【感想・ネタバレ】新・堕落論―我欲と天罰―のレビュー

あらすじ

列島を揺るがせた未曾有の震災と、終わりの見えない原発事故への不安。今、この国が立ち直れるか否かは、国民一人ひとりが、人間としてまっとうな物の考え方を取り戻せるかどうかにかかっている。アメリカに追従し、あてがい扶持の平和に甘えつづけた戦後六十五年余、今こそ「平和の毒」と「仮想と虚妄」から脱する時である――深い人間洞察を湛えた痛烈なる「遺書」。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

日本の戦争、敗戦、その後の発展と昨今の不況。あらゆる日本を見てきた石原慎太郎氏が語る現代の日本とは?
戦後65年余り。その間に得た平和が日本人にもたらしたものとは?本書では今日本で見られる問題を氏独自の視点から指摘、問題提起している。日本を愛するからこそ書ける本ではないだろうか。
少し偏った意見もある気がして人によっては読みにくいかもしれません。

0
2013年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 健全な精神は健全な肉体にこそ宿るというが、そこで培われた健全な精神こそが、さらに長じて後の人生において衰えた肉体を支えて守るのです。
 これは大脳生理学での脳幹論の原理であって、脳で最重要部分とされる脳幹は充実した人生のために不可欠な怒り、悲しみ、恐怖、発奮努力、そしてその結果の充実感、歓喜といった感情の源泉に他なりません。これらの感情が自然に発露して初めて人間は人間としての平衡の取れた正常な人生を謳歌出来ますが、現代の若者、特に草食動物化したといわれる若者たちは文明の便宜が与える過大な情報を無制限に摂取し、その整理や分析までを情報に頼るという体たらくです。
 それは決して真の教養とか知識ではありえない。そうした他律的な情報に頼り溺れるために青春の特質である思い込みや勘違いでの挫折、失敗を経験しえないのです。<119頁>

                        *

 当節の若者たちの特性の一つは思い違い、勘違いをしなくなったことだそうな。
 彼等はパソコンなどの効用で多くの情報を体得してはいるが、それがかえって仇となって抱えている情報にがんじがらめとなり身動きが出来にくくなってしまっています。大学で教えている何人かの友人が同じ所感を述べていますが、抱えている情報の整理や分析、その評価も結局また情報に頼らざるを得ない。
 ということは、それらの情報はただの情報でしかなく、身体性を欠いているから、つまりただ上っ面のもので、血肉化していないから彼等にとって真の教養とはなりきれない。
 いや逆に身にそわぬ情報によって拘束され、自分が納得する人生を歩むことが出来にくくなる。<150頁>

                        *

0
2012年09月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本書は、震災後、石原現東京都知事が東日本大震災を日本国民への「天罰」と称したように、現代の堕落した日本を憂う内容となっています。すなわち、

・以下は、日本人という民族の本質的な堕落としか言えないものである。
-あてがわれた「平和の毒」に冒され、あてがい扶持の憲法による徒な権利の主張と国防を含めた責任の放棄、そして教育の歪みが、国民の自我(物欲、金銭欲、性欲)を野放図に育て、人間相互の絆を壊した。
-恥を嫌い、清廉を好み、自己犠牲による献身という日本人の美徳は消滅した。
-アメリカに現在まで間接統治された日本は、アメリカの「妾」であり、日本は日本自身の重要な決定を自らの判断で決めてこなかった。これは、国家の堕落であり、国家官僚と政治家の責任である。(その結果、横田基地は今に至るまで広い排他的飛行区域と共に戦勝記念品として存在しており、日本の先端技術も収奪されている)

・「核の傘」というのは幻であり、自衛のための核を保有する意思を持つべきである。さもなければ尖閣のような領土問題で日本は軍事的圧力に屈しざるを得ない。
・ゆとり教育は間違いで、「父母に孝に」「兄弟に友に夫婦相和し」「朋友相信じ」「一旦緩急あれば義勇公に奉じ」といった基本道徳も含めた生きるための規範を「刷り込み教育」で覚えこませるべき。
・高福祉低負担は幻想であり、現在の国家財政を見れば、増税だと何でも拒否する甘えた国民体質を正し、それにへつらう政治を変革し、消費税増税などの税制改革を断行すべき。
・日本の経済再生施策として、多大に買い込んだアメリカ国債を担保に基金を作り、5%以上の利回りがあり得るプロジェクトに投資すべき(例:天然資源豊富なシベリアの開発)・
・若者の無気力、弱劣化を克服すべく、高校卒業と同時に1年間軍役などの公的な義務に就かせるべき。

・インターネット等の膨大な情報の氾濫に溺れることで、画一的な発想、行動しか出来ず、自分が納得する人生を歩むことが出来にくくなっている。本気の恋愛をすることも少なくなった(根源的情念なき恋愛)。ただただ欲望を増加させ、ヴァーチャル的な暴力や死に感覚を麻痺させる。

⇒このような堕落からの脱却のためには、まずは行えばすぐにやってのけること(核保有に関する可能性を誇示するためのシミュレーション、若者を正すための労役の義務化、財政再建のための税制抜本改革など)で国民を啓発し、いたずらな我欲の抑制に繋げる。それが、震災復興と超克のための基本的な地盤作りに必要である。

【感想】:その意見に賛同するかどうかは別として、命を賭してもやりたいこと、やるべきことが中々見つからない今日において、世界、日本、そして日本人というものがどのような立ち位置に置かれているのか、その認識の下で何をどうすべきなのか、考え、公で大いに議論したらよいと思います。NHKの「坂の上の雲」や映画「山本五十六」を年始に見ましたが、そこで描かれているのは、戦争に一喜一憂する国民の姿でした。マスコミが戦争を煽る姿も別にありましたが、大事なことは国家の出来事、存亡に一人ひとりが思いを馳せるという姿勢であろうと思いました。

0
2012年05月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

石原慎太郎の真髄がこの本を読めばわかる。我々日本人の我欲というものが、この国を滅ぼしかねないと痛切に感じた。
核保有など、あまりにも極端な話もあったが、これから、日本が軍事力を増強して外交面で力を発揮していかなくてはいけないことは一面的に見て正しいことだと思う。
正しいと思う。著者も言ってるが、遺書のつもりで書いた本作品、胸に刻みたい。

0
2012年05月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読んでみて、納得できる部分と、わかってないなという部分と、極論すぎるだろという部分とがいろいろあり、まぁ、そういう本だし著者が著者だからそれはおいておく。

ただ、致命的なのが、どの世代がどの問題に対してどれだけ責任があり、問題を解決していかなければならないのかが書かれていないので、曖昧すぎるのだ。

私はいわゆる団塊ジュニア世代。大学入学時にはバブル景気は終わっていて、2000年代の就職氷河期なる言葉が出るまでは就職内定率が最低だった年に社会に出た。高度成長やバブル景気の美味しさは経験していないし、ITバブルによって若年起業家になるには年寄り過ぎた。

で、戦後の「堕落した世の中」にしたのは著者を始めたとした現在年金受給世代となっているであろう方々とその少し上の世代からであろうし、また、高度経済成長を一番堪能したのもその世代だろう働いていたはずだから。

団塊世代は学生運動していた世代になるのかな?

携帯を多用する若者といってもどれくらいから切っているのかもわからないし不明瞭。

世代批判するならターゲットを明確にしてほしいものだ。

0
2012年02月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

前に読んだ「真の指導者とは」よりももっと慎太郎節が強く濃く炸裂。

前半は日本の平和ボケをこき下ろし、後半はバーチャル世界など技術革新によって失ったものを、敢えて言うと「年寄り」の視点からモノ申している。それが悪いとか古臭いとかじゃなくって、著者なりの時代経験と職業経験があるからこそここまで痛快に一刀両断出来るのだなあと思った。

文章だけ読めば何だかミもフタもないようにとれなくもないが、国を想うがゆえの遺言ともとれる一冊。言い過ぎか。

0
2013年01月21日

「ノンフィクション」ランキング