あらすじ
子育てにおいて、いちばん大切なことは「子どもに対して敬意を以て接すること」
男の子の親にも、女の子の親にも読んでもらいたい、旧くてあたらしい子育て論。
男手で女の子を育てた内田先生と、女手で男の子を育てた三砂先生。共に「離婚して子どもを育てた親」であるふたりによる、誰も書かなかった子育て論。最優先にされるべきは、「子どもに対して敬意を以て接すること」。いまの時代にあわせてアップデートされた、旧くてあたらしい子育て論にして、すべての子育て中の親たちと、育てられ中の子どもたちへ贈る、あたたかなエール。
「子どもを育てる、ということは、許されることを学ぶことだ、と思います。(…)子どもを持った時点での親の成熟なんて、たかが知れているし、親自身が生きてきた時代と環境とに抜き難い影響を受けながら、なんとか生き延びようとしているような不完全な存在なのですから、かならず、間違います。よかれ、と思ってやったことも、間違っているかもしれない。」(三砂ちづる)
「僕は未熟な親として子育てをしてきて、ある時点で、「子どもを愛すること」と「子どもを傷つけないこと」では、「子どもを傷つけないこと」の方を優先させるべきではないかと考えるに至りました。(…)「子どもを愛しているから」「子どものことを心配して」「子どもの将来のことを考えて」という理由で子どもを傷つける親が実に多いということを骨身にしみて知ったからです。」(内田樹)
子育てって困難でしょうか?/子どもは手離すときがむずかしい/親子関係で決定的に重要なこと/子育てにおける母語の意味/性教育はナナメの関係で/感情のカタログを増やす/親を許すこと、親から許されること/生きているなら、それでいい/一度は死んだもの、と思って育てる/「女の社会」にも「男の社会」にも逃避できること/「〈それ〉を何と呼ぶか」よりも「〈それ〉をどう扱うか」/複雑な現実は複雑なままに/今日を機嫌良く生きていくことができたら/……子育てで悩み迷うひとに響く言葉が満載。
目次
■第1便 寄り道しながらはじめましょう
第1便A 子育てって困難でしょうか? 三砂ちづるより
第1便B 子どもを手離すときのむずかしさ 内田樹より
■第2便 感情とのつきあい方
第2便A なぜすべてにそう悲観的なのでしょう? 三砂ちづるより
第2便B 親子関係で決定的に重要なこと 内田樹より
■第3便 子育てにおける母語の意味について
第3便A 性教育はナナメの関係で 三砂ちづるより
第3便B 感情のカタログを増やす 内田樹より
■第4便 親を許すこと、親から許されること
第4便A ぼんやりすることで得られる力 三砂ちづるより
第4便B 生きているなら、それでいい 内田樹より
■第5便 家族をむずびつけるもの
第5便A 一度は死んだもの、と思って育てる 三砂ちづるより
第5便B 家族とは「想像の共同体」 内田樹より
■第6便 『細雪』の世界から
第6便A 「女の文化」と「男の文化」の絡み合い 三砂ちづるより
第6便B 「女の社会」にも「男の社会」にも逃避できること 内田樹より
■第7便 野生と文明のあわいにて
第7便A 女性の身体性は取り戻せたか? 三砂ちづるより
第7便B 「産めよ殖やせよ」の逆説 内田樹より
■第8便 「母性」なるものをめぐって
第8便A 母性活性化スイッチ 三砂ちづるより
第8便B 「〈それ〉を何と呼ぶか」よりも、「〈それ〉をどう扱うか」 内田樹より
■第9便 複雑な現実は複雑なままに
第9便A 人間が太古から物語を使って行ってきたこと 三砂ちづるより
第9便B 「真のリアリスト」と「リアリストもどき」を分かつもの 内田樹より
■第10便 「ものすごく気持ちの良いこと」を経験する
第10便A 自分を手放せること/自立していくこと 三砂ちづるより
第10便B 自我が消えてしまう時の解放感と愉悦 内田樹より
■第11便 没入すること、10歳前後であること
第11便A 当時の女の子たちは失神していた 三砂ちづるより
第11便B 師に全幅の信頼を置く 内田樹より
■第12便 長い時間軸の中で考える
第12便A 無条件に愛され、無条件に見守られること 三砂ちづるより
第12便B 大人たちから子どもを守るために学校は生まれた 内田樹より
■最終便 子育てにおいて、時代が変わっても変わらないもの
最終便A 今日を機嫌良く生きていくことができたら 三砂ちづるより
最終便B 親族が存続するために最もたいせつなこと 内田樹より
長いあとがき 三砂ちづるより
短いあとがき 内田樹より
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ちょっと難しかった。でも身近に置いておいて、また読み返したいと思わせてくれる本だった。お二人が話す内容は、本当にとっちらかっていて、子育てに関係ない話も多いのだけれど、特に内田さんのお話は結構哲学的な本質をついている内容なのに、なぜかさらさらと読める文章で、なるほどなあ、そうかもしれないなあと思うことが多かったように感じる。完璧な大人、完璧な親であることはあり得ないし、また完璧でないことが子どもにとっては必要、と言われている気がして心が楽になる本だった。
Posted by ブクログ
子育ての言葉にしにくい複雑さが二人の往復書簡から伝わってきました。その中でも、子どもを愛するのでは足りず、子どもを傷つけないことを優先すること、子どもに敬意を払うこと、イノセンスがある=人に自分を委ねられるだけの信頼感が育っていることであり、そのために子どもを見守ることが子育ての大事な部分である、など時折ハッとさせられる言葉に出会えました。
Posted by ブクログ
往復書簡風のリレーエッセイ。
男の子の育て方というテーマだったはずが、どんどん散らかって、散らかしっぱなしになった。三砂さんは最初こそ手探りで書簡を始めるが、だんだんのびのび自由に書いてる感じ。
内田樹はずっと同じような話してるんだなと思い、ほっとするやら懐かしいやら。
Posted by ブクログ
コロナ期の話で、ちょっと、そうだったなあと
いう感想になるよなところもありました。
ただ、教育とはという考え方は、いつも
その通りというか、同意するところが多かったです。
Posted by ブクログ
パソコンなど もちろん 無かった。
自動車と言えば、バスであり、オート三輪に代表される仕事に使われるものだった、
家の近くには 空き地がたくさんあった。
そこは子どもたちの遊び場でもあった。
「遊び」は家の外が当たり前であった。
そのころ、子どもたちは適度に放っておかれた。
放っておかれた分、
子どもたちの知恵は磨かれた気がする。
今の時代に生きる子どもたちの
あの時の 知恵の磨き方のヒントが
お二人の対談の あちこちに
語られている気がする。
Posted by ブクログ
親はたいへんなんだぞ、なんて話はよく聞くものだ。子育ての困難というのは、少子化をいわれる世の中にあっては、考えざるを得ない問題だろう。でも、子どもの立場に立って見たらどうか。自分の存在が親にとっての困難だといわれたら?そのあたり、不倫関係になぞらえて考えさせる冒頭のやりとりは、なかなか楽しく、同時にとても考えさせられる。
ナナメの関係、失われるものへの哀惜、親を許すということ、没入する体験、必ずしも子育ての話に限らないけど、どこかでつながりも感じられる。なにか答えを与えられるというよりも、問題提起されて自分なりに考えを進めたくなる本だった。
親が成熟していると、子どもはイノセントになれる。
つい先日、内田氏の『待場の成熟論』を読んだばかりだし、成熟というのは自分自身の中でも大切な課題として存在する。
俺自身、親であるわけなんだけど、どこまで成熟しているものやら。
考えていきたいね。