あらすじ
日露戦争や第1次世界大戦の“戦訓”をもとに昭和3(1928)年に編まれ、日本陸軍で将官・参謀など、限られた高級将校だけに閲覧を許された軍事機密<統帥綱領>。軍(司令官)以上の戦略・指揮の要諦を説いたこの“門外不出”の作戦指導書にもとづき、日中戦争や太平洋戦争は戦われたと言っても過言ではない。敗戦直後にすべての原典が焼き払われた。本書は、日本陸軍を動かした<統帥綱領>のエッセンスを、現代人に向けて軍事とビジネスの両面からより分かりやすく解説。「総力戦――速やかに戦争目的を貫徹すべし」「政略と戦略の微妙な関係」「すべての軍事行動は迅速を尊ぶ」「前線から遠く離れた司令部は硬直化する」「膠着状態は決して負けではない」「兵力の集中は時間との競争」「土壇場での兵力温存は危機を招く」「単独による各個撃破が他を動かす」など、戦後は兵書のみならず経営哲学書としても名高い“日本陸軍のバイブル”が今に甦る!
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Posted by ブクログ
統帥綱領は昭和3年に編纂されたもので、日本人の気質にあった闘い方を記した日本版の兵法書と言える。それは高級指揮官や参謀のみが閲覧を許された軍事機密文書であり、戦略や作戦立案、そしてそれを統帥する立場にある高級指揮官が実行するにあたっての基本的な考え方を纏めた書である。なお日露戦争に勝利した日本軍の闘い方は同じくロシアを敵視するドイツにも影響を与え、ドイツ自ら独自の「大軍師兵の必携書」という書籍にまとめたが、それをドイツ陸軍に学ぶ日本が逆輸入したものとされている。太平洋戦争敗戦時にこれら書籍は全て焼却処分されたため、後に当時中身を知る元高級軍人たちの手によって(記憶などを頼りに)復元されたものが、今出回っている「統帥綱領」という事になる。これは本来はその作成経緯からも軍隊の戦闘に於ける行動指針になるのだが、会社経営する社長などが自らの会社を率いるための参考書として多く用いられた様である。本書はこの統帥綱領を更に現代ビジネスのあらゆるシーンに活用すべく、最近のビジネスシーンで起きた出来事などを例に挙げて要約された内容となっている。
原文(復元されたもの)一つ一つを、先ずは戦闘に於ける過去事例(書かれた時代よりも新しい太平洋戦争時の教訓など、わかりやすい例を用いて)を並べた上で、戦闘に於ける上級者の立ち居振る舞いを想像させたうえで、更に現代ビジネスシーンに置き換えて説明する事で、容易に理解できる様に記載されている。とは言え、若干職種が営業寄りな事例が多く、正に営業同士の闘い(ライバル企業同士の熾烈なシェア争い)に当てはまる内容が多いと言える。確かにどの様な企業も大抵ビジネスを進めるうえで競合他社の存在があることを無視できないから、その視点(正に経営者)で読んでみると、すんなり頭に入ってくる。
内容と言えば、当時の戦闘に於いても現代ビジネスに於いても、やる事は殆ど同じであり、正確で鮮度の高い情報を集めて、それに基づき迅速に判断する。時に熟慮も必要だが機を逸してはならない、など当たり前の事が多く並べられている。後半やや同じ内容の繰り返しに、ページを捲る指も早くなって行くが、要するにそうした当たり前の事が、現実その中に放り込まれた際に、多くの人には出来ないという事を物語っているようである。斯くいう私も様々な書籍を読んで、知識だけはそれなりに身につけてはいるが、実際に実行者となった際に「実現」できるかはわからない。いや恐らくできないだろう。落ち着いてじっくり考えればわかる事が、正に実行中(戦闘中)に同じ事をやれと言われて、思った通りにいかない、出来ないと言ったことは多々ある。これが生死の別れ目にいる戦場なら尚更である。
そうした事を踏まえて、如何に平時に当たり前のことを当たり前にできる様、思考が瞬間的に出来て、更に身体が勝手に動く状態にまで持っていけるか、それが「身に付ける」という事の意味であると気付かされる。私も会社では考え方は良くても実現に至っていない、現に出来てないじゃ無いかと、上司に散々(2日前にも言われた)言われているが、正にこうした所なのだと改めて気付かされる。今後更に経営に深く関われるポジションに上るなら、今こうした書籍をじっくり(理解しながら)読み進め、考え方を整理しておく事は将来役に立つだろう。
勿論、若い内からこうした書籍に触れられれば、上司や組織長、経営者の考え方を理解したり納得感に繋がる、支えの様な内容に感じられるかもしれない。
Posted by ブクログ
「統帥綱領」の存在を初めて知ったのは「目黒警察署物語―佐々警部補パトロール日記」(佐々淳行)だったと思う。その後「陸軍士官学校の人間学」(中條高徳)でも取り上げられていて、ぜひ読んでみたいと思っていた。
今回、読んでみて感じたのは、書かれている多くの場面が具体的に想像できなかった(=内容が理解できなかった)こと。そのため、それをどのように職場に応用すれば良いか(これが読んでみたいと思っていた大きな理由)もよく分からなかった。
著者はポイントとして、ビジネスシーンへの応用例を挙げているのだが、どうも本論とは的外れなような気がして仕方ない。
結局、これを読むには、その内容を理解する能力が必要であり、当時これを読んだ高級指揮官は、それまでに陸軍内で相応の教育を受け、その内容を理解できる能力を持っているのだと思う。
そう言った意味で、前二著の作者は、その内容を自分の経験と合わせて、読者に紹介していたように思う。