あらすじ
希望の丘小学校5年3組、通称リョウタ組。担任の中道良太は、茶髪にネックレスと外見こそいまどきだけれど、涙もろくてまっすぐで、丸ごと人にぶつかっていくことを厭わない25歳。いじめ、DV、パワハラに少年犯罪……教室の内外で起こるのっぴきならない問題にも、子どもと同じ目線で真正面から向き合おうと真摯にもがく若き青年教師の姿を通して、教育現場の“今”を切り取った、かつてなくみずみずしい青春小説!
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Posted by ブクログ
現場で起こる悲喜交々と、
そこで子どもたちと向き合う
「普通」の教師の奮闘が、
全てとは言わないまでも
限りなくリアルに描かれていた。
作者のエールを有難く受け取って、
私もまた子どもたちと向き合いたいと思える。
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心が温かく、気分が前向きになれる作品に出会えるのも読書の醍醐味。良太先生が一所懸命で良い先生なのはもちろん、染谷も校長先生も素晴らしい。子どもの成長って本当に目覚ましく、昨日できなかったことが急にできるようになったり、こちらの予想外の言動をしたりと親でも日々驚かされるが、そんな気持ちを一緒に共有してくれる学校や保育所の先生はとてもありがたい存在。そんな素敵な先生にたくさん出逢えるといいな。1つだけ良太に不満を挙げるなら、子どもが間違った時はきちんとそのことを指摘してほしい。
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良太先生が養護学校で、国語の時間に感情移入して悲しくなって騒いでしまった障碍児の生徒に対して、”確かにシロクマの家族はかわいそうだけど、これは物語なんだ。お話の流れをたのしんで、それから自分だったらどうするかを考える。お話っていろんな人の気持ちになって考えるための練習なんだよ。”て言葉。
恐怖や痛みを超えるには、そんなものを忘れるほどたくさん心を動かせばいいのかもしれない。
って言葉。
5年3組の生徒の兄弟が家に放火してしまった事件についての会見のときの良太先生の言葉。
”一生懸命に話をきき、いっしょに考えて、いっしょに感じる。その過程ですこしずつ、子どもの心をほどいていく。それくらいのことしか、教師にできることはないのかもしれません。”
染谷先生のいう”価値の共有体験”
教師と子どもたちのあいだで、どれだけ同じ思いをもつことができるか、それが小学校の教育の成否を決めるのかもしれなかった。
”この子はなにか胸のなかにたまっていたものを吐き出したがっている。けれど、言葉の多くない子どもだから、時間がかかるのだ。”
教育とは何か、教師とは何か、共感できることが多かった。
生徒と同じ気持ちを共有することが大切だってこと、何かをする時、嫌な思いをしている子がいてまでやる価値があるのかきちんと天秤にかけるべきだってこと。
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コロナ禍の中で
子どもたちに会えない中で
悶々としていました。
そんな中
この本に出会い
石田衣良さんのメッセージ
子どもも学校もきっと大丈夫
この言葉に涙しました。
今
私にできることを考えて
日々を過ごしたいと
思いました。
Posted by ブクログ
初めて新聞連載された小説。
石田衣良にしては珍しいジャンル
表紙にイラストもかなり珍しい
こういう先生がいるから嫌な学校も楽しく感じるんだろうなって思う反面、先生大変だな〜って思った。
そう言えば家造りの話、完成しないまま3章が終わったけど、どうなったんだろ…「想像にお任せします」なんだろうけど結末気になる…。
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所々で自然と涙が出た。
学校の先生やってる人は一度読んでみてほしいなぁ。
映画化やドラマ化されていても不思議じゃないと思う。
ちなみに私は妻夫木君のイメージで読み進めていた。
もっと石田衣良の本を読んでみたくなった。
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熱血、情熱というよくある学園ものではなく、取り立てて志が高いわけでもないような、どこにでもいる小学校教師の1年を描いた物語り。
教室の内外で起こる様々な問題に、教師と生徒が共に取り組み、乗り越えていく様を見るのは非常に清々しい。
登場人物の特徴、場面設定、ストーリー性が巧みで、実際に小学校の教師を疑似体験しているようなリアリティを感じる事ができる。
物語の主人公となる『リョウタ先生』こと中道良太だけでなく、同じ5年生を担当する同僚たちの存在が非常に大きい。
読者それぞれにお気に入りの先生や生徒ができたのではないだろうか。
物語を主人公の一人舞台にしてしまうのではなく、まわりがストーリーを固めていく展開は、読んでいて無理がなく、共感できる部分が多い。
小学校教育の現場というのは実際に、これほどまでにドラマチックでいて過酷なもなのかと、そのやりがいと責任感の大きさに驚かずにはいられなかった。
Posted by ブクログ
それが答えだ!
小学校が舞台ですが、先生が主人公の本です。4章あって、それぞれ四月、七月、十二月、三月なんですが、読み進むたびに、あー終わりが近づいてきたなぁ、と思ってしまいました。読み終わりたくない、ずっと希望の丘小学校5年3組を見守っていたい、という気持ちにさせられます。
事件のときの記者会見で、「先生にも責任があるということなんでしょうか」という記者の質問に、良太が毅然と答え返したシーンはグッときます。いま「責任」という言葉が「持つもの」から「取るもの」に変わってきてしまっている時代に、「あります」と言い切ることができる大人がどれほどいるのだろうかと考えると、胸がスカッとしました。また、登場人物の動作や心理の細かい描写は、自分が普段どう生きているのかを客観的に考えてみることにもつながった気がしています。
石田衣良さんの小説は、シューカツ!や4TEENも読みましたが、この本がダントツに気に入りました。今年読んだ本の中で一番です!
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クラス内の問題だけでなく教師間のいじめ問題にも触れている物語。
熱血な訳ではないけど子供たちを最優先に考えている先生って1番良いかもしれない。のんびりしてるけど子供の特性を考えて対応しているのが伝わって、クラスも団結していく様子は、当時小学生だった頃を思い出す。似たような経験をしていたかも。
家庭内問題・教師いじめ・放火事件、色々な問題があったけど、もう少し踏み込んだ話も読んでみたかった。家づくりがどうなったのか知りたかったし、染谷先生のその後もどうなったんだろう。
Posted by ブクログ
楽しく読むことができました。ただ、新聞連載なので仕方がないのかもしれませんがもう一つ踏み込み不足に思えました。それぞれのエピソードが呆気なく解決してしまうのが物足りない…学校ってそんな単純なところでしょうか。酷いと思ったのは、学年毎に同じ問題のテストを行いその平均点で教師を順位づけするって今の学校では当たり前なのでしょうか?私も私の子どもたちも希望の丘小学校のような学校に入学させられなくて良かったと思いました。子供も含めて主要な登場人物が皆んな明るい人たちなのは好感が持てました。
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朗らかな物語は、いいものである。
行き当たりばったりで生きているということは、そのときその場を精いっぱい「生ききっている」ということにつながるのかも知れない。あたふたしながらも自分を飾らず、自分に正直な言動をすることが、結果的には人々の心を動かしていく。
先生とか医者とか専門的な職業を扱った作品は、本当にその職業の人が読むと、リアリティに乏しすぎて鑑賞に堪えないことがあるのではないかとよく思う。この小説がどうなのかは、私は教師をやったことがないのでよくわからないけれども、爽やかな読後感はとても気に入った。
いけすかないヤツかなと思っていた人物が意外といい人間でしかも苦労人だったり、新しいタイプの悪人が登場したり、小説として面白い。「2008年版『坊っちゃん』」とオビに書かれていたが、確かに漱石のあの作品と同じ目線で描かれていると思う。
作品は4つのエピソードに分かれていて、それぞれに「読ませる」。
私がいちばん印象に残ったのは、主人公たちが、障害児の通う養護学校を訪れたときの、瀬戸校長の言葉。
“「おれはときどき不思議に思うよ。なんのために、あの子たちに授業なんか受けさせてるんだろうって。働くこともむずかしい、読み書きだって怪しい。それどころか、大人になることさえ期待できないかもしれない。それなのに、なんで学校なんか必要なんだろう」
(中略)立野が必死の顔つきでいった。
「瀬戸先生はどんなこたえをだしたんですか」
ヒゲ面の教師は豪快に笑った。
「こたえなんかあるかよ。おれには毎日、あの子たちがこの学校にきて、なにかたのしい思い出をもって帰ってくれたら、それで十分なんだ。糞(くそ)を漏らそうが、給食を吐こうが、そんなことはなんでもない。勉強だって、どうでもいい。あのこどもたちの多くは、おれやあんたよりもずっと早く死んじまう。人生がなにかもわからずにひたすら苦しんで、恋だのスケベだのと空騒ぎもできずに、この世界からおさらばする。おれは去年の八月、子どもの葬式に四回もいったんだ。それには理由なんかなんにもない。教師にできることなんて、なにひとつない。親といっしょに泣いてやることしかできないんだ。ほんとにいい子だった。天使みたいだった。つぎに生まれてくるときは、もっと幸せになってくれ。そんなしょうもない決まり文句を、葬式のたびに繰りかえしてな」”
次に、主人公の同僚教師の言葉。
“「ぼくは思うんだけど、世間の人たちはあまりにも自分のもっているイメージだけで、教育のことを語りすぎているんじゃないかな。昔はよかった、今の子どもは道徳がなってないなんて、このごろ流行のめちゃくちゃな意見にはぜんぜん確かな理由がないよ」
それは良太も感じることだった。げんだいではたいていの子どもはおとなしく、従順で、逆にまじめすぎるぐらいである。
「政治家や文科省の偉い人たちだって、現場を見ないで自分の信じる理念だけを押しつけようとしている。親や祖先や国への尊敬なんて、小学校で教えられるものではないはずだ。そういう気もちは社会全体がそうなっていれば、自然に生まれてくるだろう。大人が号令をかければ、子どもたちは都合のいい方向にどんどん成長する、なんてね。子どもたちはビニールハウスの野菜じゃないんだ。そんなに都合よくは育てられないさ。そういうのは安全な場所にいる人間だけが信じてる妄想だ」”
それから、もうひとつ学んだことがある。
「みんなで頑張ろう!」というありきたりの言葉が、とんでもなく残酷な意味を含んでしまうことがあるということ。
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茶髪にスカルのアクセサリーを付けたリョウタ先生が、子供と、保護者と、同僚と、ぶつかっては成長していく。
子供に寄り添う姿ががむしゃらでかっこいい。
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学校はそんなところ、良いこともあれば、悪いこともある。
東京近郊、昔の名門校である希望の丘小学校5年3組の担任・中道良太が主人公。イマドキの外見であまりに素直、年配の教師にはあまり受けがよくないけれど、ひそかに注目している同僚はいる。5年2組担任・染谷龍一はスマートな外見に要領のよいクラス運営で主任や管理職の覚えもめでたい。しかし、染谷は良太に注目している教師の一人なのだ。主人公良太が中心となり、家庭内暴力、学校内のパワハラ、危機管理と子どもの成長、いじめなどにぶつかっていく姿を描いた物語。重要なのは、良太は熱血でもなく、いい感じに力の抜けた、イマドキの若者であること。何かと熱血だったり聖職だったりすることを求められがちな教師に対する、著者からのメッセージなのかもしれない。
染谷は最初黒幕なのかと思ったら、終始味方だった。子どもだけでなく大人も、絶対悪なんてない。我が子を厳しく育てようとする親も、適性がない若い先生を潰していくベテランも、成績が悪い子を自分たちで教えてクラス平均点を上げようとする生徒たちも、「良いことをしている」という意識なのだ。大切なのは受けとめ方と、自分の身の守り方。
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私は教員ですが、こんな問題にあうことは少なくありません。生徒はたくさんおり、本当にたくさんの世界と経験と状況が待ち受けている。体当たりはときに不恰好ですが、ときにかっこいい。子どもたちに聞いてほしいと思えるセリフがある、いい話でした。先生の人間味を感じさせてくれるいい本です。
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一番好きなエピソードは、同僚教師が「不登校」になってしまった話です。
会社でいうところの「出社拒否」。
若い世代だけでなく、ベテラン世代でも、メンタルの調子が悪くなって休職する教員が多くなっていると聞きます。
そこには、学級のトラブルだけでなく、保護者対応もあるでしょう。
味方であるはずの学校や同僚教師からのパワハラが原因だったら…。
子どものことを思えば、乗り越えることができるのが、教師。
自分もそうありたいと思うし、
子どもだけでなく、同僚のメンタルケアもできるような人間になりたいな、と
改めて心が洗われるようなエピソードでした。
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教師という職を現実的に見ながら、熱血部分のある若い教師中道良太。
5年3組の担任として、数々の問題に直面しながら、
クラスはひとつにまとまっていく。
脇を固める教師陣も個性豊かで読み応えあり。
非常に楽しめた話であったが、
最後の山岸先生とのやり取りに納得がいかないため、1点減点。
Posted by ブクログ
小学校の教師モノ
熱血教師だとか特別なセンセイというわけではない、フツーの人を主人公にしているあたりは石田衣良らしい(茶髪とどくろネックレスはおいておいて)
まぁ、事件はイロイロ起こるし、それの解決の描写は小説らしいご都合主義で解決しているけれども、それは小説なのでよしとしましょう
惜しむらくはそれぞれの事件の関連性がもうちっとあったらよかったなぁ~ と思ったけど、新聞連載ということでストーリー展開はしょうがないか
ドラマ化出来そうだし、この人の小説は長瀬が主人公に良く合うのでそれもまたアリかも
Posted by ブクログ
石田衣良 著「5年3組リョウタ組」を読みました。
主人公は25歳の小学校の教員。ちょっと茶髪がかった今時の若者だが、頭で考えるよりも体当たりで教育現場のトラブルに立ち向かっていく。壁にもぶつかりながら子供たちとともに成長していくお話。
作者が「平成版坊ちゃん」をイメージして書いたそうですが、いじめや学力など現代の問題点を織り交ぜながら、教育の本質を描こうとしている感じを受けました。
Posted by ブクログ
長らく積読になっていたのを思い出して
読んで見ました。
立ち回りが上手ではないけど、心で人を動かす主人公や、クールで何でも出来る相棒、
著者らしいですね!
もっと1人1人の背景の深掘りとかそういう部分はもの足らなかったかも。
でも、著者が伝えたかったこと
「子供たちも、学校も、きっとだいじょうぶ」ということは、しっかりと伝わりました。
Posted by ブクログ
2023/1/25
小学校で起こる学級崩壊の兆し、先生間のパワハラ疑惑...
映像化されたのかな?目指したのかな?映像化に向いていそうな作品。
学校の先生は大変だなぁ、先生には優しく接しようと改めて思った。
Posted by ブクログ
あまり先生っぽく無い教師のクラスの物語。色々な事件が起きるのは学園ものならでは。生徒と真摯に向き合う姿が頼もしい。同僚の先生との恋心も楽しかった。
Posted by ブクログ
自分や自分の子どもたちがリョウタ先生に出会っていたら、どんなに良かっただろう。
教師である前にひとりの人として、ひたむきに真っ直ぐに子どもたちひとりひとりと向き合う姿勢に、胸が熱くなります。
Posted by ブクログ
雰囲気がすき。全然特別じゃないっていう良太のキャラクターも軽やかで嫌味がなくて良い。最後の章の狡ささえ人間ぽさとして嫌悪感には傾かなかった。先生達を主体にしているところも新鮮だった。でも脱走する生徒に教師の不登校に正しさの強要と、それぞれの問題の解決法や考え方が微妙にしっくり来なかったことが残念だった。みんなが迎えに来てくれて嬉しいっていう生徒の感覚も、そこだけ抜き出してしまって共感出来なかった。あとがきの、子どもたちも学校もきっとだいじょうぶって言葉も相俟って、全体的に安易に感じられる部分があった。
Posted by ブクログ
「こんなにいい先生や生徒はそうそういないよ」というのが、学校もののドラマなどを見てもよく抱く感想で、本書においても同様だった。熱血な先生ではないし、確かに現代の教育現場には珍しくないのであろうトラブルが描かれている。そこは興味深く、物語としても面白かった。けれど著者の作品に多く出て来る特徴的な「人の好い」人物達は、教育現場においてはあまりにもフィクション的というか、「そううまくいかないよ」「こんなにいい先生や、こんなに素直な小五はいないよ」と思ってしまう自分がいる。(でも染谷先生や九島先生は普通にいそう。)
それは本書の内容云々ではなく、自分が過ごした短くない学校生活の経験から抱いたものであり、自分は本書に出てくるような素直な生徒では決してなかったし、本書に出て来るような素晴らしい先生方にも出会えなかったからだろう。その経験と今の報道などを元に考えると、当時よりも今の方が更に悪化している勝手な印象があるので、益々私の中で本書が現実味を帯びない。ただそれがあくまで勝手な印象と経験則からであって、今の学校は私が経験したものよりもずっとマシな環境になっているであろう事と、マシな人材が教鞭を取っているであろう事を、切に願う。
それに何より、著者の特徴的ともいえる「こんなに複雑でどうしようもないような理不尽な事で溢れていても、でも悪い事ばかりじゃないだろう」と確かに希望を放っている視点、前向きな人物達の姿勢自体は、素直に素敵だと思う。