮かぶのは無理はないが、犯行当日のアリバイや犯行に用いられた青酸化合物の入手経路が不明確。

 また時代背景としてGHQの影響力がなかったとは思えない。戦後史の闇。

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2023年08月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

帝銀事件が起きた昭和23年の日本は、連合国の占領下にあった。当時の日本人はもちろん、日本の様々な組織(検察・警察含む)にとってアメリカを中心とする占領軍は途方もなく巨大で、時には「壁」になったのだろう。
事件の犯人を旧日本軍関係者と睨んでいた警察捜査の主流は、「壁」にぶち当たってしまった。「壁」が旧日本軍のある一部に利用価値を見出し保護したからである。行き場をなくした主流が傍流の平沢貞通犯人説に殺到し、あれよあれよという間に平沢の死刑判決に至ってしまった。平沢自身、あまり素行がよくなかったことや脳の病気による虚言症などを抱えていたことがあり、自白重点主義の当時、心証の面で不利に働いただろう。
無関係の人が、時代や巡りあわせの悪さから想像もしなかった境遇に陥ってしまうことがある。これがフィクションでないことが恐怖である。

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2023年04月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

実際にあった事件を題材にした小説。
小説だけど、ほとんどノンフィクションのような形式。

この事件は犯人が逮捕され死刑判決まで出ているが、松本清張は元731部隊の人が犯人と推理している。
戦後、731部隊のノウハウが米軍に必要だったため、731部隊の隊員はGHQによって庇護された。
そのことを公にしたくなかったため、捜査の手が731部隊に及ぶと、GHQが邪魔をした。
と松本清張は推理を展開する。

いずれも何の証拠もなく、あくまで想像に過ぎないと思うが、一理あると思う。
ただし、冤罪なら誤認逮捕された人は、なぜ事件後、大金を持っていたのか。
そして、そのお金の出どころをなぜ言わないのか。この点が理解できない。

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2022年06月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

戦後の米国占領下時代に起こった実際の事件。
小説の中身の事はほぼ事実であろうし、松本清張は実際に
平沢氏の釈放運動を行っている。

当時の闇の部分が垣間見える事件ではあった。
小説は平沢・検事・弁護士のすべての3方面での主観を
記しているが、どれもが納得いくものであり、どれもが納得
いかない部分もある。

が、個人的な意見として、やはり平沢氏なる画家が、
手早く薬品を、威厳持ちながら堂々と扱えるとも
思えないというのが正直な感想。
あくまで、松本清張氏の小説、及び他から仕入れた資料による、
勝手な想像につきないが。

死刑宣告されながらも、執行されずに、最後は病で亡くなった
平沢氏が本当に無罪だとしたら、どんなに悔しいだろうか。


国家が人を食い潰す。
許されない事実だが、これもまた事実なのだと、思わざるえない1冊でした。

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2012年06月15日

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