あらすじ
1795年、フランスとの長きにわたる戦いによって、イギリス海軍は慢性的な兵士不足に陥っていた。戦列艦ハルバート号は一般市民の強制徴募によって水兵を補充し、任務地である北海へ向けて出航する。ある新月の晩、衆人環視下で水兵が何者かに殺害されるが、犯人を目撃した者は皆無だった。逃げ場のない船の上で、誰が、なぜ、そしてどうやって殺したのか? フランス海軍との苛烈な戦闘を挟んで、さらに殺人は続く。水兵出身の海尉ヴァーノンは姿なき殺人者の正体に迫るべく調査を進めるが――海上の軍艦という巨大な密室で起きる不可能犯罪を真っ向から描いた、第33回鮎川哲也賞受賞作。/第33回鮎川哲也賞選考経過、選評=辻真先 東川篤哉 麻耶雄嵩
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Posted by ブクログ
良作。鮎川哲也賞って本格に大きく偏っているイメージなんだが、本作は謎解き部分はかなりあっさりしており、どちらかというと、強制徴用により妊娠中の妻と離別した男の苦難を描いた冒険譚的なパートが非常に面白かった。
水兵は4時間ごとの2交代制で過酷な肉体労働を強いられ、睡眠時間もわずか4時間。食べ物はウジ虫の沸いたビスケットと塩漬けにされた硬い肉。士官に気に入らないことがあると水兵は鞭を打たれて、全身に赤い模様が浮かび上がる。そんな環境で精神が荒廃し、狂い出す者も多い水兵達だが、語り手ネビルは同じ水兵仲間と打ち解け合うことでなんとか正気を保っているが、仲間と共に船からの脱出を試みる。そんななか不可能状況で水平達が次々殺されていき…という内容。
不可能状況は1つ目と3つ目で、前者は暗闇の中でどう標的を狙ったのか?後者は密室からの犯人の消失であり、いずれも舞台設定を存分に生かしたユニークなトリックである。ただ、数十人単位で死ぬ海上戦が描かれてしまうと、連続殺人はいささか添え物の感があり、本格厨の私でさえ緻密に計画された脱出劇を見たかったという思いがないこともない。
選評を読むと著者は最終候補に残るのは5度目ということで、著者の精神力と体力が本作の水兵達を凌ぐレベルで凄い。本作は受賞して然るべき作品と思う。鮎川哲也賞にハズレなしが今のところ継続されている。
Posted by ブクログ
序盤はいいものの、肝心の真相部分とか後半がやけに駆け足だったりとかとこまごまとした不満がないでもないですが、それよりもなによりも「帆船軍艦」という舞台設定があまりにも魅力的すぎる。もちろん登場人物たちは過酷な状況下であるのはわかってはいるんですが、読み手としてはその生活環境がとにかく興味深い。もうそれだけでも一読の価値ありだと断言できます。
しかし帆船についてもっと掘り下げられそうな部分も多く感じたので次回作もなんなら帆船もので!もっと読みたい!というのが正直な感想。
Posted by ブクログ
鮎川哲也賞受賞作。18世紀末のイギリス海軍に属する帆船軍艦を舞台にしたミステリーだが、謎解きは少なめ。ただ、水兵達や士官達の生活や、登場人物の描き分けがしっかりしていて海上冒険小説として斬新で面白かった。エピローグの急展開は、著者がポジティブな人なのかな、と思わせてくれた。今後もこの著者の作品が出たらまた読みたいと思う。
Posted by ブクログ
第33回鮎川哲也賞受賞作。
18世紀、フランスと戦うイギリス海軍の軍艦で起こる殺人事件。強制徴募された新米水兵の目線で描かれる軍艦の生活はとんでもなく過酷で、序盤は帆船お仕事小説っぽかったが、次々と殺人が起き、フランスとの戦闘で戦死者もでて状況は緊迫してゆく。
ミステリとしては、舞台となる帆船になじみがないので最初のイラストを見ながら読まないとよくわからない部分が多くて難しかったが、帆船ならではのトリックもあってなるほどと思った。それ以上に海洋冒険小説として面白かった。
Posted by ブクログ
十八世紀末、フランスと交戦状態にある英国海軍は常に兵士不足だった。強制徴募された若者たちを乗せ、戦列艦ハルバート号は北海を目指すが、新月の夜に衆人環視下で水兵が何者かに殺害される事件を切っ掛けに、続けて不可解な殺人が発生。逃げ場のない船の中で、誰が、なぜ、そしてどうやって殺したのか? フランス軍との苛烈な戦いのさなか、軍艦という巨大な密室で相次ぐ不可能犯罪を描く第33回鮎川哲也賞受賞作。①軍艦の中?船室?が理解力ないせいでわからない②登場人物の名前が覚えられない。
致命的ですが、それなりに楽しく読みました
Posted by ブクログ
3年ぶりの鮎川哲也賞受賞作品。1795年のイギリス海軍が物語の舞台。読む前はこの設定にスッと入れるかちょっと不安だったけど、読み始めるとすぐに物語の世界に引き込まれました。逃げ場のない船上で起きる連続殺人事件。トリックもこの設定ならではでおもしろかったし、絶望的な状況スタートの主人公だけど、同じ班のメンバーがみんないい人で良かった。
Posted by ブクログ
鮎川哲也賞が文学界においてどれだけの価値ある賞かはしらないけど期待して読んだ割には内容はごく普通。
最初からもうハッピーエンドは予想でき当にその通りになり失望。
作者ファンには申し訳ないがそんなに良い作品とは思えなかった。
Posted by ブクログ
「鮎川哲也賞受賞」という権威付けと
「帆船軍艦」というタイトルから手に取る
タイトルから大好きなクローズドサークルの
匂いがプンプンするのよ
読んでみて
クローズドサークルではあるのだが、
あの特有の人が減っていってお互いに疑心暗鬼という
感じでは無かったかな
あと受賞作特有の
最後の選評が好きなのよ
感想を共有したい欲求が強いのかも
(俺の選評)
今回は東川先生と一緒で
ちょっと前半が重いなと感じた
あと、誰も指摘してなかったけど
最後のトリックが少しイメージしにくい
じっくり読まないと絵が浮かばないね
俺はサクサク読むタイプなので
ここは何となくで読んでしまった
あと最後のあっさり感はページ数合わせる
必要でもあったんかな
全体的に粗いなという感想を持ちましたが
雰囲気は楽しめました
Posted by ブクログ
期待が大きすぎたせいか、読後感はうーんていう感じ。
海洋冒険小説、とりわけ帆船小説好きからすると最高の舞台。なんと鮎川賞受賞作がと思い反射的に購入。しばらくは読むのが惜しくて表紙を眺めながら積読していた。
気が変わって読み始めたのが3日前。出だしはすばらしく強制徴募された水夫の英国帆船内での悲惨な生活が詳細に記述されていて『海の覇者トマス・キッド』ばりだと興奮しながら読んだ。ふしぎなことに登場人物すべてがイギリス人なのになぜか和風な感じがしてならなかった。描写なのか、人物の口調のせいなのかはわからないが。
読後感は鮎川賞受賞作に対して不適当だが殺人事件はいらなかったなというのが正直なところ。1回の交戦で何十人もの戦死者が発生し、さらに多くの戦傷者が手足を切断施術され苦痛にうめいているような軍艦内でひとりの死者に対する興味や執着心が長く続くとは思えない。
とは言え、日本初の英海軍帆船小説を歓迎したい。
そして妻と乳児には申し訳ないがもう一度ネビルと航海がしたい。