【感想・ネタバレ】資本主義の中心で、資本主義を変えるのレビュー

あらすじ

★発売5日で重版決定!
★2023/11/16 日経新聞書評掲載(評者=入山章栄氏)
毎年毎年、昨年以上の結果を求められる。
このプレッシャーは、どこからきている?

「成長が目的」の世界は、人を幸せにしないーー。
著者は「世界最強の投資銀行」の名を馳せるゴールドマン・サックスで16年、資本主義と闘ってきた。
資本主義を変えるためには、「資本主義の中心」にいる必要があったのだ。

世界を変えるには、日本から。その思いから著者は、日本の資本市場の奥深くまで切り込むことになる。

「Up or Out(成長しないヤツは出ていけ)」という「現実」のなかで、どんなに追い詰められても、長期的な社会へのインパクトという「理想」にこだわり、人生を捧げてきた。

1兆円ビジネスという経済性と社会性の両立を追いかけ続けた、元ゴールドマン・サックス営業による「現実と理想の両立のしかた」。

・資本主義3つの副産物:「成長の目的化」「時間軸の短期化」「会社の神聖化」
・日本の「まじめ」な会社で、不正が数十年引き継がれる理由
・ESG経営の本質は、つきつめれば「企業文化」
・投資の神様ウォーレン・バフェットは、経営のどこを見ているか
・「茹でガエル化」から脱出するには「ゼロヒャク思考」をやめよ

目次
1章 資本主義は「限界」か?
1-1. 資本主義の方程式
1-2. 競争原理がすべてを動かす
2章 お金の流れを根本から変える
2-1. 日本の資本市場のボトルネックは「忖度(そんたく)」文化
2-2. 「忖度」を解くカギは「緊張関係」
2-3. 「空気の読めない人」が時代をつくる
3章 ピラニアを放り込め!
3-1. 過去の言葉になった「Asia ex Japan」(日本を除くアジア)
3-2. 「健全な緊張感」のもたらし方

episode. (エピソード)
・「成長を疑うヤツは出て行け」
・自ら「成長至上主義の歯車」を回すとき
・悪夢の長い階段
・「キレイごと」追求のための、1000億円超の案件

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Posted by ブクログ

ネタバレ

常に成長し続けることが求められる「成長至上主義」は果たして正しいのかというテーマ。

著者は、仮に非営利機関に勤めて声を上げたとして、外部の声は成長至上主義の内部には届かない。資本主義の中心で、ゲームの勝者として働きかけることで、内部を根本から変えることを目指した。

◯資本主義の目的とは
すべての経済システムは人類の幸福に資するために発展してきた。しかし成長が目的化すると、Up or Outのように人を常に成長に駆り立てる社会的風潮を生み出してしまう。これは資本主義そのものの問題ではなく、資本主義の使い方の問題である。

そして成長が目的化した資本主義社会では巨大な投資マネーが利益の源泉を求めてさまよっている。その過程で、これ以上の成長志向は人間社会に対して害悪をもたらす危険があるにも関わらず、立ち止まることも許されず、越えてはいけない一線を越えてしまう「資本の暴走」が発生しているのだ。

◯儲けるか儲かるか
二宮尊徳は「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」 と述べた。それならば例えばSDGsというのは、「資本主義を使いこなして、道徳のある経済を達成しよう」ということを意味するのではないか。「儲ける」はコスト競争が起こり得る。しかし「結果的に儲かる」場合は喜んで対価を払う状況をつくれているのでその違いは明確である。

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話は変わるが、社会貢献的意識が強い若者は、ごく普通の営利企業への就職はださいとか、社会貢献を全面に出したビジネスがかっこいいという価値観があるかもしれない。ESGやSDGsを分かりやすく取り入れたビジネスはかっこよく見える。しかし別にそこまで拘る必要はなくて、普通の営利企業の中で倫理観を持った利益追求をすることも、ただ資本主義に身を任せることに比べたらずっと尊い素敵なことなのではないか。

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2024年01月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

現状の資本主義のあり方に疑問・課題は感じ、関連する書籍はいくつか読んだが、ただの理想論のような印象も受けていた。そんな中、本書の「はじめに」には資本主義を変えるためには資本主義の中心にいる必要がある、GSで16年間最前線で資本主義と戦ってきた、といった記載を目にし、これまでとはアプローチが異なるなと興味をひかれ手にとった。

資本主義の根本原理は何か、そこに付随する何が問題なのかを分析している。さらにGSで資本主義を内側から変えるため何に取り組んだかが描かれ、最後にはよりよい日本の資本主義社会をつくるためにはどのような変化を起こす必要があるか考えを述べている。
資本主義そのものを否定するのではなく、使われ方に問題があることを指摘し、どう変えればいいのかを論じるという内容で、単なる理想論ではなく、多少時間はかかろうとも実現可能な策が議論されていてよかった。日本を次世代に誇りをもって引き継げるような国にしたいという気概、実際の取り組みに感銘を受けた。

日本の組織、人事制度の課題や、消費者としての意識の問題などにも言及され、どのような立場の人でも学べる点があると思う。
個人的には、「そのものが持つ固有の時間軸」に関する話と「お金には名前が書いてある(自分の使ったお金が社会に与える影響を考えよ)」話が勉強になった。

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2024年02月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本書では、資本主義の根本は「所有の自由」×「自由経済」であり、「成長の目的化」はその結果に過ぎないとしているが、むしろ「成長の目的化」が資本主義の根本であり、「所有の自由」・「自由経済」はその手段なのではないかと感じた。(資本主義は産業革命から始まったと言われるが、その前から所有の自由やそれを前提とした市場での自由な交易は存在していた。資本主義の弊害としてよく語られる”環境汚染”や”人間疎外”は、”資本蓄積を最優先するという考え”(成長の目的化)が蔓延した結果であり、ここに資本主義の根本があるのではないか)

また、この「成長の目的化」を正すことで資本主義をいかに修正するのかという話が本書では扱われるのかと思いきや、本書後半では「日本企業の意思決定が是々非々でなされるためにはどうすべきか」という話に主眼が置かれ、話が矮小化している印象を受けた。


とはいえ、”資本主義の定義より社会を変えるための行動が大事”というのも、”日本企業が是々非々で意思決定するにはコーポレートガバナンス改革が必要”というのも、筆者の言う通りだと感じたし、GSにいながら長期視点で活動し続けたという筆者の行動力に感服した。

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2023年10月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

著者は証券に22年務められ、うち16年勤務してきたゴールドマン・サックスから、2023年1月に突然解雇される。

資本を売りとするビジネスの最先端で、資本主義の極みに位置する生き方の今日について共有されています。

GSでのタブーな言動の存在などを知り、今もこのような働き方があるのだなーと思いながら読む。そして同時に、この金融業界が世界の資本を動かしていると考えるとぞっとする…。



- 資本主義の罪

著者は、資本主義を否定するのではなく、資本主義の非本質的な以下の3点が問題を生んでいるという。

①成長の目的化、②時間軸の短期化、③会社の神格化。

まず、一つ目について、資本主義の本質ではない成長至上主義が浸透してしまっていることが問題を生んでいるという。

時間軸の短期化は、特に株式会社などで、4半期ごとの決算のサイクルなどを通して短期的な利益を出すことを求められる制度設計を問題視。

会社の存続が、何をするか、何のためにするか、といったことよりも優先されている、会社ありき、事業継続が前提の状態。ゴーイング・コンサーン。

これらが資本主義の主産物ではなく副産物なのかは、別として、どれもなじみのあるトピックではあると思います。

アメリカと日本、資本主義が生む問題はそれぞれ違いつつも、それぞれで資本主義がうまくいっていない点が書かれています。

- 自由市場での保身

政策保有株式について、そしてそれが日本独特なものであることも初めて知りました。日本独特で、株式を持ち合うことで企業の安定を守る仕組みになってきたらしい。

短期目線への防波堤としての役割。そこに象徴される経営者の保身を批判し、

本物の投資家に興味をもってもらうためには、経営者が政策保有に頼らずに真剣に投資家と向き合うことが大事だと強調されています。

バーター取引についてもご指摘されていました。完全な自由市場での取引を集団として避ける知恵として発展したともいえるのかもしれませんが…。

忖度文化にもつながるところを感じます。

それが膠着してしまっているのが現状なのかなと思ったり。

- 資本と経営

ROA(総資産利益率) が日本は設立後、低下している中で、日本の会社の資産への考え方に課題があるという。

「自己資本」という言葉が使われている点を指摘。

日本基準の貸借対照表にこの定義はなく、自分の資金と言う考え方を助長しかねないと述べられています。
本来は、純資産ーnet assetや、株主資本ーshareholders equity のことだそうです。
ここでも、しっかり投資家と向き合い、リスクを理解してもらうという、IRの姿勢が強調されています。

株式投資とは、「社会課題を解決してくれる企業に対して株式という形で資金を提供し、その企業の成長と共に投資家も配当や株価の上昇によって恩恵を受けられる」ことを意味する。

証券会社からの一つの視点を知るという側面では、投資家関係(IR)の点からも興味深く読めるところがあるかと思いました。

また、

日本は、利益に占める人件費の割合は右肩下がり、というデータ。これはアメリカのデータが少し上がっている傾向にあることと比較されていました。内部留保も多く話題となっているけれども、なかなか根が深そうだなーと思いました。

- 理想の会社

著者は、ビジネスの考え方の順序として、現状を変える必要があると述べています。

利益のあとに、社会に貢献する、ではなく、

社会のため、を儲かるようにすること。

パーパス経営やソーシャルビジネス、

金融業界での多くのタブーなどを読むと、これはまだ例外的な話なのだなーと思いました。

ワークとライフの統合、たぶん100%とかではなく、重なりの話だと思います。

- 個別の時間軸

時間軸の短期化を指摘している際に、画一ではなく、固有の時間軸を持つべきだ、という考え方には大変共感しました。

ビジネスの扱う対象の多様性は明らかである、ということだけではなく、

おそらくビジネスを超えた話でもある。

人間についても、様々な組織や活動についても、すべて早く成果を出す、結果を出すことがいい、という風潮は、資本を扱うビジネスの考え方が、あらゆる場面に浸透してしまっている状況であるといえるのかもしれない。

「自然の流れに沿うのがいちばん環境負荷が少ない」。

その通りだなー。

「功あるひとには禄を与えよ 徳ある人には地位を与えよ」(西郷隆盛)

なるほど。

資本主義の際に見ある金融界に象徴される実力主義では、

どこまで徳を考慮できているのか、できないシステムなのか、とは言えないのかもしれない。

それなら大きく変えるために何をすべきなのか。…

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2024年07月30日

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