【感想・ネタバレ】コンテクスト・マネジメント~個を活かし、経営の質を高める~のレビュー

あらすじ

組織とは、1人ではできないことを成し遂げるための装置であり、経営とは、人を通じてよりよいことを持続的になすことだ。では、人と組織の力を最大限に発揮するために、経営者リーダーが果たすべき役割とは何だろうか。ハーバードビジネススクールの経営政策プロセス学派は、その答えを、企業コンテクストのマネジメントに見出す。コンテクスト・マネジメントを切り口に、過去50年の欧米組織戦略論の知見を統合する渾身の一冊。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

経営学に於ける、いわゆるプロセス学派の議論の系譜を辿りつつ、コンテクスト・マネジメントの観点から戦略や組織について概観した一冊。骨太であり、各所のロジックはどうしても頭から抜け落ちてしまうが、今後も折に触れて開きたい。
読み違えている部分もあるかもしれないが、個人的な観点からは、本書は「経営に絶対的な唯一解はない」ことを強く念頭に置き、故に戦略でも組織でもなく、コンテクストでマネジメントをする、という概念を提唱されているのだと理解した。コンサルとして働く中で痛感するが、経営という複雑な事象に唯一解は存在せず(もちろん、外してはいけないお作法はあるが)、事業をどのように解釈しどう仮説を立て意思決定するか、というサイクルが全てであり、いかにこの確度を高めていくのか、という点がポイントとなる。この根底にあるのがWHYであり、言い換えると、WHYの部分が欠落した途端に全ての仕組みや構造は意味合いを失うと考える。
コンテクスト、という言葉に対する解釈も人それぞれであろうが、個人的な解釈としては、「WHYの部分を(リーダーが半ば主観的に)規定/流布し、現場の能動的な行動を支援するマネジメント手法」という言葉になろうかと思う。学問的にはこの相互作用をどう解明するかが難しいのだが。。。一方で、この感覚は実務家には既に受け入れられているようにも感じ、学問的にも解明のし甲斐がある投げかけなのだろ感じた。

特に印象に残った箇所は以下
・「人間の本性が「善」でも「悪」でもなく「弱」」(p.148)
・「M-formでは、ともすれば「分権」と「集権」が繰り返されます。本社が事業部をグリップするべきか、それとも事業部に権限移譲するべきかという選択を常に迫られ、なおかつこの選択には正しい答えが存在しないため、多くの企業では分権化と集権化との間で、まさに振り子のように揺れるのです」(p.181)
・「リクルートは「合算」という経営プラクティスを実施しています。予算は、中長期の戦略と連動して、事業ユニット長(事業責任者)と経営ボード(本社)とで合意するのですが、運用に特徴があるのです。事業ユニット長は、単に予算達成を目指すのではなく、中長期の成長戦略投資を最適化するために着地予測精度を求められています。そのため予算を大きく上振れしても必ずしも経営手腕が高いと評価されるわけでなく、むしろ経営ボードから、"事業の見通しが読めていない"と見なされることもあります」(p.207)
・「PPMは、企業がキャッシュの創出と需要を組織内で自給自足しながら安定的な成長を遂げるという手法です。けれども、現在の英米流の企業経営では、自分たちでキャッシュを生み出して、それを組織内にうまく配分しながら、安定的な成長を実現させていこうというのは正しいアプローチとはみなされません」(p.224)
・「組織は戦略に従う」というアルフレッド・チャンドラーの言葉を前回紹介しましたが、経営の現実は違います。「戦略(企業全体戦略)は組織(組織能力)によって制約される」というふうにとらえるべきなのです(p.250)
・「つまり、経営者は「コントロールを失う」という不安を乗り越えないといけないということですか」(p.353)
・スマントラ・ゴシャールは、亡くなる前に上梓したハイケ・ブルックとの共著『アクション・バイアス』の中で、伝統的企業の経営における最大の問題は、個の主体性の喪失であるとの警鐘を鳴らしました」(p.382)

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2024年06月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

コンテクストというのは、組織風土やカルチャーに近いものかと感じた。
プロセスや体制を外形的に整備するだけでなく、なぜこのようなプロセス・体制になっているのか、それを通じてなにを成したいのか、トップが絶えず社内に発信することで初めてカルチャーとして定着する。
トップの主な仕事は、このカルチャーの醸成・定着であり、それを成すだけの熱量や想いが必要ということなのだろう。

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2023年11月24日

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