あらすじ
一章完結形式の新感覚の歴史大作!
日本古典文学史上の名作を、作家林真理子氏が換骨奪胎。「鹿谷の謀議」「一の谷の合戦」「壇ノ浦の戦い」「大原御幸」など、誰もが興味を惹かれる著名な場面、現代人の心に響く部分だけを抽出して鮮やかに再構築しました。スピード感あふれる展開! 美しい情景描写! さらに、平安時代末期の平家源氏皇室を取り巻く、ドロドロとした抗争に翻弄される人々の内面を、丹念に、リアルに描き出した部分は圧巻!
治部卿局、平清盛、平維盛、平敦盛、建礼門院徳子、二位尼時子、後白河法皇、源義経、阿波内侍と、人物ごとに全九章で構成される本作は、一章完結形式なので、前から順番に読んでも、どこから読み始めても楽しめる仕掛け。これまで「平家物語」には興味はあるけれど、前から長々続く展開に“途中で挫折した”という読者も、本作ではグイグイと引き込まれていくことでしょう。歴史ファン、古典文学ファンのみならず、現代小説のような感覚で楽しめる“令和の平家物語”になっています。
“滅びゆくもの皆美しく…。「平家物語」には日本美のすべてが凝縮している” と語る、林真理子氏、渾身の歴史大作、ここに誕生です!
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Posted by ブクログ
『平家物語』を治部卿局、清盛、維盛、敦盛、徳子、時子、後白河法皇、義経、阿波内侍、九人の視点から描く。とはいえ、物語の語り手は、立場も時間軸も様々で、明治の琵琶法師、死後の維盛、父の宗盛、時子に使えた女房だったという老女だったりもする。
個人的に好きだったのは、「五、二位尼時子」と「結、阿波内侍」である。この二つの物語は、なぜ戦に敗れ、滅亡した平家の物語が、今に伝わったのかを物語にしている。
「この頃、平家を懐かしむ方々が多くなり、私どもも呼ばれることが増えました。」
(中略)
阿波内侍は泣いた。壇ノ浦以来、これほど激しく泣いたことはない。やっとのことで尋ねた。
「そなたが語ったのは何というものだ」
盲目の法師は答えた。
「平家物語と申します」(p226〜227)
壇ノ浦で入水するも、源氏方の兵に引き揚げられ、生き残ってしまった徳子に付き従い、その最期を看取った阿波内侍。徳子も亡くなり、共に最後まで仕えた大納言佐も亡くなったのち、老いた阿波内侍は、近頃、「盲いた琵琶法師が、琵琶を奏でながら平家のことを語っている」のが都で流行していることを知る(p225)。折しも、その琵琶法師を呼ぶ機会を得た阿波内侍は、特に人気だという「大原御幸」の語りを聞いた。上のやりとりは、そのときのものである。
琵琶法師の語った「大原御幸」は、生き残った建礼門院徳子を後白河法皇が尋ねた際の話である。しかし、その物語は、阿波内侍が実際に見た光景とは随分と違ったものだった。
かなり違っている。あの日、建礼門院さまはこれほど長く、仏道のことなど話してはいない。
ただ短く、帝のご最期を話しただけだ。摘んできた花は、岩つつじではなく、藤のひと枝である。
おそらくあの場にいた殿上人の誰かが話し、そして誰かから誰かに長い時を超えて伝わったのだろう。(p227)
しかし、「阿波内侍は泣いた」のだった。
『平家物語』の素朴に読めば、平家は悪行を重ねたために、盛者必衰の理の下、滅んだことになっている。ただ、「五、二位尼時子」で、時子に仕えていたという老女が、幼い安徳帝を道連れに入水した時子を非難する人々に怒りをぶつけ、時子の為人を語ったように、平家の人々との思い出を大切にする人々もまた多くいた。そして、永久に平家の悪行を恨む人々も多くいた。そうした声の積み重ねによって、『平家物語』ができていく様が、本全体を通して描かれているのだと読んだ。
タイトルに『平家物語』を冠する程度に、この物語がいわゆる『平家物語』かどうかは分からない。細かい部分では、色々と違うのでは?、と思うところもある。ただ、それ以上に、長いし難しいし、名前も覚えづらいしで、何とも近寄り難い『平家物語』に触れるのに、とてもいい本だと自分は思った。
あの有名な序文を読んで、「かっこいい」「ちょっと読んでみたい」、そう思った中学生くらいの子たちに、おすすめしてあげたい。
Posted by ブクログ
学校で学んだり、壇ノ浦や那須与一の話は部分部分で知っていたけど、(それでも抜粋とはいえ)改めて全体像を読むことができて、まずは勉強になった。登場人物の立場それぞれに焦点が当たって、とてもやるかたない気持ちと、どこかすっきりとした潔さが伝わってきた。
Posted by ブクログ
年末に読んでいたが、面白過ぎて家事の手が完全に止まってしまった。幾つものストーリーに分かれており、その登場人物の立場や者の見方から話が進んでいく。こうも見える世界が各々によって異なるのかと、覗き見、なりきり気分で読んでいった。
安徳天皇の非業の死は、史実で知っていても切ないな。
林真理子さんの力量を感じた一冊だった。
Posted by ブクログ
いつか読んでみたいと思っていた平家物語。林真理子の現代語訳なので、難しく感じることもなくグイグイと平安世界に引き込まれた。
どこまでが原典に忠実でどこからが創作なのかはわからないが、登場人物それぞれに切ないドラマがあり魅力的に描かれている。最初から悲しい結末なのは知っていたけれど、それでもハッピーエンドを願ってしまう。
そして、作中で平家がおごっていたのは30年だったことを知り、盛者必衰の理とはこんなにも短かったのか…と感慨に耽った。
Posted by ブクログ
平家の絶頂期は、たったの30年だったんですね。
清盛1代のみ。
感慨深いです。
その30年を語る人を変え、物語が進んでいきます。
なんだか、物悲しさが漂います。
でも、源氏も正統な後継者は3代ですね。
しかもこちらは、血筋が正式には残っていない。
いろいろと考えさせられることが多い作品です。
Posted by ブクログ
初めて読む平家物語。
人物相関や歴史の流れはまだしっくり来ないが、当時の世情や殿上の暮らし振り、男女、親子関係など興味深く、一気に読み進んだ。
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平家物語の新視点。主だった登場人物それぞれの視点で物語が描かれている。古典文学だけれど読みやすく書かれていて面白かったです。人生まさに盛者必衰。いつか、になる前に壇ノ浦に行きたい。
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同名の本は何度か読んだ。けれど、この本は少し趣が違った。これまでの本は軍記物として重点が置かれて読んだ気がする。
この本は時間の進行よりも、それぞれの人物の内情に焦点を当てて描かれているようだ。それだけに、章ごとに話が中断する感じで、読み進むのに時間がかかり、正直面倒くさくて仕方がなかった。が、だんだんと引き込まれていく部分もあった。
最終章の阿波内侍の章は秀逸だった。記憶がないだけかもしれないが、あまり建礼門院のその後を詳しく読んだ覚えがない。文字通り、平家衰亡と歴史に翻弄された身の上、世の哀れさが結集されていたと思う。
Posted by ブクログ
初心者向け 「平家物語」って感じです。
史実に基づいた物語なので なんとなく概要はわかっていたけど 難解な人間関係 ころころ入れ替わる主従関係等 人物相関図や たくさんの注釈で わかりやすかったです。
それぞれの立場での構成の章も 面白かったし さすが 林真理子さん
Posted by ブクログ
読みやすいし、読み応えもありました。
林さんの言葉の選び方、視点を変えた平家物語が、逆に良かったです!
女性視点の場面も多く、大河ドラマで源氏方の視点を観ていただけに、その裏にある平家の心理が非常に感銘しました。
Posted by ブクログ
「六条御息所源氏がたり」のような
人間のどろどろした
林真理子流の心理ドラマを
期待したけど...
ちょっと消化不良な感じ?
平家物語のベース自体が
面白いので楽しく読めた
Posted by ブクログ
平家がどのようにして滅んでいったのかを、清盛、後白河法皇はもちろん有名無名の人々の視点から描いてて、角度を変えて滅びの様子が窺え面白い。
系図があるのはわかりやすくて良かったが、注解の字は小さくて読み難いので、あってもなかっても意味のない物だった。
Posted by ブクログ
歴史に疎く、原典のことも詳しくはない。ただ「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響あり」は頭の中にこびりついている。おそらく世界観を残しつつも大胆な構成で人の心の内情を描き直した力作なのだろう。しかし残念ながら、似たような人名に混乱し、移り変わる視点に混乱し、その関係性に混乱し、物語を十分に堪能することができなかった。自分のこの教養の無さが悔しくてならない。
驕りは人を滅ぼす、という教訓を残すために平家はあったのかもしれない。