あらすじ
新高校2年生の湯浅希和子は、部員たった5名の文芸部員。近現代文学に詳しい山下先輩、詩を書く島田楽、小学校時代から童話を書き続けている楓香など、個性が集まる部に新一年生が入ってきた。 それぞれの「書きたい」気持ち、「書けない」ジレンマ、文芸部の人間模様を横糸に、希和子のラブストーリーが縦糸として織られる。上野、谷中・根津・千駄木界隈を舞台に、レイク(不忍池)サイド・ロードで紡がれる青春物語。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
部員が少なくて存続の危機を迎えている文芸部に友人に頼み込まれて入部した希和子。読書は好きだが、創作することには自信を持てず、文芸部に所属していることに引け目を感じていた。
自分には何の才能もないと悩んでいたが、妹の元カレ、朔との再会で希和子は少しずつ変わっていく。才能ってなんだろう、自分に自信がない…。皆一度は思ったことはないだろうか。そんな人に一歩踏み出す力を与えてくれる青春小説。
Posted by ブクログ
文芸部に所属しているも、創作活動には参加しない、「物語を書くことはできない」という主人公。
廃部の危機にあった文芸部の部員確保のため、友人に誘われて入部した彼女は、毎年発行する部誌にもエッセイもどきを提出してお茶を濁し、創作活動に邁進する部員たちに引け目を感じながらも、それなりに楽しく部活を過ごしていました。
あらたに熱意溢れる新入生が入部したことで、自分の立ち位置やあり方を否応なしに考えさせられるようになった主人公と、彼女をそれとなく支える「妹の元カレ」との関係性はまさに「青春」そのものであるように思います。
手に汗を握るような展開があるわけでもありませんが、高校生のリアルな感情や、「創作活動」を通して自己表現する彼らの姿は読んでいてすがすがしい気持ちになりました。
Posted by ブクログ
一から何かを生み出せる人って、憧れるよな〜。希和子の自分にはできない、って気持ちすごくわかる。文章を書くことと物語を作ることは少し違う気がする。文芸部で青春ってあまりイメージなかったけど、書きたいと思って活動している部員たちはキラキラしている。もちろん小説でもエッセイでも詩でも。
朔とのやりとりもテンポ良くてよかった。最後、希和子の紡いだ言葉を読んでくれたのなら良いな。
Posted by ブクログ
濱野京子さんは、10代の敏感でありながら鈍感な心を表現するのがとても上手だ。
体の成長同様心の方もその成長過程にはばらつきがあるけれど、概ねまだ自分のことで手一杯で、相手の感情を察する余裕もなく、だからぶつかり合って傷つきもする。
上野公園に近い高校の文芸部が舞台となる本作。言葉で世界を築く生徒の集まりだけあって、なかなか辛辣な面もあるが、互いを認め合っているところがいい。
物語は、主人公の希和子の文芸部での立ち位置に悩む姿と、妹の元カレ(小学生の頃の話だが)と高校で再会してからのプライベートでの姿が描かれる。
いやー、こんな青春が送れるなんて小説の中だけなんじゃないだろうか。
谷根千が地元、不忍池が通学路なんて羨ましい限りだ。
2023
Posted by ブクログ
部活とは流した汗の量に価値があると思っていた私には、ゆるゆる文芸部の活動が新鮮でした。ゆるい中にも熱い葛藤があり、ゆるいと感じているのは主人公だけで、本当はゆるくもなんともないですね。知っている場所が物語に描かれているとうれしくなる、っていう一節が登場しますが、この本にはなじみのある場所がたくさんあらわれて、うれしく読ませてもらいました。初々しい青春&恋愛小説です。
Posted by ブクログ
本好きだが、創作意欲はない主人公。創作意欲どころか、自分が何をしたいのかすらまだ見えていない。自分らしい生き方を模索する高校生の姿が等身大で描かれている。