あらすじ
受難(パシヨン)を越えて、求めよ、自由を――。『熱源』で直木賞を受賞した著者による、新たな到達点! 禁教下における“最後の日本人司祭”となった小西マンショの人生を軸に、異文化同士の出会いと摩擦、争いの中での“希望”を描いた圧巻の歴史小説。キリシタン大名・小西行長の孫で、対馬藩主・宗義智の子として生まれた彦七(のちの小西マンショ)の運命は、関ヶ原の戦さによって大きく変わった。離縁された母・マリヤとともに彦七は長崎へ。キリシタンへの迫害から逃れてきた、小西家の遺臣らの世話になりながら成長していく彦七だったが、彼には小西家再興の重圧がのしかかっていく。キリスト教が禁じられ、信徒たちの不安が高まるなか、彦七はある重大な決断を下すのだが……。“受難の時代”を生きる者たちの魂の叫びが刻まれた、著者渾身の長編小説。 〈目次〉●序章 主の孫 ●第一章 天国の門 ●第二章 出日本 ●第三章 求めよ ●第四章 走る群雲 ●第五章 受難(パシヨン) ●終章 世の終わりまで
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Posted by ブクログ
「パシヨン」(川越宗一)を読んだ。
こんなにも胸が苦しくて目を閉じてしまいたいほどに悲しいのにページを繰る手が止まらない。
そうして最後にじんわりとした暖かさが身体の中に灯るのだよ。
これはね、もう、誰も彼も読みなよ!
「熱源」よりもさらに熱い力作だった。
Posted by ブクログ
小西マンショの生涯をたどりながら、天草の乱をはじめとする、キリシタンの弾圧を描いている。キリシタン側、幕府側からの正義を描いており、どちらにも感情移入してしまい揺さぶられてしまった。平和とは、権力とは、信仰とは、自由とは、多様性とは、様々な場面で考えさせられる。
登場人物も魅力的で、主人公の飄々とした感じや、友人の岐部渇水の豪楽な人物像もかっこよく、幕府側の井上政重が残忍(に見える)なキリシタン奉行になるまでの心の動きの描写もよかった。
悪魔をてんぐ、愛をごたいせつ、といった和訳のルビやクレドの和訳なども心地よく、当時のキリシタンの信仰風景もしっかり考証されている印象を持った。
Posted by ブクログ
政治と信教、自分も以前からずっともやもやしていたことを真っ向から描ききって下さり感謝しています。二人の主人公の問答は令和の名場面として、大河ドラマなどで後世に伝えたいです。
Posted by ブクログ
小西マンショの半生を描いた歴史小説。
史実に基づいたネタをここ迄ドラマチックに書ける川越さんはやっぱり凄いです。昭和の大作家,吉村昭先生を彷彿させる1人ではないでしょうか。
読み応えのある1冊でした!
Posted by ブクログ
壮大!!
宗教がらみなため難しそうですが映像化して欲しいと思った作品。
江戸時代初期、取り締まりが厳しくなっていくキリスト教。信徒であり司祭を志す彦七の物語。
幕府側の人間である政重もまた、得てきたものを次々と失っていく人生だったわけですが、ラストで2人が対峙したときのやり取りは、なんだか身につまされる思いがしました。
悔いを重ねつつも歴史の渦に翻弄された者、最後まで自分の意思を貫抜き通した者。
徳川幕府という絶対的な権力がある中で、自分の信じる道を貫き、今自分がすべきことに邁進し、あらゆる覚悟をしながらも日本のキリシタンのために生きた小西彦七。
その生き様がひたすらにかっこよかったです。
その他、渇水さん、木村セバスチャンなど、素敵な登場人物多数(^^)
Posted by ブクログ
小西行長の孫、彦七と、徳川家家臣、井上政重。立場が異なるこの二人が何処で出逢うのか…歴史上、日が当たらぬ人を生き生きと描く筆力は秀逸。彦七の『赦す』のひと言が尊く響いた。
Posted by ブクログ
すごいね
王道、オーソドックスな内容と思うが、
読み応えあり
終わったあと、
人の一生とは!?
と考えてしまう
最初の頃の青春時代を思い出すと
泣けてきちゃうよ
なんか歴史小説に甘いんですけど、
オススメ★5作品入りです
Posted by ブクログ
大絶賛します。こんな素晴らしい小説が読めて幸せ。
川越宗一さんの時代小説は、史実を基礎にしながらも大胆な解釈をほどこし、今を生きる私のこころにググッと突き刺さってくる。
Posted by ブクログ
直木賞作家・川越宗一氏によるキリシタンを題材にした最新作です。
キリシタン大名の小西行長の孫、小西マンショが主人公です。難しいことは考えない熱血タイプの少年漫画的な性格。地の文は硬いけど、彼のセリフは現代風で、読者を置いていかない工夫がなされていると思います。
主人公は実在するけれど幼少以降の消息が分かっていない、創作した話なのかな?と思いきや、読み終わって調べてみると、キリシタン関係者の残した数少ない資料に沿っていた事が分かり、こんなヨーロッパまで股にかける劇的な人生だったのかとびっくりしました。
幼馴染が朝鮮国出身の真面目で優秀な男の子で、彼の親が小西行長に朝鮮出兵の際に連れてこられたという設定がツボでした。
こちらは創作した人物かと思いますが、実際に小西行長は朝鮮出兵の際に朝鮮国から「ジュリアおたあ」を養女に迎えている史実もありますし、実際他にも捕虜を連れ帰ったのも本当だと思いますから、粋な設定だと思います。
去年話題になった某新宗教の元二世という立場から読みました。
脇役の女性で、既に棄教したのに迫害が酷くなる過程で逆に立ち返り(再入信)してしまう登場人物がいるのですが、「自分のことか!?」と思ってしまいました。
実際、去年のあまりのバッシングの酷さに、十数年連絡を取っていなかったかつての仲間にうっかり連絡を取ってしまった私には痛いほど分かる心理でした。
キリシタンを取り締まる幕府側である井上政重ももう一人の主人公と言って良いのではないかな。この多数の視点で描くのがこの著書の真骨頂だと思います。キリシタンを庇うだけでなく、彼らのくだらない宗派争いや権力争い、寺や神社を焼く独りよがりな姿勢などもきちんと描いているので、その視点も大事だと思いました。
新作だから高かったけど、信仰や迫害というのは私自身は幼少から身近にあったテーマなので、これはお金出して買ってよかったなと思いました。
いやそれにしても、少し前に「大名倒産」を読んだばかりたったから(ちょうど映画化して公開されたタイミングの作品です)、同じ江戸時代でもここまで違うかと苦笑してしまいました。大名とか旗本とかその辺りの知識は大名倒産を読んでいたのでなんとかついていけました。
歴史好きの方々には、そこはハードルにならないのか(笑)
Posted by ブクログ
人間は幻想を持たないと生きていけないが、それがキリスト教なのは、この時代この地では体制にとって不都合だった。
これこそが全ての悲劇の原因だった。
Posted by ブクログ
「熱源」も「天地に燦たり」も、抗えない歴史のうねりでもがきながらも自らの運命を切り開こうとする。
しかし、歴史の流れには抗えない。
本書「パシヨン」の構造も同じだ。
戦国時代が終わり、徳川の治世で世の中には平和が訪れていた。
しかし、戦国の敗者はまだ恨みを引きずっていた。
関ケ原西軍の敗将、小西行長には対馬藩主に嫁いだ娘がいたが、子を成した後の関ケ原の敗戦により母子ともども追放されていた。
行長の孫、小西彦七は旧小西家家臣からは、いつか殿に返り咲くことを期待されながら、本人にはその気は全くなかった。
戦国時代には日本各地にいたキリシダン大名のもとで広がったキリスト教だったが、徳川の世になり弾圧は次第に苛烈になる。
旧小西家の家臣たちも土地柄キリシタンが多く、長崎に身を寄せていたが、次第に長崎にもその弾圧が近づいてくる。
司祭が来日できずに、奇跡を求めるキリシタンたち。
長崎の学舎で学んでいた彦七は洗礼名マンショと称し、救いを求める民のため仲間たちとローマへ行き司祭となり日本に帰ることを誓う。
これは小西マンショが日本を出て、ローマで司祭となり、そして帰国後に処刑されるまでを描く。
小説では悲劇的な終わり方だが、その200年後に信徒発見に至ることは歴史上の記録だ。
マンショの受難は決して無駄ではないことは歴史が証明している。
Posted by ブクログ
「熱源」で、直木賞を受賞した川越宗一さんの歴史小説です。
何が人々を島原の乱へと駆り立てたのか。
キリシタン大名小西行長の孫であり、禁教下最後の日本人司祭となる小西彦七(マンショ小西)の生涯を辿りながら物語は進んでゆきます。
限られた歴史の記録の行間をドラマチックに埋めるのがとても上手な作家さんだと思います。
こんな展開、まずなかっただろうな…。と思いながらも、もしかしたらと、歴史ロマンに浸れる1冊です。
Posted by ブクログ
秀吉の世の終わりのキリシタン弾圧から江戸時代初期のキリスト教禁教が発せられた中、実在した禁教時代の最後の邦人司祭と言われる小西マンショと、禁教の遂行者としてのキリシタン奉行、井上正重という2人の対象的な存在を中心に物語は進む。様々な立場、人種、考え方の人々の人生を多層的に描きながら、事実を交えつつその過程を上等のフィクションを積み上げ、一つの物語に昇華させていく川越宗一氏得意の構成だが、今回は歴史的な知識としても多少はあり、終わりが見えていただけに、途中からどうやって落とし込むのかという目線になってしまい、素直に物語を楽しめない部分はあった。
しかし、小西マンショと井上正重という二極的な存在を、物語として最後に結びつけて盛り上げてくれたのはさすが。