あらすじ
私はね、心に一つ秘密がある――。伯爵夫人手術時に起きた“事件”を描く『外科室』。眷族を伴として姫路城天守閣に棲む妖姫が、若き武士と出逢う『天守物語』。二つの代表作に加えて、故郷金沢を情感ゆたかに描く怪異譚『霰ふる』。三島由紀夫が絶賛した絶筆『縷紅新草』。そして『化鳥』『高桟敷』『二三羽――十二三羽』『絵本の春』を収める。アンソロジスト東雅夫が選び抜いた、鏡花文学の精髄八篇。(解説・東雅夫)
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Posted by ブクログ
『外科室』
画師「予」が、親友の医学士・高峰が執刀する手術に立ち会う場面から始まります。患者は貴族階級の伯爵夫人。手術直前、夫人は麻酔を拒否します。理由は「麻酔で譫言(うわごと)を漏らし、秘めた想いが知られてしまうのが怖いから」。
周囲の反対を押し切り、夫人は麻酔なしでの手術を望み、高峰はそれに応じます。手術が進む中、夫人は突然高峰の手を握り、「あなたは、私を知りますまい」と言いながら、自らの胸をメスで切り裂きます。
高峰は「忘れません」と答え、夫人は微笑みながら息を引き取ります。
物語の後半では、9年前に高峰と「予」が植物園で偶然見かけた美しい令嬢の回想が描かれます。その令嬢こそが伯爵夫人であり、高峰はその一瞬の出会いを胸に秘め、結婚もせず生きてきたのです。夫人の死後、高峰も同じ日に亡くなります。
原文、文語体が難解で読めず、不気味さだけが際立ってしまいました。。。
現代訳のあらすじと読み合わせました。
明治期には、身分制度によって婚姻が制限される社会背景があり、鏡花はそれに対する静かな不満を抱いていました。
彼の作品では、直接的な恋愛描写を避けながらも、言葉の奥に濃密な感情が込められています。