あらすじ
別の宇宙で生きる夏紀と登志夫。二人を繋ぐ巨大な飛行船とは?月と火星開発が進みながらWindows2021が発売されたばかりの夏紀の宇宙。そして登志夫の2021年では光量子コンピュータが異常を示す。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
女子高生の夏紀と大学生の登志夫(年齢は夏紀と同じ)は異なる宇宙(並行世界)にいる。土浦に到着する飛行船グラーフ・ツェッペリンを介して出会う。この二人は量子の性質である情報のあるなしが同時に存在しているのと同様な存在である。この二人の関係は恋人になるものではなく、恋人でもあり兄弟でもあり本人でもあるような量子的存在だ。だからこそ、ラストに向かう現象は、シュレディンガーの猫のように観測されるまでは状況が確定しないことになる。量子の振る舞いを17歳の男女として表現したところが、あやふやな立場と相まってより揺れる心の不安定さが伝わってくる。さくっと読めて面白かった。
Posted by ブクログ
こういった話に趣を感じるのは、やはり人間が過去から現在、未来へ流れていく『時間』の中に意味を見出す生き物だからなのだろうか?
『時間』は、人間の経験のなかでも取り戻したいと切望しても叶わない儚さがあるのに対して(青春)、サイエンス的にそもそも時間とはなんだろうか?存在しているのか?『流れる』ものなのか?という問いかけに真っ向から挑んで、時間の『流れ』を否定しねじ曲げ出会うはずのない線を交わせて物語にする(SF)から、ですかね。
「出会うはずのない出会い」っていい。この現象が起こらなかったらこのルートはありえなかった。日常一つ一つが選択の連続って誰かが言ってたけど、その中でも「選ばなかった方のルート」も気になっちゃうわけで。
時間の法則を破って考えてしまうと、世界も宇宙も何もかもが規模が大きすぎて、やはり制限されてる世界くらいがちょうど住みやすいのかもしれない。あとはやっぱり「辻褄合わせ」が大変な気がする。ひとつを動かしてしまうと途端に崩れるから、崩さないように変えていくのが毎度の時間を戻したりする系の話で苦労してる気がする。
案外ちょうどよくできてるんかな。
という話だと、時間は「流れてる」前提だよな?
物理学も面白そうだなと思ったし、「時間」について昔大学の講義で聞いたのよ!!参考文献を思い出してもっかい勉強したい。
Posted by ブクログ
並行世界のそれぞれに暮らす高校2年生の夏紀と、17歳だけれども飛び級で東大2年の登志夫が、著者の故郷土浦を舞台に交差していく長編SF。甘酸っぱさ漂う良質のYAであり、ネット空間に堆積されていく情報の本質にせまっていく作品でもあり、と思いながら読み終えて、あとがきに書かれた著者の近況を読み、さらに心打たれた。夏紀に生理がくることが物語のなかで重要な要素のひとつになっているのだが、生理のない女性である自分にとっては、これは読んでいて、かなり苦しく、つらかった⋯⋯それでも、この物語が、自分は好きです。
Posted by ブクログ
星2.5
だらだら感があり、ストーリーに起伏がなかった。いや、夏紀と登志夫が結びついたところから「来るか!?」と思ったけど、そこからはなんだか観念的な世界に飛んでいってしまった。夏紀の最後の行動もあまりに唐突で、よくわからなかった。
Posted by ブクログ
ふわっとした並行宇宙SF。でも、堅苦しい話は出てこないので、ささっと読むのにいい。四畳半神話大系のようなコミカルなところはない。恋愛色も薄い。
最後は悲恋ぽく終わったのが意外だった。
途中に少女のエッというエピソードもある。
Posted by ブクログ
⚠️少しネタバレあります。
140あたりと315辺りの展開は好き、加えてその時の夏紀の感情についての描写は、難しく書かれながらもどことなく共感できるものがあり本に夢中になれた。
話の内容は中々難しかったし、もう少し恋愛要素が欲しかったのも確かだが、個人的には後半の時間と情報の関係性、その情報の集まりとも言える時を進む或いは後退する時の描写がとても好きだった。