あらすじ
家康が応じた密約を胸に、天下を半日で決着させた猛将・福島正則。蛍大名と侮られつつ、強かな籠城戦で西軍主力を翻弄し逆転劇に道を拓いた京極高次――。仕掛けあう豊臣恩顧の大名たち、糸を引く家康の水も漏らさぬ諜報網。戦国覇道のキャスティングボートを握った武将たちが、日本を最大震度で揺さぶった三つの謀略秘話。
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「秀吉の枷」における豊臣秀頼の父親に関する見解。
その見解を踏襲し、詳細を語るための短編集という印象。
「安土城の幽霊」の短編もそうだったけれども、
著者は茶器に強い興味を持っているんだな、と思った。
ちなみに、表題作を読むと福島正則への印象ががらりと変わる!
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徳川家康へと時代が変わりつつある時の短編集。
蛍大名の変身(京極高次)、冥土の茶席(島井宗室)、神君家康の密書(福島正則)。
どの話も歴史の裏側を読み解くもので、このような見方もあるのかなと非常に面白い。
特に、冥土の茶席は、高麗茶碗から島井宗室、信長、柴田勝家らを描いていく視点が新鮮で良かった。
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本当に教科書のように感じる!学校の教科書というわけではなく、歴史小説の教科書のような気がします。本当に入門編としては非常にいいものだと思うのですが、先読みが簡単すぎて飽きてくるときもあるのですが、いい書き手だと思います。
「神君家康の密書」
オムニバス的に短編の三作品をまとめたものだが、スポットを当てたのは京極高次・柴田勝家・福島正則の3人である。75歳デビューと遅いデビューの加藤先生ですが、読みやすく感じる。
ただ、作品とは全く違う思考が僕の場合は働くのだが、素直に描いた作品を読んでいるとどうしても石田三成が好きになってくる。律義者・忠義者、正しいことをしている人間に与えられる称号はすべて彼の肩書になるのではないかと思う。
判官びいきというわけでもなく、彼に対してはどちらかと否定的なことをというよりも間違ったこと、人望がなかったことを言われるが民に愛され秀吉に信頼を受けた人間に対しての妬みにしか感じられない。武功ではなく、人間を書き綴ったらこの時代の人間性は彼が一番かもしれない。
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家康を主とするような題ですが、ボクは二編目の冥土の茶席が面白かったです。
信長は安物と蔑んだ高麗茶碗を軸に歴史が展開し、柴田勝家像はイメージどおりでしたし、青井戸茶碗柴田は現存するということで、最後まで楽しめました。
三編神君家康の密書は、いろいろと説の分かれる広島城修繕事件を家康の密書と絡めてあるのが良かったです。
加藤廣は裏付けを踏まえた自説がしっかりと構築された上で小説化されている感じが伝わり、どの本も読んでいて矛盾しない爽快さが良いと思います。
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家康に関する短編集。
蛍大名と言われた京極高次の話、重要文化財で現存する高麗青井戸茶碗の名前にもなった”柴田”勝家の話、加藤清正とならび、豊臣家の行く末を最後まで気にかけていた福島正則の話の3つである。
秀吉は子をなせない胤なし男であることは噂されていたが、そんな秀吉の妻茶々が身ごもった。その茶々の夫重ねの相手は誰なのか。高次は茶々と幼馴染で、恋心を抱いていたが、父浅井長政の敵とも言うべき秀吉の妻になど何でなったのか。夫重ねの相手として噂になっていたのは、1位大野治長、2位石田三成、3位前田利長である。高次は最終的には徳川に味方し、茶々を見限ることになるが、周りからは、秀吉の温情により、功もないまま、従3位にまで昇進したので、当然、西方と思われていたようだ。徳川に味方したものの、家康は関が原の戦いで高次を助けに行けなかった。ただ、高次が、西軍大将毛利輝元の叔父・元康と、立花宗茂などの猛将の一部を引き付けておいたために、関が原で勝利を得たため、高次は3日で籠城戦に終止符を打ち開城したにもかかわらず、若狭8万5千石を賜った。
高麗青井戸茶碗”柴田”と呼ばれるその茶碗は、勝家が信長から褒美にもらったものだ。信長も茶器集めに血眼になっていたが、当時は高麗茶碗はそこまで重宝がられておらず、それがため、信長は勝家にこれを与えたのであろう。この”柴田”は、勝家がお市と最後の茶を喫するときにも用いられたようであり、現在、見ることができるその素朴な茶碗には、今も当時の悲しさが満たされているように見えるものである。明治36年にこの茶碗は見つかり、競売にかけられ、長州出身の藤田伝三郎が落札した。藤田は、維新後、藤田組を組織し、陸軍御用達の土木請負業として、西南の役で巨利を博した金満家であった。その後、昭和9年に藤田家の入札で売りに出され、12万円で鉄道王・根津嘉一郎が落札した。現在の価値で言えば3億円以上と言われる。”柴田”は日本の歴史上、最高の価格をつけた茶碗になった。
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「信長の棺」の著者の短編集。
蛍大名(女の尻の光で偉くなった)と揶揄された、京極高次が関ヶ原前夜の大津城籠城戦を奮戦する「蛍大名の変身」
井戸茶碗「柴田」を巡るちょっと切ない話「冥土の茶席」
関ヶ原の直前に猛将福島正則と徳川家康とに交わされた密約を巡る「神君家康の密書」
どの話も著者の他の作品の世界観とリンクしておりスラスラと読めた。特に「神君家康の密書」は、福島正則の知将ぶりに意外性を感じ、福島丹波守の忠臣ぶりに感動し結構楽しめた。