あらすじ
金融システムは私たちの経済生活を支えている。しかし、その核となる「銀行」について知られていないことは驚くほど多い。たとえば、「銀行は預金でも貸出でも利益をあげていない」「貸し渋りを受けた中小企業は4%に過ぎない」「ALMという隠れた利益の源がある」といったことである。本書では、メガバンク誕生の歴史や預金・貸出業務の現実から始まり、ALMというしくみ、金融技術、あしたの銀行像までを解説する。そうした銀行に関する正確な知識は、私たちの経済生活の礎となるはずだ。あしたのための「銀行学」を学び、正しい判断力を養える一冊。
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Posted by ブクログ
銀行に関して超詳しく書かれた本。融資を受ける方法とかいう類いの内容ではなく、あくまで銀行という会社の事情がわかりやすく記されている。おかげで、そのことから相手側の思考回路や求めているが予想できるようになるため、戦略が打てる気がする。合わせて読むべき本として、小山昇の“実践”銀行交渉術 無担保で16億円借りるをおすすめします。
Posted by ブクログ
わかりやすくて、鋭い指摘がなされている良書。
(概要)
日本では、海外企業との競争にさらされ、IT化が重要になるなど、
80年代に比べて、中小企業の経営が難しくなってきている。
それにより収益性が悪化しているため、
銀行はなかなか中小企業にお金を貸すことが出来ない。
だから、貸し渋り問題の本質は、銀行にあるのではなく、
中小企業の収益性の低下にある。
外銀と比べて収益性が低い邦銀が収益性を高める方法として、
・金利の適正化
・手数料収入の増加(投資信託の販売促進など)
・中小企業の収益アップ→融資拡大
の3つを挙げている。
このうち最も重要なのは、「中小企業の収益アップ→融資拡大」という方法である。
中小企業の収益アップのために、以下のアイデアを挙げている。
・(合併等により)資本を蓄積し、(IT化などの)仕組みづくりに資本を投下する
・合併による販売管理費の削減
・合併による組織力の向上→海外進出
・中小企業庁の「経営革新計画」の利用
・運転資金ではなく設備資金を調達できるしくみの創設
(運転資金と設備資金で金利を変える等)
・経営計画をきちんと立てるインセンティブをつくる
(融資審査の際に、経営戦略の開示を求める等)
(感想)
重要な問題は中小企業の収益性の低下である、ということがわかってよかった。そしてそれを解決することは、自分のやりたいことにどんぴしゃりである。中小企業の収益性の向上に貢献できることは、自分のやりたいことにも重なるし、邦銀の収益性向上にもつながるし、日本の雇用拡大にもつながるし、日本経済の復活にもつながる。銀行で働くことにかなりモチベーションが沸いてきた!読んでよかったー。
この一年は、中小企業の社長達と互角に渡り合えるだけの知識の習得を粛々と進めよう。
Posted by ブクログ
銀行業界以外の人が読むことを想定した内容であり、平易な文章にて一気に読める。ざっくりとだが、銀行とはどのようにして収益を上げているのかがよく分かる。俗に言う「図解シリーズ」的な幅広い網羅性は無い分、肝心な部分に絞っているので理解が進む。
でもそこで語られているのは、読み手想定ではない銀行の人たちや融資をしてもらいたい中小企業の人たちだったりするところがおもしろい。銀行業界に長く関わり、日本の銀行業界の行く末を案じ、私案を提示することで日本の銀行業界の底上げを願っており、とても愛情に満ちた内容である。
銀行業界に興味ある方には入門編としてオススメ。銀行の胡散臭さやあくどいと感じている人には、この本の好意的な文面に疑問を投げかけるかもしれない。しかし、どんな業界でもそういう裏の面はあるもの。そういう偏見だけでとらえず、この本を素直に読んでみてはどうだろうか。
Posted by ブクログ
民営化騒動の際のマスコミの騒ぎかたは異常だったが、基本はマスコミも民営化を推進する気はなかったんだろう(大蔵省には逆らわない)。ただ人気が出てしまった小泉さんを敵にはまわせず、本筋を避けたということか。避けたかった本筋であろうゆうちょ銀行の問題点や銀行の実態についてちょっと分かったような気がする。
預貸率(集めた金の残高に対して融資した金の割合)はピーク時の93年には90%ほどが今は70%程度に留まり、ソニー銀行は30%台、じゃパネット銀行では10%を切る水準にあると。これには驚いた。銀行は預金が集まりすぎて困っているんだ。融資したくても効率的な融資先がないんだ。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
「銀行の貸し渋りは問題です」と言われているが、「何が問題なのか」、「なぜ起きているのか」を理解している人はそれほど多くない。
また、「ALM収益とは何か」と聞いてすぐに答えられる人は何人いるだろうか。
経済生活を支える金融システム。
しかし、その核となる銀行について知らないことは驚くほど多い。
そのしくみを知ることは私たちの経済生活の礎となるはずだ。
あしたのための「銀行学」を学び、正しい判断力を養える一冊。
[ 目次 ]
プロローグ みんな名前が変わりました
第1章 貸し渋りって本当ですか?
第2章 預金ばかり集まって困っています
第3章 ALM収益という魔物
第4章 金融技術を責めないで
第5章 イノベーションの乏しい世界
第6章 あしたの「銀行」は…?
エピローグ 本質は21世紀の中小企業問題
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
規制や法律にガチガチに固められ、取引先の中小企業は収益が上がらない。今、銀行に一体どんなイノベーションができるのだろう?なかばあきらめムードが漂っているようにさえ感じてしまいますが・・・。そんな折、この本を発見したので読んでみました。
本書では、日本の銀行を取り巻く環境や、収益が生まれる仕組みなどから始まり、貸付先である中小企業の実態までとても分かりやすく書かれています。
銀行は、貸し渋りのイメージのせいか悪者にされがちですが、この本を読めば、業界の実態と、銀行が何をしているのか分かります。そもそも「貸し渋り」を非難する前に考えなければならないのは、中小企業が抱える本質的な問題。目先の運転資金のための融資では、何の解決にもならないのです。
貸出金利を正当な水準まで引き上げる、中小企業のM&Aを進める、廃業したい中小企業の経営者にリバース・モーゲッジを適用、など、面白い提言も書かれています。いずれにせよ、国を挙げての支援が必要とのこと。
Posted by ブクログ
日本経済を活性化するには、貸し渋りと銀行を批判する以前に、
中小企業の収益力の低迷(80年代の3分の1)という根本的な問題を解決する必要がある。
事実、「貸し渋り」の対象となっている企業は12~17%にとどまる。
銀行は預金でも貸出でも儲けておらず、銀行の収益の柱はALMという仕組みである。
最後にこれからの銀行、中小企業の経営改善に向けていくつか提言されていた。
リバース・モーゲッジという視点は斬新であった。
Posted by ブクログ
マッキンゼーで金融機関の経営改革に長年携わった著者が、銀行(およびその主要顧客である中小企業)の実態について、一般の人々向けにわかりやすい文章で書いている本。
あっという間に読める分量で、かつ著者が考える問題の本質も明確に示しており、満足のいく内容でした。
著者の提言対象は、主に銀行(の収益構造)と中小企業に分けられます。
中小企業の経営悪化の実態はマスコミなどでも取り上げることが少なく、銀行経営に関する議論のベースに組み込まれていない気がします。著者が述べているように、「金融=悪」という昨今の紋切り型の議論に終始して満足するのではなく、現状を把握して地に足をつけた議論を進めていくことが重要であると、改めて認識させられました。
一般の人々に広く読んで欲しいですが、銀行志望の学生も一読すべき本だと思います。
以下、メモ
============
・ノンバンク:カード会社や信販会社、消費者金融会社は、お金を貸してはいるが預金を集めているわけではないので、銀行とは言わない。
・ノンバンクの栄枯衰退:スコアリングを用いて個人向けローンの審査効率を高め、大規模なコールセンターを用いて貸し金の回収を容易にしたが、2000年以降弁護士広告の解禁(それに伴う債務整理などを手がける弁護士の活躍)により、逆風にさらされることになる。また、上限金利も出資法(29.2%)ではなく利息制限法(20%)に統一されたため、過払い問題が経営に追い討ちをかけた。
・進まない地銀の経営統合:スーパーリージョナルバンク(州をまたいで事業展開を進めていく米地銀)を目指すべき。ふくおかファイナンシャルグループに期待。
・片肺飛行(預金業務だけ)のゆうちょ銀行:集めたお金を貸し出しではなく、国債などの運用商品で運用している。
・80年代前半と2000年代で比較すると、中小企業(本書の定義では年商数億円から数千万円までの企業)の収益力は3~4分の1に低下している。「貸し渋り」以前に中小企業の収益力を回復させる手立てを考えるべき
→収益力低下の原因
・高度な経営力が求められるようになった
・資本蓄積と、競争力強化のしくみ作りが進まなかった
・「経営革新計画(3年後に付加価値額を9%伸ばすことを目標)」を活用すべき
・運転資金よりも設備資金への融資の仕組みを改善すべき
・明確な経営計画の策定
・廃業したい中小企業に対してのリバース・モーゲージの適用
・「貸し渋り」の対象となっている企業は12~17%にとどまる。(住宅ローンは30%ちかい)
・信用保証協会(全国に52)が再審査を行い、銀行に融資を断られた企業への融資を保証する(保証契約)。
・信用コスト:実際に損失となった金額(代位弁済をした額から不動産などの担保を処分して回収できた額を引いた額)と保証残高との比率で評価。
最悪の2002年には3%に上昇→信用保証協会と銀行のモラルハザード
・2007年に責任共有制度の導入:銀行にも20%の信用コストの負担を求める。
・預貸率が近年悪化している:93年90%→05年70%。国内経済の成熟化、高齢化社会の到来。ゆうちょ銀行の存在がその悪化を抑えている。
※株価下落時には上昇
・預金減らし作戦:投信や貯蓄性の保険の販売(手数料の獲得)
・「預金金利72の法則」:72を預金金利の%で割ると、その金利で預けて残高がちょうど2倍になるまでの年数と一致する。
・銀行の市場運用:株式運用はしない。原則として5%を超える株式を保有してはならない。不動産投資もしない。
・ALM (Asset Liability Management:資産負債管理):貸し出し(長期金利)と預金(短期金利)の契約期間のずれを利用して収益を生み出す。銀行の利益の大部分を占める。金利変動の影響(長期金利が短期金利より低下するなど)を大きく受ける危険性がある。また、本来であれば株主や預金者に還元すべき利益であるが、貸し倒れ引当金に使われている。
・金融技術は「市場の流動性」を前提としている
・日本の銀行でのイノベーション:ATMなどの業務効率化以外ない。
・スコアリングなどの応用
・人材:銀行員の国際化、理科系を経営層に。
・被買収企業の長所も使うべき
・批判能力中心の銀行員になりがち
・利益=収入-信用コスト-内部コスト
※邦銀は内部コストが低い(業務は効率化されている)が、収入が非常に少ないため、欧米に比べて収益性が低い
提言①金利の適正化(貸し出し金利の上昇)
②投信、保険の販売による手数料収入
③地銀の統合
④銀行員の国際化
⑤経営において銀行を特別視しない
Posted by ブクログ
経済を活性化させるためには銀行の存在は必要不可欠だ。
ただ、90年代あたりからバブル崩壊、不良債権問題、サブプライムローン問題などなど金融がらみの危機が相次ぎ、また、銀行の統廃合が繰り返されたり過剰融資や貸し渋りなど、銀行業界は激しい問題や変化にさらされてきた。
銀行や金融業界、金融システムの批判も一理あるだろうけど、貸したり預けたりしたお金の流れや収益モデルなど銀行のシステムがどうなってるか、あまり知られてない部分も多いと思う。
この本は銀行のしくみなどについて分かりやすく説明するとともに、銀行の課題、銀行の今後がどうあるべきかについて書かれている。
銀行の事が分かれば、お金の流れについての理解がある程度できるのではないだろうか。銀行についての基礎を学ぶには、この本は最適な一冊だと思う。
Posted by ブクログ
銀行が何をしているのか、という素朴な疑問に答えてくれる本。
中小企業に活気が出れば日本経済も復活するという思考で書かれており、その点については激しく同意。
非常にためになった。
Posted by ブクログ
「金融技術を超えて人間がどう判断しどう行動していくべきか」
日本の銀行の海外と比較した特徴、規模別の特徴、銀行の貸し渋り、などについて幅広く定量・定性的に分析されており新書としては十分な情報量。
国際的に邦銀は内部コストが低く、効率性は高いが、手数料ビジネスなどの強化が遅れ、また金利の決定方法にも問題があり収益が低いため結果として収益性が国際的に低く外銀にとって魅力のあるマーケットとはいえないという。
確かに手数料ビジネスについては邦銀上層部の方も新聞などでコメントしているが「頭を使う仕事」であり現在遅れていて急激に伸ばすことは難しいが取り組まなければならない問題である。
大蔵省時代から規制の中で、本当の裁量は人事権くらいといったなかでイノベーションが生まれなかったという本書の指摘には同意。
特に業務レベルでの危機感はほとんどないのではないだろうか。
内部コストが、、とか手数料ビジネスが、、とか、そこが分かっているなら即刻窓口営業時間の拡大を実施すべきだろう。
手数料ビジネスのうち銀行は特に投資信託の販売については成功してきた方だといえると思う。
(銀行員のまじめなイメージが奏功したと本書では指摘している。)
これらは金商法の関係もあり顧客一人当りに裂く時間が長くなるが、それでも高い手数料と預貸率70%程度の邦銀の現状からすると預金以外にお金を回して収入につなげるビジネスは2度オイシイ。
内部コストの余裕と金余り、収益性の強化が課題であるならば、法律上の問題でないにも関わらず3時におりるシャッターをなんとかし、休日の営業を開始すべきであると思う。
確かに預金のうち相当量を占める高齢者をターゲットとし、年金保険を主力にやっていけば当面はなんとかなるだろう。
しかし、次のビジネスを育てない限り次はない。
事業ポートフォリオのバランスの見直しは不可欠だと考える。
特に規模での勝負が難しい地方銀行においては重要になってくると思われる。
それができないのであれば、現状108の地銀を半数程度にM&Aなどで減らし、地域の独占化を進めていかなければ今後増加が見込まれる信用コストの吸収は難しくなるのではないだろうか。
・保証料は保証金額の1%程度が一般的だが、2000年代前半に信用コストが3%台になりカバー出来なくなった
-2007年10月、責任共有制度導入
-信用保証協会保証先が返済できない場合に銀行に対しても20%の信用コストの負担を求める
・元本1,000万円保証のため、自動的に0.08%程度預金保険機構に支払う
・ゆうちょ銀行の抱える180兆円の預金が一般の銀行に流れ出したら預貸率は70%台から50%台まで低下する
-ゆうちょが貸出業務に進出してこないならあった方が良い(メガバンク・地方銀行の本音)
・90年代から2000年代初めについては、住宅金融公庫などからの借り換えによる住宅ローン獲得が全体の7-8割
-今でも5割くらい
・貸出利息だけでは資金調達コストと営業費用で手一杯で、貸倒引当金をまかないきれない
-ALM収益の一部が貸倒引当金として使われる
-本来は預金者や株主に還元すべき
・返済が滞った顧客情報は銀行業界全体で共有されているが、返済をしている顧客の情報は共有されていない
-本来は、他行を含めた借入総額の情報が必要
・銀行が金利をあげられない思い込み
-金利を上げることで、ただでさえ苦しい企業の台所をさらに苦しめるのではないか
-「金利よりも資金を手に入れる方が大事」
-金利を引き上げると取引先を失ってしまうのではないか
・「取引を続けて赤字を続けるより、その取引先を失った方が収益改善」
・2000年以降、弁護士の広告が解禁になり債務整理や破産手続などの活動が活発になり、個人破産が急増した結果ノンバンクは逆風にさらされた
・邦銀の世界進出の課題
-海外の銀行の買収を検討していく
-地元の優秀な経営者を見つけて経営を任せていく
-海外の経営者と英語でまっとうなコミュニケーションを図れるようになる
Posted by ブクログ
著者はマッキンゼーで銀行コンサルを務めた経歴のある方。
銀行業とは一般的な話よりも的を絞って書いています。
統合の歴史、貸し渋り、ALM収益などを説明しています。
この本を読むことでマスコミの銀行批判が短絡的なことがわかると思います。
Posted by ブクログ
新聞の広告をみて購入したつもりだけど、2009年発行と結構古い。著者の大庫氏は東大⇒マッキンゼーで銀行コンサル。
感想。メディア主導で築かれている銀行への誤解を解きほぐすというほんの目的は十分果たされていると思います。感情論や浮ついた主張ではなく、事実を淡々と説明してくれています。ただ保証協会の説明は完全に誤っている(銀行で断られた人が頼るのが保証協会だと。まあ与信的にはわかる主張だが。)
備忘録。
・ALM収益の構造がよくわかるとの広告につられたのだが、語彙として覚えることができたけど、極々当たり前でした。
・中小企業とは具体的にどんな企業か、という話の前提はやっぱり必要だ。
・中小企業向け金融は儲からない、またその理由もよくわかった。確かに説明を聞けば当たり前だ。
・金融技術は悪くない。悪いのは金融技術が効果を発揮する前提条件を無視してアクションをとること。その通り。
備忘録を並べると、悪くない。
Posted by ブクログ
コンサルとして銀行経営に携わった著者による日本の銀行の問題点を解説している本。
日本の銀行の歴史から、現在の銀行の問題点まで網羅的に解説されている。
・中小企業に融資をしても銀行はもうからない。
・それは金利水準が低すぎるからで、根本の問題は、中小企業の経営を革新することにある。
・預金で資金を得て、貸付を行うモデルでもうからないために、投信販売や住宅ローンに注力し始めている。
・その他長期金利と短期金利の差で収益をあげている。この収益は、金利リスクをはらんでおり、預金者や株主に還元すべきものだが、そこで企業の貸倒コストを賄っているのが現状。
・また、銀行は今までイノベーションをしこなかった。中小企業への支援携帯の革新も含め、新しい銀行経営の形態を考えなくてはならない時代を迎えている。
Posted by ブクログ
【預金は儲からない】
・預金金利と市場金利があまり変わらない
・預金には利息以外のコスト-預金保険料(0.08%程度)、ATM、ネットバンキング、広告費・・・がかかる
【コントローラブルな預金~プライシング~】
・預金金利をほんの0.数パーセント上げるだけで、数百億円あるいは数千億円といった単位の預金が流れ込んでくる
・預金をどれくらい獲得するかは銀行側の意思でかなりコントロールできるようになった
・キャンペーンという形で、時期や場所、顧客層を限定して取引を強化したいお客様にアピールする
【貸出収益でも預金収益でもない、ALM収益】
・収益=貸出収益(貸出金利-貸出と同じ期間の市場金利)+ALM収益(貸出と同じ期間の市場金利-預金と同じ期間の市場金利)+預金収益(預金と同じ期間の市場金利-預金金利)
・貸出収益は営業費用や信用コストを差し引くとあまり儲からない→市場で運用で代替可能
・預金収益は営業費用を差し引くとあまり儲からない→市場からの調達で代替可能
・「預金は短期、貸出は長期」という傾向と、「短期金利は低く、長期金利は高い」という通常の金利傾向である限り、巨額のALM収益を構造的にああげることができる
・銀行は「預金/貸出会社」というより「ALM機関」に近づいている
【審査という企業文化】
・銀行という組織には、お客様を評価する「審査のカルチャー」が色濃く根付き、自らが発想を新にしていくような創作活動からは距離がある
・批判能力中心のビジネスマンになりがち
Posted by ブクログ
近年の銀行再編の流れから、最近の銀行業務の状況をわかりやすくまとめた本です。
私自身が知りたいと思っていた内容とは少し違っていましたが、ニュースなどでは伝えてくれない、もう一歩踏み込んだ銀行業界とそれをとりまく企業の実情がよく分かる良本です。
著者の見解なども論じられているのですが、表層的で斬新なものではありません。その部分は読み飛ばしたほうが、客観的な事実のみを理解できるため、いっそのことよいかもしれません。
Posted by ブクログ
銀行の概観について、取捨選択されて読みやすい本。
トピックが具体的で記憶に残っている分、細かなところは少々難しく、別途参考文献が必要と感じた。
Posted by ブクログ
邦銀が苦しみが聞こえてくる1冊。
国内市場において邦銀が(拡大・効率化の両面で)「やれることはやり尽くしてしまった」という現状を、金融関係者以外にもわかりやすい平易な言葉で説明してくれている。
難解な金融ビジネスの仕組みを図やグラフで表現していることもあるが、この本がわかりやすい一番の理由は、定量データの絶妙な使い方にある。預金業務も法人融資ももはや儲からずジリ貧ということを、モデル数字を置いて説明している。概念にとどまらず、数字で考える思考を持つことの重要性を改めて感じた。
Posted by ブクログ
著者、大庫氏である。東大理学部ーMckーパートナーー独立というような経歴。
数学に得意で、かつMck時代にリテールバンキング案件を主に行っていた事からも、
銀行学?を語らせるには、申し分ない。
本書の内容は。いくつかのトピックの組み合わせであり、銀行って何だ?と
いった漠然とした内容に答えるには不十分であると個人的には思うが、コンパクトかつ
明瞭で、なんとなく今の銀行の状態が分かるって感じにはなっていると思う。
しかし、軸がぶれている感が出ているのは否めない。
結局何が言いたいのだろうか・・・?
まぁ、主張は、対銀行、対中小企業、対銀行を知りたいヒトって感じに分けられると
思うが、主張にインパクトがない。
それらの主張の中で、当たり前といえば当たり前で、妥当な意見は、
■銀行は、理系の人材を活用せよ!
これである。
投資銀行は、以前から理系の人材を積極的に採用し活用しているし、
経営コンサルティング会社も同じである。日本においては製造業が多いことからも
周知の事象だ。
銀行だけが、理系は未だに異邦人(作者の言葉を借りれば)であるらしい。
数字を扱う仕事にしては、お粗末だ。
確かに、採用し、リスク管理等を行わせているらしいが、大きく出世のコースに
乗るには至らない。
ここらへんが、邦銀の弱さであるんだろうな。
色々な意味で。
以上