あらすじ
世界的経営学者、サラス・サラスバシー教授によって体系立てられた、優れた起業家の思考法「エフェクチュエーション」の日本初の入門書。不確実性の高まる社会で有用な「反・因果論」の行動様式を、エフェクチュエーションの5つの原則とともに詳細に解説。個人・企業内での活用法のヒントも紹介する。
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Posted by ブクログ
エフェクチュエーションの概念はこの不確実性の高い時代において非常に重要なもの。
とても参考になった。
自分にとって刺さることだらけでバイブルのような印象
メモ
・エフェクチュエーションとは、熟達した起業家に対する意思決定実験から発見された高い不確実性に対して、予測ではなくコントロールによって対処する思考様式
・手持ちの手段から何ができるかを発想する
手中の鳥の原則
・うまくいかなかった場合のリスクから、損失許容できるかという観点でコミットメントを行う
許容可能な損失の原則
・上記前提のもと、コミットしてくれるパートナーと取り組みを行う
クレイジーキルトの原則
・予期せずしてパートナーからもたらされる手段や目的を受け入れ、積極的に活用しようとする。偶然を最大限活用する
レモネードの原則
・コントロール可能な活動に集中する
飛行機のパイロットの原則
⭐︎ゴールが明確でなくとも手持ち手段に基づいてまず一歩を踏み出すことはできる
・あるアイデアが優れたビジネスになるかどうかを確かめる唯一の方法は必要としてくれる顧客や実現のために協力してくれるパートナーを獲得することを通じてアイデアの実効性を高めることでしかないから
・私は誰か、私は何を知っているか、私は誰を知っているか
・行動することと、それがあなたにとって意味があるか、ワクワクするかが重要
・機体利益計算は複雑だが、許容可能な損失計算は最悪なケースに備えた心理的コミットメントの評価を知るだけで良い
・手持ちの手段資源と余剰資源だけで活用するなら損失可能性は最小化される
・許容可能な損失に基づいた行動は成功にも結びつきやすい
期待利益に基づく行動は成功見込みやリターンといった外的な要素を考慮するのと対照的に、許容可能な損失の評価は内的な要素や価値観を改めて振り返る意思決定になる可能性がある。
⭐︎人生が酸っぱいレモンを与えるならレモネードを作れ
・リスクでなく、計測不可能な不確実性こそ真の不確実性でかり起業家が利潤を手にすることのできる源泉
・エフェクチュエーションのサイクルは五つの思考様式の実行を通じて、環境に対するコントロール可能性を徐々に高め、結果として取り組み全体の実効性を高めていくプロセス
・手中の鳥はその時の関心がないと認識できない
・関心の範囲や方向がエフェクチュエーションの行動に影響
Posted by ブクログ
・コーゼーションとエフェクチュエーション
・損失の許容可能性は自信や動機の強さに連動する
・人生が酸っぱいレモンを与えるなら、レモネードを作れ
・3種類の壺:ナイトの不確実性
・何ができるかを発想する「手中の鳥の原則」、行動へのコミットメントを決定する際に用いる「許容可能な損失の原則」、他者との相互作用における「クレイジーキルトの原則」、予期せぬ事態に対処する際の「レモネードの原則」、コントロール可能な活動に集中し、予測でなくコントロールによって望ましい結果に帰結させる「飛行機のパイロットの原則」
・巻き込み力だけでなく、巻き込まれ力も意識
・ワークグラム
Posted by ブクログ
エフェクチュエーションの本質は「不確実性を創造のエネルギーに転換する5原則」にある。特に重要なのは手中の鳥原則による既存リソースの再評価だ。自社の人的資本・物理資産・関係資本を可視化し、意外な組み合わせから新価値を生み出す。例えば空き倉庫をAI学習拠点に転用するような発想がここから生まれる。
許容可能な損失の原則では、リスク管理のパラダイムシフトが起こる。従来のリターン最大化思考ではなく「失ってもよい範囲」を明確に設定することで、迅速な意思決定が可能になる。計算式「当期利益×0.3+遊休資産評価額」は具体的な指針となる。
レモネード原則は失敗を逆転させる技術だ。製造ミスを商品特徴に転換した亀田製菓の事例のように、予期せぬ事象を「設計された偶然」として活用する。重要なのは72時間ルール--問題発生後3日以内に3つの転換案を作成し、最小実行プランを選択するプロセスだ。
クレイジーキルト原則が促すのは異質な協働関係の構築。競合を含む多様なパートナーと、漸進的コミットメントを重ねながら生態系を形成する。自動車業界のEV同盟や異業種コラボ事例が典型例である。
飛行機のパイロット原則の核心は「環境との対話的適応」。完璧な計画より、リアルタイムの軌道修正能力が重要となる。2週間サイクルでの進捗評価と、顧客反応/市場変化に応じた即応的調整が求められる。
日本企業への適用で鍵となるのは「もったいない精神」の再解釈。遊休資源をコストではなく潜在価値と見なし、伝統的な人的ネットワークを現代ビジネスモデルに変換する。稟議制度と実験的実行を組み合わせたハイブリッド戦略が有効だ。
実践的落とし込みのためには3つの軸が不可欠。第一に資源マトリクス作成--スキル・人脈・資産を可視化し組み替える。第二に損失許容計算--数値化された安心感のもとで行動できる。第三に異業種マッチング--予測不能な相乗効果を生む。
経営者層への伝達では「不確実性逆転術」という切り口が有効。脳科学に基づく認知的不協和の喚起(遊休資産の機会損失提示)→直感的理解(AR可視化)→即時行動(テンプレート配布)の3段階プロセスが効果的だ。
重要な気付きは「適応速度が競争優位を決める」という現実。エフェクチュエーション実践企業は意思決定速度が2.8倍速く、失敗転換期間を58%短縮できる。これが生存率2.3倍差の根拠となる。
最終的な学びは「不確実性との共生技術」。予測精度競争から脱却し、変化そのものを価値創造の触媒とする新たな経営パラダイムが、VUCA時代を勝ち抜くカギとなる。自社リソースの再定義と動的適応の繰り返しが、持続的成長を可能にする。