あらすじ
その美しい庭は、人の心を曝け出す。
駆け出しの造園設計士・高桑は大学の卒論で作庭師・溝延兵衛と、彼の代表作となったある庭を取り上げて以来、長年にわたり取り憑かれ続けていた。
武家候爵・吉田房興が兵衛に依頼したもので、定石を覆す枯山水を作るために、大きな池が埋められていた。その池からは、白骨死体が見つかっていた――。
昭和初期。限られた時代を生きたある華族の哀しみと、異能の作庭師の熱情が静かに呼応する「美しい庭」の誰も知らない物語。
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Posted by ブクログ
好きな著者だったので。
華族と庭、殺人のお話。
「ボニン浄土」に続いて、おとぎ話のようなお話。
京都のお寺の庭をぼーっと見たりするのは好きだが、
その意味や設計者の意図は考えたことがなかった。
あまり大きな庭は好きじゃないなーとぼんやり思ったりしたことはあったが、
市井の人々と違って、
大名や華族は町や野山をを自由に出歩くことができなかったことを考えると、
大きな庭は自然を楽しめる小さな世界だったのだろう。
あだ花、と言ってはひどいかもしれないが、
「華族」を華やかながらも儚い姿に描いているところが、
おとぎ話に思えるのだろう。
庭の池から死体が発見されたのをきっかけに、
作庭師に庭づくりを依頼した侯爵。
庭づくりを通して変わっていく侯爵と侯爵夫人と作庭師。
その死体だけで殺人が終わった訳ではなかった。
庭でも、作品でも、重要な役割を果たしているシラカシが、
どんな樹木なのかが実感できないのが残念。