【感想・ネタバレ】AIに意識は生まれるかのレビュー

あらすじ

AIと人類の未来は 「意識」が握っている。
そんな「意識」は神秘的だが、決して神秘ではない。
僕は意識を作ることで、そのことを示したいと思う。

AIに意識は生まれるのか? AIに人間は征服されてしまうのか?
そんな我々の不安や素朴な疑問は、ヒトの意識と大きく関係している。
では、ヒトの意識とはいったい何なのか?

3歳の時、
「マリモ」が生きているのであれば、マリモにも感覚はあるのだろうか? あるとしたらそれはどういうものなんだろうか?
と素朴な疑問を持った少年は、今日本最高峰の意識研究者となった。

意識という巨大なテーマのもとで、
哲学・神経科学・コンピューターサイエンス……と様々なジャンルの学問を
越境しながら、神秘に満ちた意識の世界をじっくりと解明し、
人工意識やAIのフロンティアについても語りつくす。

最後には神経学者であり、クオリア研究者でもある
土谷尚嗣氏との特別対談を所収。

【「はじめに」より】

僕がまだ三歳だったころ、家族旅行で北海道に行ったことがある。そのときのことだったと思うのだけれど、たぶん阿寒湖で、親が僕にマリモを見せてこう言った。

「このマリモはね、生きているんだよ」

その言葉から受けた衝撃を、僕は今も鮮明に覚えている。
といっても、まだ三歳児だったから「生命」とか「主観的経験」なんていう言葉は、もちろん知らなかっただろう。ただ、その時の衝撃を、大人になった今の僕の言葉で言い換えると、こんな感じになる。

「『マリモである』とは、どういうことなんだろう? このマリモにも感覚はあるんだろうか? あるとしたら、それはどういうものなんだろう?」

それからしばらく経ち、小学生のときの話。風が強いある日に、僕は一本の木が揺られるのを見ながら、こう思った記憶がある。
「この木は生きているんだろうか? 生きているなら、その場から動けずに風に吹かれ続けるって、どういう『感じ』なんだろう?」

子どもだった僕は、何がわからないのかもよくわからなかったけれど、研究者になった今なら、かつての僕の疑問に言葉を与えられる。
僕は、「意識」について知りたかったのだ。(中略)

現在の僕は、研究者として、意識を「作ろう」としている。
この本は、現在に至る僕の道のりをたどることで、みなさんにも備わっている「意識」の神秘と、それを神秘ではなくする方法があることに気づくまでの道のりを、追体験してもらうことを目的にしている。
それだけではない。人工の意識は、僕たちの生活を大きく変えつつあるAI(人工知能)と密接な関係にある。
もしAIが意識を持ったら、人類の将来は大きく変わる可能性があるからだ。

【目次】
Part1 世界はフィクションかもしれない
Part2 意識とクオリアの謎
Part3 意識を研究する
Part4 意識のありかを探せ
Part5 クオリアが作り出すフィクション
Part6 内側から見た意識
Part7 意識の統合情報理論
Part8 意識を作る
Part9 意識を持つAI
Part10 人工知識とクオリアの意味

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

AIに至る前段階というか意識の話が著者の人生と共に説明される。クオリアとか意識の統合情報理論とか知らない事ばかりで勉強になる。優しい語り口で書いてあるので分かった自分としては気になってるが後で思い返そうとすると駄目だった。再読すべき本。
あと本筋と関係ないけど英語学習の重要性が認識できた。

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2025年08月03日

Posted by ブクログ

タイトルにAIという言葉が入っているが、全体の趣旨としては、意識研究の全体像をまとめようとしている本。哲学、言語学、神経科学、コンピューターサイエンス…と色んな分野の研究が出て来て面白い。
でもただの説明文という感じでもなくて、著者の人生の歩みとともに論が進んでいくので、どちらかというとエッセイっぽさもあり、おかげで超読みやすかった。

「はじめに」で小学校のときに抱いていた疑問として「木は生きているとしたら、動けないのに風に吹かれ続けるだけってどういう感覚なんだろう?」(=木に意識はあるのだろうか?)が紹介され、それについての謎がその後の研究で少しずつ解明されていくという構成もわかりやすくて良かった。

ちなみにタイトル「AIに意識は生まれるか」の問いに対する筆者の答えは「人間と同じ意識をAIが持つことはないだろうが、人間が認識できない&人間とは別物の意識をAIがもつ可能性はある」という主張で、それはコウモリが超音波で世界をどう「見ている」かを人間が認識できないのと同じだ、とのこと。
ということは、(これは本文に書かれていないが、)「はじめに」の話に繋げると、木にも意識があるかもしれなくて、でもそれは人間の意識とは別物であり、人間には認識できない…という可能性もあるのかなと思った。

そんな感じで理系な話と文系(哲学)な話とを行ったり来たりする本で面白かったです。

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2024年03月03日

Posted by ブクログ

AIについてというよりは、金井先生の意識研究における歩みを一つの本にまとめた本。

知人に勧められて読んだが想像以上に面白かったし、何よりとても分かりやすかった。多岐に渡る意識研究を明快に解説しながら筆者の破天荒な研究者としての人生を随筆のような形で楽しむことができる。

最終的には人工意識の話に移るが、意識とは何か、という問いや脳科学全般に興味がある学生などには特におすすめしたい。

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2024年02月10日

Posted by ブクログ

タイトルにAIという言葉はあるが、意識に関する研究概要を著者のキャリアに沿って説明する内容が大半であってAIに関連した内容は後半僅かしかないので注意。
研究概要の説明もエッセイ風であるせいなのか、分かりやすく簡潔に説明しようとして逆に分かりにくくなっている印象。
各パートを短く構成しているのはテンポの良さを意識しているのかもしれないが、もう少し詳しく説明してもらえた方が理解しやすいように感じた。

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2024年05月29日

Posted by ブクログ

科学?哲学?エッセイ?
なかなか一言では言い表しにくい本。

とりあえず、タイトルの話が直接出てくるのは終盤です。

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2023年12月13日

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