あらすじ
世界の南の端にある「花勒」「花陀」「雨果」「沙文」の四つの島は海神のものだという。
島々は、海神たる蛇神の抜け殻からできた、という。
各島はそれぞれの領主によって治められていたが、
領主を決めるのは海神に仕える巫女王の託宣だった。
巫女王のもとには「海神の娘」が集う。
娘らは託宣によって領主のもとへ嫁いでいく。
彼女たちを娶ることで、島は海神の加護を得て、繁栄するのだという。
今宵もまた、ひとりの巫女が舟に乗せられ、月明かりの下、島影へ近づいてゆく。
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Posted by ブクログ
Tさんのおすすめ。
美しい話だ。
海神たる蛇神の抜け殻でできたと言われている島々は、
海神の島々だった。
巫女王は巫女たちと共に小島に住み、
ただひとり海神の声を聞くことができた。
海神は島々の領主を決め、巫女の中からその妻を選んだ。
巫女たち、海神の娘は大きな力は持っていない。
人から見えなくなる霧を使えたり、
あたったりはずれたりする夢を見たり、
亡霊を祓えたりとわずかな力を海神から分けられている。
だが、海神の娘たちも人の子、それぞれの生い立ちと気持ちを抱えて島へ渡る。
陰謀で処刑された家の娘だったり、奴隷だったり、
炭鉱に住み着いた盗賊にさらわれた娘だったり。
海神の娘たちがそれぞれの領主である夫と、
気持ちを寄せ合って幸せになる話。
美しかった。
Posted by ブクログ
白川先生らしいファンタジーの世界観描写と心が暖かくなる小さな幸せが詰まった短編集。
個人的には1話目と4話目が好き。4話目は特にスペクタクルな作品でジブリのようなハラハラも感じました。
固有名詞の難読も世界観に合っていて私は良かったと思います。
Posted by ブクログ
後宮の烏と同じ世界の……というシリーズ?が別の版元から出るのがまず凄い。
お互い、WIN-WINなのか、これ?
話はオムニバス形式で、全く関連のない4人の娘たちの婚姻譚。
1話で登場する“霄の国の商人”て誰だろう。
雲家かな?
そのうち寿雪も出てくるのだろうか。
Posted by ブクログ
後宮の烏と同じ世界の別の国の物語ということで興味を持って読んだ。
今回の舞台は、海神たる蛇神の抜け殻からできたという島々。つまり海神のもつ島々である。そして、それらの島々から海神によって選ばれた娘たちは、「海神の娘」と言われ、それぞれの島を治める領主のもとへ嫁ぐ。その「海神の娘」を娶ることで、領主は海神の加護を得て、その島は繁栄するといわれている。そして、その海神の声を聞くのはただ一人、霊子という名の巫女王だけであり、娘たちも、島に連れてこられた時と、宣託を受けて島を出ていく時にしか姿を見ることはできない。
長編の小説と思っていたら、島々の領主に嫁いだ海神娘たちの短編集だった。
また、娘たちは、最初から海神の娘として生をなしたのではなく、裕福な家庭の娘もいれば、罪人や、貧しい家の娘もいた。ある日、使者ががやってきて、海神の娘に選ばれたと海神の島へ連れていかれ、そこで領主に嫁ぐ宣託が下されるまで、巫女として過ごすのだ。
彼女たちを娶ると、その島は繁栄するとその宣託は守られているが、繁栄するばかりではない。時に無残な死を遂げる娘もいる。もちろん海神の相応の報いは受けているが。
海神の娘も、もとはと言えばいろいろな環境で育ってきた人間ということもあり、領主の妻となることで彼女たち自身も成長していっているように思う。ただ、海神は、悪い蛇神ではないが、海神の娘たちの幸せを願ってはいるものの、彼女たちの思いを理解できないこともあるらしい。まだ謎な部分もあるが、やっぱり面白い。
これから、どんな物語展開になるのか、2冊目が楽しみ。
Posted by ブクログ
海神の神託を受けた娘達は、島々の領主の元へ嫁ぐ。彼女らを娶った島は海神の加護を受け繁栄すると言う…
短編集ではなく、長編で読みたい話しばかりでした。
お気に入りは「鯨面の妃」
無実の罪に堕とされた一家の娘が罪人の証である鯨面を顔に彫られ、海神の娘として花勒の領主へ嫁いでくる。父を殺した領主の息子、そして殺された一家の娘。お互いとてもぎこちない二人が少しずつ距離を縮めていくのが微笑ましくもあり、少し痛々しくもありました。
それでも、ラストは幸せに暮らしたと言う描写が救いでした。
Posted by ブクログ
4話からなる短編集。(5人の海神の娘の婚姻譚)
海神によって選ばれた島々の女(海神の娘)が託宣により島々の領主のもとに嫁ぐという婚姻システム。嫁ぐことが決まると巫女王の霊子に会って力(霊力?)を与えられる。
面白かったです。
海神の娘に選ばれるのには貴賤は関係なく、ただ海神の託宣によるのみ。
一話目の蘭の話が一番好きです。
文庫の解説から、蘭の話で一冊が構成されているのかと思い込んでおり、表紙も蘭の姿だと思っていたけど、巫女王の霊子の容姿だったようですね。(よく見ると額に印がありますね)
「後宮の烏」と同じ世界ですが、全く違う土地の話なので、後宮の烏を未読でも楽しめます。
この「海神の娘」は続編はあるのでしょうか?
Posted by ブクログ
花勒、花陀、雨果、沙文、その他大小様々な島々からなる国々、そこには共通点が1つある。海神の宣託を受けた海神の娘たちを娶ることだ。海神の娘たちは元々は島々の娘。彼女たちの幸せとは?
4つの短編からなる物語で「後宮の烏」と世界同じ。だが、寿雪たちが登場することや名前だけでも出ることがないのは残念だった。
4つの島に嫁ぐことになる5人の話で短編だけあってあっさりしている感がある。そして5人ともなんのかんのあったが最終的には幸せになっている。別にバッドエンドを望んでいるわけではないが、そんなに上手くいく?前の世代では苦労して報われなくて悲惨なことになった人もいるし、霊子だっていろいろな海神の娘たちの話をしていたのに今回に限ってそんな都合よく行くのかと思った。
そして、この「海神の娘」は海神の娘たちの話ではないと思う。霊子と海若、この2人が娘たちの物語を観ている、その2人が観ているのを私たちが観ているように感じた。海神の娘たちの話よりこの2人の話を1冊分読みたいと思った。