あらすじ
どうなっているんだ、ここは――?
完璧な登山のはずが――男に襲い掛かるイレギュラーの数々!
奇想天外&予測不能!
狂信者を量産したドキュメンタリー番組「ハイパーハードボイルドグルメリポート」の生みの親が描く、スーパーサイケデリックマウンテンノベル!
奥多摩から埼玉、長野の県境を歩いて山梨の北杜市へ。
製薬会社勤務6年目、何より理屈を愛する男・山田が思い立った登山は、完璧な計画通りに遂行されるはず、だった――。
「あなたは少年を探しにここまで来たのでしょう?」
山中で出会った博士風の奇怪な男の一言を発端に、山田はいつしか思いもよらない異常事態に迷い込む。
理屈が通らない混沌の先、山田を待ち受けていた運命は――?
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Posted by ブクログ
自身の趣味が登山のため、最後まで没頭して読むことができた。
奇天烈な登山小説かと思い読み始めたら、
内容は全然異なるものでした。
退屈な人生を探すように、
1人で登山をはじめた主人公が、
いろいろの不思議な体験に巻き込まれていく、
内容でした。
その内容は、自身の存在を探す中で
自然に任せたり、単独で行うことの危険性を
暗示しているように感じました。
また、そんな深く考えることなく、
本当に大切なものは人間関係で
親や友人等を大切にするべきだと感じました。
匿名
自意識に殺される
生きづらさを抱えるすべての人に読んでほしい。 この小説は「自意識」に翻弄され、人生を遭難する現代人への警鐘でもある。 幼少期から「見られること」を強く意識し、周囲の視線への最適解だけを求めて生き続けてきた主人公山田の病巣は、SNSにより他人の視線がより顕在化された現代人にとっても他人事ではない。 しかしこの小説がより不幸なのは、山田がその最適解を出し続けた成功体験こそが、山田の視界を曇らせたこと。「聡明な」山田は、都市を『思考停止』と位置づけ、我こそが現代人に一石を投じるとばかりに、都市の対比としての「山」に向かう。しかし、一石を投じる動機は愛や平和のためなどでは決してないのだ。他人から「一目置かれる」自分を演出するため、もしくは一段高い場所から他人を見下ろすという承認欲求を満たすために山に入る山田。その行動こそ「自意識の奴隷」に他ならず、山田自身もまた自意識下の『思考停止』にあることを山田本人は気づいていないという皮肉。 そんな山田を待ち受けるものとは。果たして山田は目を覚ますことができるのか。 視線の呪縛から逃れて生きることができない今だからこそ、必読の小説だと思った。 またこの小説を通して、生きる上での「役割」に対する問題提起もなされているように感じるが、一貫したテーマである「自意識」から解放された時に、「役割」の答えが見えてくるように思う。 哲学的な内容を、SF要素も込めて表現された独特な小説。次回作にも期待したい。