あらすじ
気高い美女イザベラには婚約者がいた。が、冷酷ともいえる野心家ゲイブリエルに荒々しく抱擁されて彼女は悟った。この心の歪んだ男を救わなくては。彼女は婚約者を捨て、ゲイブリエルとの駆け落ちを決心する……新たな道へと歩む女の姿をキリスト教的博愛をテーマに描く、至上の愛の小説。
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Posted by ブクログ
探偵ものでないので、なぜだろうと思いながら読み終わって、
解説を読んでわかりました。「アガサクリスティ」の作品でないことを。
「メアリ・ウェストマコット」の第4作とのこと。
The Rose and the yaw tree.
というのが原作名とのこと。
内容からすると、こちらの方がピンと来ます。
作り、心理描写は、アガサクリスティものだという理解で読んでいて、違和感はありませんでした。
死に対する態度、人間に対する態度など、アガサクリスティの本質的なところがより強調されているような気もしました。
Posted by ブクログ
お世辞にも見た目が良いとは言えないが、天性の人たらしで自分の魅力をアピールする能力に長けたゲイブリエル。障害のために日頃腫れ物のように扱われるヒューに対しても一切気を遣わないゲイブリエルのあけすけなところに、ヒューはある種の感銘を受ける。人当たりのいいゲイブリエルがヒューの前でだけ仮面を脱ぎ、虚勢の下に隠された劣等感や弱みを曝け出す。ヒューの立場から彼を見るからこそ、読み手もゲイブリエルのコンプレックスと裏腹の虚勢を垣間見て彼の人間くささを感じ取ることができる。
ゲイブリエルとイザベラのどこまでも暗い逃避行。取り澄ました(とゲイブリエルが思い込んでいる)イザベラにどうしようもない劣等感を刺激されたゲイブリエルは、彼女を泥水に引き摺り込むも、彼女が汚れることはついぞなかった。どこまでも自分勝手だが、それこそがゲイブリエルにとっての苦しみ。そしてそれを見せつけられてもどうすることもできないヒューにとっても地獄。
兄嫁のテレサの存在がこの世界の秩序のように思える。