あらすじ
人間・孔子が生きている
政敵の言葉「仁」に衝撃を受ける孔丘。50代にして母国をおわれ弟子達と放浪した苦しい時期、帰国してから亡くなるまでを描く。
※この電子書籍は2020年10月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
知人から勧められて宮城谷昌光をはじめて読んだ。本屋に行ってまず目に入ったのが「孔丘」だったからこの本から読み始めた。
知らないことが多かったので、読み進むたびに新しいことばかりで面白かった。ただ前提知識が無さすぎて人名、地名が覚えられず、また宮城谷氏のよく使う言い回しの読みが分からずに苦労した。
しかし資料も多くはないと思うが、よく物語にしたものだと、そちらに感心する気持ちが強かった。
陽虎はかなり興味深いキャラ。ちょっと追いかけてみたい。次は管仲を読むつもり。購入済み。
以下、読んで知ったこと(の一部)
・「孔丘」というのが孔子のことを指していること(真面目にしばらく読み進めるまで分からなかった笑)
・孔丘が春秋時代の人だったこと
・平和な世の中で学問を教えていたと思ったら苦労してあっちこっち行っていたこと
・弟子はみんな文の人ばかりかと思っていたら案外武の人がいたこと
・孔丘は聖人君子で完璧な人かと思ったら案外人間臭かったこと
・論語は孔丘の死後、弟子たちが伝えたと聞いていたが、孔丘がメインの弟子たちより長生きしていたこと
・哲学者、思想家、教育者であって、政治には関わらない人だと思っていたが、そうではなかった。
Posted by ブクログ
陽虎を避けて斉に至ったときには晏嬰と反りが合わず仕舞い。著者の「晏子」は好きな作品だったから、何とも残念に思う。互いに融通の利かぬ偏屈ということなのか。
陽虎の野望が潰え、季孫斯の輔弼となる孔子。城壁の取り壊しを行うが、仲孫氏、叔孫家の反発を買い、弟子たちとの長い放浪となる。
正直、礼による国家づくりに季孫斯が賛成したのが納得し難い。白川静先生は孔子によりクーデターと捉えていたと思う。酒見賢一のサイキック小説「陋巷に在り」もそう。
小説の終盤、顔回や子貢も活躍するが、論語のエピソードから飛び出た俊英の弟子たちの像がはっきりしたように思う。ただ、それでもその描き方はあっさりして、不満が残った。
論語にある狂接輿とのエピソードとか、白川先生が「子路は孔子に褒められたかったんですよ」というネタなど、もっと描ける話はあったんじゃないかなとないものねだりしたくなった。
何より長期の放浪が孔子の思想を研ぎ澄ませたとする白川先生の学説を背負うものになっていないと感じた。