【感想・ネタバレ】扉の向う側のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

幼い頃からの異文化交流にただただ圧倒されたエッセイ。

14歳での一ヶ月も掛けたドイツ・フランスへの一人旅。それが実母からの勧めというから驚き。一人で降り立ったフランスの空港には、迎えに来るはずであった母の友人は来ないし、フランスからドイツへ移動する際には老齢のイタリア人陶芸家に付きまとわれるしで、もうなんだかすごい体験。これらの偶然の出逢いも必然的なものにしてしまうのはヤマザキさんの秘められたパワーなのかも。

高校時代には実母から、高校をやめてイタリアに留学したら、と勧められ高校を中退し単身イタリアへ留学する。ヤマザキさんのお母さんの影響力ったらない。

一番好きなエピソードは『アントニアとマリア』。
ヤマザキさんの義母アントニアはとてもエネルギッシュな女性。それに対する義父の母マリアはとてもシリカルな女性。ひとつ屋根の下で、水と油のように正反対な2人はアグレッシブな攻防を日々繰り広げる。「お互い気を許し合っているわけではないが、気遣いが無いわけでもない」不思議な関係がなんとも魅力的に私の中に残った。

日本は自分の故郷でありながら、「帰り」という言葉の指す先にあるのは日本ではない、というヤマザキさん。そんなヤマザキさんの世界に向けたどこまでも冷静な視線に、ヤマザキさんと年齢も近いというのにまだまだ狭い箱の中でジタバタもがく自分を歯がゆく思う。

ハードな内容と対極にあるような、ヤマザキさんのお洒落で穏やかな挿し絵がとても魅力的。このクールな挿し絵が巧くマッチして、エッセイ全体をいい塩梅に鎮めている。

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2024年03月16日

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