あらすじ
『旧約聖書』に登場する、最初の人間アダムとイヴ。二人の名前は「禁断の木の実」「楽園追放」などのキーワードとともに語られ、日本人にとっても馴染み深い。しかし彼らの物語から生まれた、文化、思想、文学・美術作品の多様さは、私たちの想像を遥かに超えるものがある。本書では、美術史的な解説・解釈にとどまらず、アダムとイヴが歴史上いかに語られ、いかに現代社会に影響を及ぼしてきたかを探っていく。
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Posted by ブクログ
馴染みのあるテーマにも関わらず
違和感のある図像が多くあった印象。
自分は「その時代で異端でない」ものを
多く見てきただけなんだな。
『創世記』に人間の創造の場面が二度あるのが面白い。
イヴが生まれる前のアダムは両性具有なのかという問いは盲点だった。
「キリスト教は、イヴはアダムを唆したとして女性蔑視の傾向がある」だとか
「楽園を追放されたことは今に続く辛い現世の始まり」といった印象は、
確かにそう主張する勢力もある一方、
時代が下る中で有力な解釈になったり、
反対の主張の方がむしろ主流の時代があったり、
折衷案や全く別の解釈があったりと、
思想の多様さ奥深さを知ることができた。
表題をいい意味で裏切り、
カインとセトの記述も多いのも良。
宗教曲でよく聞く
「涸れた谷に鹿が水を求めるように/
神よ、わたしの魂はあなたを求める」の「鹿」は
楽園図で不可欠の存在だったんだ。