あらすじ
父親が猟奇殺人を犯し「悪魔の子」と噂される少年、良世。事故で娘を失った過去を持つ翔子は、亡くなった姉の忘れ形見である良世を育てることになるが、口を閉ざし、何を考えているかもわからない。なんとか彼を知ろうと寄り添うも、ある日机で蟻の「作業」を
している姿を目撃し――。人を信じ育てることの難しさと尊さを描く、感涙のミステリ。
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Posted by ブクログ
この本では、『人を信じる力』を試されます。
父が猟奇的な事件を起こし、悪魔の子と噂される少年。
その少年を、どこまで信じられるのか。
私は物語を読みながら、少年の肩書きや過去ばかりをみて、少年自身を信じてあげられなかった。主人公には信じていてほしいと願いながら。。。
すごい矛盾ですね。
過去や人の話や肩書き、家庭環境。
さまざまな情報をもとに、私たちは人を『こんな人だろう』と決めつけてしまうことが多い世の中だと思います。
けれど、真のその人を知るためには、ただ目の前のその人を見ること。共に時間を共有すること。信じることが必要だなと感じました。
Posted by ブクログ
今は亡き姉の夫が狂気的殺人で捕まりました。その息子を引き取ったが、この子何かがおかしい。という話。
捉え方によって人の善悪なんて真逆になるしそもそも善悪どちらか一貫した人間なんていない。そのギリギリで悩むところが現実にも通じるところがあると感じた。
かつてこんなにも表題で涙した物語があっただろうか。彼女のやり方全てが正しいとは思えないけどそんな人間くささ含め、根気強さと得たものにすごく感動した。"まだ人を殺していません"これを何度も良世を疑った翔子さんが言ったからこそ良かった。彼女の根気がなかったら殺していたかもしれない。
Posted by ブクログ
亡き姉の夫が逮捕された。人を殺してホルマリン漬けにし、自宅で保管していたというあまりにもおぞましい容疑だ。
娘を亡くし離婚して独り身の主人公は、姉の息子である良世を引き取るのだが、言葉を話さず何を考えているのか分からない子で、もしかして「悪魔の子」なのではないかと不安になる……といったお話。
ミステリに分類はしたが、かなりヒューマンドラマに近い味わいで、いままであまり読んだことがないタイプの作品だった。
良世は「悪魔の子」なのか、兄は本当に殺人犯なのか、亡き姉は本当は自分を憎んでいたのか、さまざまな疑念にかられ不安に揺れる主人公の心情をとても繊細な手つきで描写しており、信じるべき人を信じることの難しさをひしひしと感じる。
猟奇的な描写もあり終始ぞわぞわしながら読んだが、救いのある結末でほっとした。
神様ではない我々は、神様ではないゆえに、自分が何を信じてどう行動するのか、つねに責任を持たねばならないのだな。