あらすじ
子どもへの性加害は、心身に深い傷を残す卑劣な行為だ。なかでも問題なのが、顔見知りやSNS上にいる〝普通の大人″が子どもと信頼関係を築き、支配的な立場を利用して性的な接触をする性的グルーミング(性的懐柔)である。「かわいいね」「君は特別だ」などと言葉巧みに近づく性的グルーミングでは、子ども本人が性暴力だと思わず、周囲も気づきにくいため、被害はより深刻になる。加害者は何を考え、どんな手口で迫るのか。子どもの異変やSOSをいかに察知するか。性犯罪者治療の専門家が、子どもを守るために大人や社会がなすべきことを提言する。
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Posted by ブクログ
「包括的性教育」の勉強をしていて、性被害を防ぐには「性加害者」について学ばなければならないと思い、この本を手に取りました。
以下、勉強になったことメモ。
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グルーミングとは、子どもと親しくなり、信頼関係を築き、その信頼を巧みに利用して性的な接触をすることです。オンライン、面識のない間柄、面識のある間柄の3パターンがありますが、オンライン、特にSNSでの接触が増えているようです。
(この本を読むとわかりますが、出会い系だけではなく、ゲームで有料アイテムのプレゼントなどから親しくなることもあるようです。)
2022年の内閣府の行なった16−22歳向けアンケート(6224人)のうち、26.1%に相当する人、つまり子どもの4人に1人が性被害にあっています。被害届を出したのはわずか14%。
子どもの容姿と被害のあいやすさは関係ない。
グルーミングの被害者である子どもは被害を認識できないし、加害者に洗脳されていることもよくある。
被害者が年月を経て加害者になることもある。加害者が刑務所で自分のライフヒストリーを書き出すことで初めて子どもの頃に被害に遭っていたことに気づくこともある。
加害ケースを読み、加害者の供述を聞くと、吐き気をもよおしました。加害者はいわゆる変態的な人ではなく、「大卒、サラリーマン、家族持ち」といった優しいその辺にいる人が加害者であることもよくあるようです。
グルーミングの5つのプロセス
①被害者の選択→自尊心が低い、孤立、貧困、物理的に父親がいない子ども(母子家庭)が典型のようです
②子どもにアクセスし、分離を進める→家族や友人から引き離し、「みんな君のことをわかってくれていないね」などと声掛け
③信頼を発展させていく
④性的コンテンツや身体的接触に鈍麻させる
⑤虐待後の維持行動→口止め、小遣いなど
「根底にあるのは男尊女卑の価値観ではないか」
小児性犯罪者が語る「かわいい」が質的には違う。
日本ではかわいい存在は、小さくて弱くて守るべき存在。日本では「男性は女性よりも優れていなければならない」という価値観が根強くあり、女性は「控えめで思慮深い」「やさしい」「思いやりがある」「気遣いができる」などを求められる。「女性が未熟であること」を評価する大人と、「絶対に脅かさない存在」である子どもの無知や弱さを巧みに利用する小児性犯罪者は男尊女卑という価値観において地続きの存在ではないか。(p.97)