【感想・ネタバレ】近代美学入門のレビュー

あらすじ

近代美学は、17~19世紀のヨーロッパで成立しました。美学と言っても、難しく考えることはありません。「風に舞う桜の花びらに思わず足を止め、この感情はなんだろうと考えたなら、そのときはもう美学を始めている」ことになるからです。本書は、芸術、芸術家、美、崇高、ピクチャレスクといった概念の変遷をたどり、その成立過程を明らかにしていきます。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

建築家や彫刻家や画家はギルドに所属し教会や貴族からの注文通りの造形作品を制作していたが、ルネサンス期には商業が発展し豪族などが職人のパトロンとなることで制作の自由度が増し、技術の向上の余地も生まれる。職人の諸技術のうち美しいものが芸術と呼ばれ、その地位は向上、アカデミーも創立され、芸術家は独立した知識人の地位を認められる。やがて芸術作品には作者の内面が表現されているとされ、美を対象のプロポーションに見出す客観主義ではなく美は受け手の内面に生ずるとする主観主義が優勢となり、芸術家は独創的な世界を創造する天才と扱われるに至る。この傾向は作者の感情を表現するロマン主義に通じる。また、美が主観的なものとなったことに加え、アルプスの山越えが盛んに行われるようになったことで、感覚で捉えきれない圧倒的な自然に対する畏怖を含んだ「崇高」さが着目される。表現しがたい崇高さの表現を目指す姿勢が前衛的な現代アートに繋がる。一方で、風景画が市民の間で流通するにつれて、絵になる自然の景色が「ピクチャレスク」と認識される。イタリア風景画への憧れから、従来の整形式庭園からイギリスの風景式庭園への転向が起こり、軌を一にしてピクチャレスク理論も成立した。ピクチャレスクは現代の写真が広く普及した情勢では重要な概念だろう。
美、崇高、ピクチャレスクから、近代の美意識が形成されている。美意識は決して普遍的なものではなく、文化や制度に大きく依存してあくまで主観的に成立するものである。

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2025年04月10日

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