あらすじ
どうなっているんだ、ここは――?
完璧な登山のはずが――男に襲い掛かるイレギュラーの数々!
奇想天外&予測不能!
狂信者を量産したドキュメンタリー番組「ハイパーハードボイルドグルメリポート」の生みの親が描く、スーパーサイケデリックマウンテンノベル!
奥多摩から埼玉、長野の県境を歩いて山梨の北杜市へ。
製薬会社勤務6年目、何より理屈を愛する男・山田が思い立った登山は、完璧な計画通りに遂行されるはず、だった――。
「あなたは少年を探しにここまで来たのでしょう?」
山中で出会った博士風の奇怪な男の一言を発端に、山田はいつしか思いもよらない異常事態に迷い込む。
理屈が通らない混沌の先、山田を待ち受けていた運命は――?
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
自身の趣味が登山のため、最後まで没頭して読むことができた。
奇天烈な登山小説かと思い読み始めたら、
内容は全然異なるものでした。
退屈な人生を探すように、
1人で登山をはじめた主人公が、
いろいろの不思議な体験に巻き込まれていく、
内容でした。
その内容は、自身の存在を探す中で
自然に任せたり、単独で行うことの危険性を
暗示しているように感じました。
また、そんな深く考えることなく、
本当に大切なものは人間関係で
親や友人等を大切にするべきだと感じました。
Posted by ブクログ
ハイパーハードボイルドグルメリポート!上出さんのインタビューとか色々聴いてたので、彼自身の人生を描いた作品なのだと思った。最後の展開は鳥肌ものや!山登りこえー
Posted by ブクログ
山登りが好きだから、登山の話ということで
点数は甘め。
ハイパーハードボイルドグルメリポート、
ありえない仕事術を読んでから
本書を読んだ順番。
体裁としては、登山小説に近いけど
ありえない事象、人物が出てきて
不思議な読感。
日常の描写からスタートして、
少しずつ少しずつ非日常的な人物が出てきて
不思議な世界に入り込んでいく感じは
村上春樹的なそれ。
印象的だったのは、前半と後半の山小屋で食べる
食事の描写が秀逸で、めちゃくちゃ食べたくなる。
ここらへんは「食う」にこだわってきた
上出氏らしいところかなと思った。
あとは、ありえない仕事術を読んだ後だから感じるのかもしれないけど、
命と心をすごく大事にしていると感じた。
最初はなんだこれはという感じかもしれない。
毛色の変わったイロモノ系の小説だとおもうかもしれない。
でも、1回読み終わった後、再読すると
本の中に散りばめられた作者からのメッセージが
スッと入ってくるような気がする。
匿名
自意識に殺される
生きづらさを抱えるすべての人に読んでほしい。 この小説は「自意識」に翻弄され、人生を遭難する現代人への警鐘でもある。 幼少期から「見られること」を強く意識し、周囲の視線への最適解だけを求めて生き続けてきた主人公山田の病巣は、SNSにより他人の視線がより顕在化された現代人にとっても他人事ではない。 しかしこの小説がより不幸なのは、山田がその最適解を出し続けた成功体験こそが、山田の視界を曇らせたこと。「聡明な」山田は、都市を『思考停止』と位置づけ、我こそが現代人に一石を投じるとばかりに、都市の対比としての「山」に向かう。しかし、一石を投じる動機は愛や平和のためなどでは決してないのだ。他人から「一目置かれる」自分を演出するため、もしくは一段高い場所から他人を見下ろすという承認欲求を満たすために山に入る山田。その行動こそ「自意識の奴隷」に他ならず、山田自身もまた自意識下の『思考停止』にあることを山田本人は気づいていないという皮肉。 そんな山田を待ち受けるものとは。果たして山田は目を覚ますことができるのか。 視線の呪縛から逃れて生きることができない今だからこそ、必読の小説だと思った。 またこの小説を通して、生きる上での「役割」に対する問題提起もなされているように感じるが、一貫したテーマである「自意識」から解放された時に、「役割」の答えが見えてくるように思う。 哲学的な内容を、SF要素も込めて表現された独特な小説。次回作にも期待したい。
Posted by ブクログ
素晴らしい小説は、そんじょそこらのビジネス書はもちろん、哲学書すら凌駕する「気づき」をくれるもの。
その意味で、この本は(そもそも小説なのか?という気すらするが)とことん素晴らしい。
主人公は、身体と知性と屁理屈をもって、とことん、ホントにとことん考え抜く。一方で、結論は保留する。正解はコッチだと決めつけることなく、疑問符を抱きかかえたまま、主人公は歩く、歩き続ける。
登山の話のはずなんだけど、気づけば家族との暮らしや、仕事のこと、人生のことに想いを馳せる導線を、勘弁してくれ!っていうぐらい、引かれてしまう。
他にも色々言いたい魅力はあるけど、紙幅が足りない。例えば途中、「道とは何か」を問いかける箇所は社会学やジャーナリズムをゆさぶる力を持っていた。
登山の魅力のひとつは、とにもかくにも、歩き続けることで、身も心も変わっていくこと。その意味で、本書は登山の魅力の暴露本でもある。
きっと、作者は、山田であり、少年であり、博士であり、熊でありゴリラであったのだろうなと思う。
最後の最後、数日前のニュースが小説内に登場することにびっくりさせられる。この小説は、小説というパッケージに閉じていない。原稿を入稿して、刷りだすその直前まで、きっとこの本の物語は現実世界のドキュメンタルと接続されていた。そんなこともあってか、読後感は、今現在の自分に降り掛かってくる。
良い意味で、帯文には騙された。奇々怪々な謎めいた話の詰め物を食らうもんだと構えて読んだが、一度世界に入り込むとそこには、スーパーサイケデリックというよりも、スーパーヒューマニックな景色が広がっとった。
色々言ってしまったけど、とにかく素晴らしかった。
たっぷり生きよう。たっぷり感じよう。そう思いましたのです。
Posted by ブクログ
前半、主人公である山田の理屈っぽい部分や、他人を少し見下している感じが好きになれなくて、あまり入り込めずにいたけど、「少年」との出会いや貫太とのエピソードには山田の人間的な魅力が溢れていて、後半を読み進めているときにはもうとにかく山田と少年が無事に下山できることを願いながら読んでいた。
Posted by ブクログ
何だこれは。
読み始めは知識先行型の初心者が縦走にチャレンジする話かと思いきや、途中からはもはや幻想小説。怪しげな登場人物が出てたり熊が出てきたりと、幻なのか現実なのかが不明確。
最終的にはホラー小説のオチ。
もっと山の話だと思っていたので予想外ではあったが楽しく読めた。