あらすじ
もう充分に生きた。あとは静かに死にたい――。83歳の小説家は、老いて身体の自由がきかなくなり、男の機能も衰え、あらゆる欲望が失せ、余生に絶望した。そして、ゆるやかに自死する「断食安楽死」を決意。すぐに開始するや着々と行動意欲が減退、異常な頭痛や口中の渇きにも襲われ、Xデーの到来を予感する。一方で、テレビのグルメ番組を見て食欲に悩まされ、東日本大震災のニュースにおののきつつも興味は高まり、胃痛に耐えられず病院に行く。終いには、強烈な死への恐怖が! 死に執着した小説家が、52日間の断食を実行するも自死に失敗した、異常な記録。
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Posted by ブクログ
周りに迷惑をかけたくなくてひっそりと断食で自殺しようとする83歳の記録。これを読むと尊厳死とか安楽死とか死について考えるきっかけになる。人は死を意識するから、今を大切に生きるのかもしれないなと感じた。言い方は可笑しいかもしれないけど、何度失敗しても再挑戦するエネルギーはすごい。
Posted by ブクログ
著者の小説は一切未読。題材に興味を惹かれて借りる。
東日本大震災、民主党政権失政の時代を背景に、断食安楽死の失敗談が語られる。
なお、82歳まで男性機能が保たれていたことに驚きを禁じ得ず。
結局「人間は理性的に自殺することはできない」という知人の忠告を裏付ける結果に終る。
日本中の児童の心胆を寒からしめたジャガーバックス「地獄大図鑑」の著者でもある。神仏を信じず、墓前でも手を合わせない無神論者というが、感慨深さを覚えてしまう。
Posted by ブクログ
83 歳という高齢で断食安楽死を実行しようとした作家の奮闘記(?)ですが、軽い気持ちで読むのはお控えください。
昨今では、生活保護も受けずに孤独&餓死でミイラ姿で発見されたというニュースも聞きますが、作者の場合は生活苦で追い詰められているわけでもなく、自分の意志でという点が大きく違います。息子さんもいて自身も作家としての稼ぎもあり、離婚してからはお手伝いさんにも通ってもらって身の回りの世話も問題なく、あるのは持病の胃潰瘍や心不全ですが、あくまでもこだわるのは己の意志による断食安楽死という死にざまです。その経緯は、自身の宗教観や死生観、戦争体験、社会経験、離婚経験、政治不信、欲望減退などが複合的に混じったもののようですが、2007年(筆者80歳)に発表した小説のあとがきで、83歳の誕生日に断食に入って死のうと宣言した文章に責任を持つというある種の強迫観念(実行できない場合の恥ずかしさ)が彼を突き動かしていたのは間違いないようです。
結論から言えば、83歳時に断食を実行はするのですが、3回とも失敗(2回目は38日間続行)・・4回目には死ぬのが怖くなってしまいます。その原因を分析すれば、どこか無意識のうちに生へのこだわりがぬぐい切れなかった、悟りの境地に入れなかったのではと筆者は考えます。
そこで、人間は理性的に死ぬことはできないのではないかという結論に至るわけですが、筆者の理想とする即身成仏という形は、悟りを開いた修験僧ですら、五穀断ち、十穀断ち、全穀物断ちまで長い人では30年かけて、しかも周りには理解者と応援者がいる状況だったことを考えればあくまでも現代社会では実現不能な理想形だったわけです。
ちなみに、本書が発表された(断食が実行された年)のは2011年9月ですが、翌年2012年12月9日病院で心不全で亡くなっています。
私にとっては、ドニー・アイカー「死に山」以来の衝撃的かつ刺激的な読書体験でした。
Posted by ブクログ
平穏死関連の本を何冊か読み、私自身も死ぬなら平穏死で…と思い始めました。でも実際にはできるのか?
83歳の作家が断食による餓死に3度挑んだ記録です。
結果的には途中で胃に痛みが出て「どうやら胃潰瘍らしい」と気づきます。胃潰瘍は放置すれば胃穿孔に進み腹膜炎でのたうちまわることになる、そうなればとても安楽死にはならない。(この本では「厳密には医師がかかわっていないので安楽死ではないが」としながらこの言葉を使っています)
結局、死ぬことが怖いのだ、と気づき、そのストレスで胃がやられてのでは、と気づく。
死と向かい合ったことを赤裸々につづった本です。すごく参考になりました。
Posted by ブクログ
作家である83歳の著者が、誰にも迷惑かけずに
自分の意志で死ぬ時期を決めようと
断食死に挑むエッセイ。
1回目失敗。2回目、3回目と体調体重に日々の数行。
第2章の何故断食を選択したかの項のみ、
なんだか横道に逸れた話が多いのだが
最後のまとめ的な文章が、人間らしくて良い。
Posted by ブクログ
83歳という筆者が断食死を考え、それを実行しようとした記録。
死と老いとを考えると、自死や尊厳死などを含めて死というものと向き合うのに切実に考える年齢なのかもしれない。
確かに、無理やり生かされる事を拒む権利もあるかもしれないが、自分で断食をして死ぬという事は以外と難しい。
2011年に断食死を実行し、その間に起きた地震災害や福島の原発事故など筆者の考える人生観もこの中に書かれていて、83歳の経験と思考もさすがだなと思わされた。
私は、断食死の文章より世相を一くさり書かれていた文章の方に惹かれてしまいました。
Posted by ブクログ
死にたいのに死ねない?そんな老人のお話…
過去の実際の断食方法についても書いてあり…途中逃げ出したくなるから穴に埋められて意志を貫いたのかな?となるとこの老人はまずは自分を縛るところからしないといけなかったのでは…とか思ってしまった
まぁ…生きていこう…
Posted by ブクログ
生きたいように生きることはできても、死にたいように死ぬことは難しい……。
ツッコミどころが多いというか全体的に何をしたいんだこの人は周りの人間めちゃくちゃ迷惑だな……と思いながら読んでいたのだけれど、個人的に印象深かったのはあれだけ自分の頭で考えて死ぬことを選んだのだ死を恐れないと繰り返していた著者がいざ死に対するおそれを自覚したとき、他者の言葉が原因だとあっさり他人のせいにしたこと。
一番人間らしさを感じたかも知れない。やるせない。
Posted by ブクログ
死について考えさせられるし、安楽死というか、自然に死ぬのって意外と難しいことがこの本の中身でよくわかる。こんな事を考えて実践したこと自体が興味深い
Posted by ブクログ
なかなか衝撃的な書。
僕も実は「餓死」を希望してるんだけど、その理由は「年を取ると勝手にものを食べなくなって、眠るように苦しむことなく死ぬ」という話を聞いたことがあるから。
でも本書を読むと、ひょっとするとそうでもないのかなあという気がしてくる。とか、もろもろ「死」を考えるにはなかなかに良書であると思う。
ただ中盤の床屋談義は不要。
Posted by ブクログ
年をとっても、好奇心旺盛な人はずっと変わらない。自分で死ぬためにもがいている様子を垣間見ることができて、面白かった。著者はすでに亡くなっているということで、ご冥福をお祈りいたします。
Posted by ブクログ
題名と断食安楽死の記録という見たことない内容に惹かれて。
『人間は寿命に従順であるべきだ』
82歳2ヶ月(!)で「女性とセックスできなくなった」ことを引き金に、
断食安楽死を決意する。
持病である心不全や、
断食の合併症である胃潰瘍からの腹膜炎での死は、
死の無駄遣いだという。だから薬も欠かさない。
変なおじいちゃんであることは明白やろ。
結局失敗に終わるねんけど、
その過程も「人間って可愛らしいなあ」って思わされる。
「飴食べたー!」「コンビニで誘惑に負けたー!」とか
ちょいちょい笑える。
断食実行中に起こった東日本大震災で、
生きたい人が死んでいく様子を見た著者。
一方で死にたいのに死ねないことに苦しむ。
孤独で寂しいおじいちゃんの長話を
聞かされた感じの一冊やった。
特に3章。
長生きしてるだけあっていろんなこと知ってるから
面白いっちゃ面白いけども。
Posted by ブクログ
人はいつ死ぬべきか。自然主義の誤謬が得意(?)な僕としては、人の死のタイミングが気になってしかたないのだけど、この本は、そういうんじゃなくて、もうかなりの年なのに、奥さんに性行為を拒まれて離別し、そして勃たなくなったのを大きなきっかけに死にたい、という…入り口間違えたかな。
何度かの断食死への過程で、救急車を呼んだり、胃が痛くて病院に行く。コンビニで食料を買っちゃったりする。老人が生きてたら迷惑だ、医療費がかかるみたいなことをいいながら、生きながらえるために医者に行く。
なんなんだろ。
息子にも怒られ、医者にもたしなめられる。鳩山由紀夫のようになりたくない、民主党に裏切られたといいながら、オチはそっくりなんだけど。
ヒロポンを打ちながらいろんなことしてた、というような過去の部分は面白い。だから、死ぬ、ということへの道筋の本ではなくて、人のしょうがなさやらしぶとさやらを楽しむべき本なのだろう。
断食やら、即身仏の話なら、フィクションではあるけど島田雅彦さんの「アルマジロ王」がまさに「光っている」。ほんとに断食で死ぬつもりの人は、そっちも読もう(これ、自殺幇助か?)。
Posted by ブクログ
自分の意思で断食しながら、死のうとする、83歳の作家のしに至るまでの日記。
…のはずだが、あくまで自死にこだわるために、途中、胃薬を飲む。もちろん、水で。
のど飴を舐めたりする。
なんか、違う。
この記録は、3回目の挑戦。
本人が真剣に餓死を望むが、思わず笑ってしまう。
それでは、餓死できませんよ!
本書の最初と最後が、その記録になっているが、中ほどの戦中、戦後の話しが面白かった。
本人は、至って真面目で、生きるための手段を心得ている。
だから、もっと長生きしてしまうと思う。
政府が、福祉に真剣に対峙しなければいけないだろう。
Posted by ブクログ
死にたいのに 死ねない。。。というか 矛盾の葛藤がおもしろい。楽に死にたいから 痛みに耐えられない 常用の薬も服用し続ける。
断食の日々の話より 他の話の方が 興味深く読めた。
Posted by ブクログ
中二病の老人の本
衰弱して行く経過をもう少し具体的に書いていてくれることを期待していたが、衰弱しちゃうと書く気力もなくなってしまうようでその辺は期待はずれ。
それでも戦争中や戦後の体験などの記載は面白く読め、いい意味での期待はずれもあった。
自分の依頼人がこういう人だと話が長くてやりにくいだろうなぁと思う。