あらすじ
第42回吉川英治文学新人賞受賞作!
祝デビュー10周年!
時間も金も、家族も友人も贅沢品だ。
息詰まる「現代」に風穴を開ける、「響け! ユーフォニアム」シリーズ著者の代表作!
遊ぶ時間? そんなのない。遊ぶ金? そんなの、もっとない。学費のため、家に月8万を入れるため、日夜バイトに明け暮れる大学生・宮田陽彩。浪費家の母を抱え、友達もおらず、ただひたすら精神をすり減らす――そんな宮田の日常は、傍若無人な同級生・江永雅と出会ったことで一変する!
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
それぞれの親にそれぞれの問題があって、みんな苦しいと思った。江永は不幸自慢をせずにふざけたように話すから、本当は一番辛い立場でありそうなのに、辛さの大きさや深さが見えづらくて怖かった。
深く眠ると後で辛くなるから浅い眠りしか取れないとか、いつでも死ねると思うことでなんとか生きながらえているとか、人の身体や心は不幸に順応できてしまうのだなと思った。
家族だから愛してもらえる、愛さなくてはいけないというのは私も嫌いな考えだから、それを宮田と江永が貫いてくれたのは嬉しかった。愛してるなんて心のこもっていない形式的な言葉はくれるけど金も生きるエネルギーも搾取してくるような母よりも、何の危害も加えず無駄に思えるような会話をテキトーにかわせるような同級生の方が、宮田にとっては大切だったんだなぁ。
最後のシーン、とてもとても良かった。
20歳の瞬間にコンビニでお酒を買うのに付き合ってくれるなんて、なんて特別な思い出なんだろう。きっと、成人式より濃い記憶になる。2人にはこの先も笑い合っていてほしいと思う。
Posted by ブクログ
家族を愛していると断言できる人になりたいと思う。しかし家族は自分とは他人であることは覆せない事実としてそこにあると知った。家族とは愛される、愛することが当たり前にある関係性だと信じて疑わなかった自分は恵まれた環境で生きてきたと知った。そこに愛があったとしても愛情は全てを帳消しにする魔法じゃない、ということも知った。自分が家族をどんなに想っていたとしても同じ大きさの想いや同じ方向の思いが返ってくるとは限らない。
でも宮田の行動や考え方に触れて誰かに愛されたいと思うのは人として切り捨てられない感情だと思った。(宮田の場合は母に)愛されたかったからこそ、宮田は母にいつか愛されるという幻想に、そして今まで愛してくれていたという幻想に縋ったのだし、自分が愛する母の悪い部分からは目を背け続けた。そして愛することは信じることでもある。宮田は母を愛しているからこそ母を信じた。母は自分の奨学金には手をつけないだろうと信じた。母が父について言うことは真実であると信じた。
そしてお金は人を変えてしまうことも知った。宮田の母は娘を愛していなかったわけではないと思う。でも宮田の母が娘に注いだ感情は愛と呼べるかわからない。愛していると毎朝キスをするけれど。だけど愛するというのはどこまでをいうのは私にもわからないし友情、愛情、同情、優しさ、寂しさ(時には感情のない上辺だけの言葉)など色んな感情があるなかで、これが愛です、と断言するのはどの側面を見て言えるのか。
Posted by ブクログ
良かった。二人がお互いを見つけて、出会えて。
親子って、良い関係を築くのが一番難しい間柄なのか
もしれない。
血が繋がってるというだけで、親も子も個人なのに、
赤の他人には求めないような、歪んだ要求や期待を持
ってしまうことがあるし、何をしても許されると思う
甘えもあったりする。
未成年の場合は自力では無理があるけど、宮田と江永
のように、”毒親”の元から逃げてもいいんだよ、と思う。
親からの愛情で自分の価値が決まるわけじゃない。
Posted by ブクログ
私のための言葉じゃない。 なのに、上っ面だけを取って楽しんでしまった。 凄く面白くて、綺麗な終わり方をしたのに、恵まれきった私が読んだことで不完全になってしまいました。 こんなベクトルからの罪悪感が生まれたの初めてです。
Posted by ブクログ
家族ほど難しい愛はないと思う。
血が繋がっていれば家族か、
戸籍が一緒なら家族なのか、
生まれた時からそこにいる人間ってだけで
愛し、愛されなければならない。
私自身も家族全員を愛せている訳じゃない。
母親と兄さえ生きていてくれれば
父や祖父母はどうだっていいと考えてしまう
愛されなくても別に、君が居れば。
そんな相手に私も出会える日が来るだろうか
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて購入。帯に書いてあった通り、一気読みしました。
星5つじゃないのは、私の年代よりは、高校生や大学生くらいの若い子向きな小説かなと思ったからです。厳しい家庭環境で育った20歳前後の二人が、大学で出会って、生きる力を得ていくストーリー。
同じような境遇で、進路や家族関係に悩んでいる高校生とかが読んだら、「大学」といういろんな人間が集まる場所に行けば、一人でいても別に大丈夫だし、もしかしたら理解し合える人との出会いがあるかもしれない、と希望が持てると思う。(そういう意味でも読書習慣って本当に大事だと思う。救いのない環境に育って、本を読むことも知らないままだと救われるきっかけが得づらい)。
主人公のヒイロは母親が浪費家で、自分のアルバイト代に依存してくる。家事も一人で全部こなし、母が「愛してるわよ」ということを疑うこともできず、愛されているから親を許さなければいけない、と思わされている。
大学で出会う訳ありの友達、「エナガ」は、父親が殺人犯と噂されていてみんなから避けられている。
ヒイロは、自分より不幸そうな人に興味があり、「それでも私の方がまだ不幸だ」と思うことで自分を保っているところがあり、エナガに興味をもって近づく。
二人は友達のようになっていくわけだが、正直言って、「親からここまでヒドイ扱いを受けて育って、そんな簡単にお互いの心の内を打ち明けられないはずだ、だから現実はもっと複雑なんだ」と突っ込みを入れながら読んでいた。
しかし、物語の終盤、なぜ二人が友達になれたのか、ネタばらしのような仕掛けもあり、「おぉ!なるほど!」と納得。テーマは重いけどライトノベル?と思ったけど、ライトノベルと言い切れない完成度だった。
(解説によれば、著者はライトノベルから出発して、最近では一般文芸として高く評価され始めているらしい。本作も確かに、ライトノベルの筆致ではあるがライトノベルとは言い切れない作品だと思った。←偉そう。