あらすじ
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早くに父を亡くし、母とも離れ離れになっ た、兄と弟。アンパンマンの作者やなせたか しが弟・千尋との思い出を綴った幼物語。
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Posted by ブクログ
やなせさんと弟に関する詩集。エッセイのような詩のような。ほんわかした記憶と悲しい記憶が混ざってる感じ。
上半分がイラストで下半分が文字。やなせさんのイラストも素敵。
幼いころに父親が亡くなり、母親は再婚して、弟は伯父夫婦の養子に、やなせさんも伯父夫婦の家で暮らしたけれど、弟とは立場が違っていたということが書かれていた。
この時代は養子はそこまで珍しくはないらしいので、弟が養子になったのもやなせさんが裕福な伯父夫婦の元で暮らしてるのも、不幸とかそういうのでもないらしい。
母親も子供連れでは再婚できなかっただろうし、女は結婚して男がいないと生きていけない時代だから母親が悪いというわけでもない。そういう時代。
そして、戦争で弟は死んでしまう。やなせさんは生き残った。
この詩のようなエッセイのようなものは、『弟へのレクイエムとして書いたもの』48-49pと、最後の『僕と弟』の文章の中に書いてあった。他の誰かに見せる予定はなかったと。それが勧められて出版する流れになったのだと。出版にこぎつけた人ありがとうな気分になった。
読めてよかった。ごちそうさまでした。
Posted by ブクログ
朝ドラ「あんぱん」を観て、おとうととの詩集があることを知り、さっそく購入した。本の紹介には「18編の絶唱」とある。22歳で海に散った弟を、詩と絵で綴ったものだという。
まず表紙の絵に、胸が締め付けられる。弟がもういないことへの悲しみが伝わってきて、思わず涙が出る。兄弟って、小さいころは絶対的に年上の子が大きくて、下の子は頼りなく小さい。この表紙のように、はっきりとした身長差がある。下の子は、なんでもできるお兄ちゃんやお姉ちゃんを見上げて、絶対的な信頼を寄せ、頼りにしているものだ。やがて成長して、下の子が上の子の身長を追い越したり、立場が逆転することもあるけれど、この年齢差からくる身長差は、幼いころ特有のものだと思う。うちにも、姉が弟を抱っこしたり、おんぶしたり、ミルクをあげたりしている写真がたくさんある。でも、今では弟の方が大きくなって、そんなことはもうできない。小さいころだけに見られる、兄弟の貴重な光景だ。
この本には、弟とのかわいらしい思い出や、兄弟ならではのしがらみに対する悔恨も綴られている。
*「ぼくが妹だったら、兄ちゃんはよかったかな?」(子どもの頃、体が弱くて女の子の恰好をしていた千尋のことば)
*「兄ちゃんといっしょでなければいや。」(伯父夫婦の養子になった弟。兄の崇だけが独りぼっちにならないよう、いつも一緒を望んでいた)
*よく並んで川のそばでおしっこをしていて、弟の大事なところが腫れてしまったという、微笑ましくも不思議な幼い頃の思い出
*ちゃんばらごっこをしていて、外敵が襲ってきたら、弟は絶対に自分の味方だったという、二人の絶対的な信頼関係
*兄の劣等感から、ふざけ合いが狂気のようになり、弟を背負い投げしてしまったことへの後悔。やがて兄弟の差がなくなり、弟に追い抜かれるかもしれないという複雑な感情
*伯父夫婦の子どもとして違和感なく暮らしていると思っていた弟の本から出てきた、たった一枚の本当の父親の写真
*懸賞金を一度だけ分けてあげたこと、そして弟が「すまんな兄貴、また頼むよ」と言ったこと。またはもうなかったこと。もっと弟を喜ばせたかったという、消えない後悔
*弟が自慢だったけれど、心の底には嫉妬もあったこと
*戦争で、パシー海峡の珊瑚の海に散ってしまい、木札一枚になってしまった弟のこと
最後に、やなせたかしさんによる「おとうとものがたり」へのエッセイが載っている。心の奥の寂しい部分がぎゅっと締め付けられるような、やりきれなさ、やるせなさが綴られている。戦争で弟を失い、帰ってこなかったことへの無念が、ひしひしと伝わってきて苦しくなる。戦争は、絶対にあってはならない。それだけではなく、もし家族で仲たがいしている人がいれば、後悔のないように、日々の関係を大切にしてほしい。そんなことを、たくさん考えさせられる詩集だった。
絵がとても素敵なので、何度でも読み返したくなる。そして、読むたびに涙ぐんでしまう。
Posted by ブクログ
やなせたかしさんの絵と詩は、子供の頃から好きだったけれど、この詩集の存在は初めて知った。
弟さんへの愛情、思慕、悔いがヒシヒシと伝わってくる。
やなせさんの詩と絵が、細かな憧憬を思い起こす。
弟さんが亡くなってからの長い、70年弱の時を辛い思い、温かな思い出を心にしまいながら生きてきたのか。
今、あちらで再会出来ているだろうか。
どうか、そう思う。
Posted by ブクログ
人生に「たら」はない
過ぎてしまえば人生も夢と同じ
過去は自分の主観でしか振り返れない。
弟への想い、周りへの想い
後からじんわり沁みてくる。
柳瀬さんの悲しみに
柳瀬さんの愛の深さに
朝やになったような気持ち。
アンパンマンの世界を描く人が
見た世界を知りたくて
軽い気持ちで手に取ったのに
読み終わって本を胸に抱きしめた。
R.I.P
Posted by ブクログ
やなせ先生が亡き弟さんへのレクイエムとして書かれた詩集。
朝ドラ『あんぱん』がきっかけで、こちらの作品に出逢えた。
「母とのわかれ」「シーソー」は朝ドラそっくりの内容。ドラマ制作者の方がこの作品を参考にしたのだろう。
幼い頃のやなせ先生と弟さんの姿はとても儚げで心細そうで、見ているだけで切なくなってくる。
やなせ先生の弟さんへの複雑な想いが文面から伝わってくる。お兄ちゃんって色々ツラいんだね。
きっと今頃、あちらの世界で弟さんと再会できましたよね。アンパンマンをヒットさせて有名になれたことを弟さんに自慢してほしい。
久しぶりにあの頃に戻って、2人でシーソーをギッコンバッタンさせているかな。