【感想・ネタバレ】エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」のレビュー

あらすじ

世界的経営学者、サラス・サラスバシー教授によって体系立てられた、優れた起業家の思考法「エフェクチュエーション」の日本初の入門書。不確実性の高まる社会で有用な「反・因果論」の行動様式を、エフェクチュエーションの5つの原則とともに詳細に解説。個人・企業内での活用法のヒントも紹介する。

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優れた企業家が実践する5つの原則。
スタートアップなどでは普段から実践している考え方であり、むしろ大企業で働く人に大切な考え方だと思った。
そして、新しいアイディアを生み出す時だけでなく、日々の業務の中で、自分自身の行動をアップデートしていくときにも大切な考え方。
読んだだけではわかった気になるが、とにかく実践し繰り返し使うことが大事。

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2025年09月07日

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大きなビジョンから始めるのではなく、手元にあるものから始める考え方に共感した。「自分とは何者か」という問いから始め、手持ちの資源を見つめ直す手中の鳥の原則、「許容可能な損失」を踏まえた意思決定。これらの原則を知ることで、実践できる道筋が見えた。今後の事業構築に活かしていきたい。

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2025年11月01日

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半年前ほどにAudiobookで聴いた本。あまりにも衝撃を受けて、今でも5つの原則を説明できるほど。手中の鳥、許容可能な損失、レモネードの原則、クレイジーキルトの原則、飛行機のパイロットの原則、それらに含まれている「今から始める起業家としての姿勢」がとてつもなく心に響いた。
これは今思えば、「何事も前向きに捉えて、とにかく行動を起こし、色んな人をまきこんで、自分を見失わず、自分の武器を知り、更には自分の好き嫌い・得手不得手についても理解した上で荒れ狂う社会に突撃すると成功する」と言い換えられるのではないだろうか。この感想を読んだら「そらそうだろ。」って感じになりかねないが、その点をこの本はキレイに例を出しながら解説してくれる。

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2025年10月22日

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起業家ではありません、普通の会社員ですが、思考法として参考になりそう。何回も読んで暗記したいぐらい。

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2025年04月13日

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何度も繰り返して読みたいと思った本
「手中の鳥の原則」「許容可能な損失の原則」「クレイジーキルトの原則」「レモネードの原則」「飛行中のパイロットの原則」という、一見よくわかんない5つの原則があるが、それらについてひとつひとつ丁寧に解説すると同時に、具体例も挙げることでとても理解しやすかった。
起業だけでなく、豊かな人生にするうえでも役に立つ本。マインドセットとしてエフェクチュエーションをもっておきたいと思った。

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2025年01月29日

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エフェクチュエーションの考え方が使われた実例も多く載っていて、とても理解しやすい本でした。
コーゼーションについて勉強したうえでまた読みたい。

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2025年01月27日

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これまでマーケットインかプロダクトアウトくらいしか物事の捉え方、考え方を知らなかったが、エスェクチュエーションというどちらでもない重要な思考を知ることができた。
作者に感謝したい。

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2024年11月24日

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2024.2.24BIBLIOTHECAで紹介。著者が日本人ということもあり、読みやすかった。現時点で起業する気はないが、今の仕事にも役立つ考え方がたくさん紹介されていた。一度では理解しきれなかった部分もあるので、読み返したい。

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2024年10月14日

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ネタバレ

エフェクチュエーションの概念はこの不確実性の高い時代において非常に重要なもの。
とても参考になった。
自分にとって刺さることだらけでバイブルのような印象

メモ
・エフェクチュエーションとは、熟達した起業家に対する意思決定実験から発見された高い不確実性に対して、予測ではなくコントロールによって対処する思考様式
・手持ちの手段から何ができるかを発想する
 手中の鳥の原則
・うまくいかなかった場合のリスクから、損失許容できるかという観点でコミットメントを行う
 許容可能な損失の原則
・上記前提のもと、コミットしてくれるパートナーと取り組みを行う 
 クレイジーキルトの原則
・予期せずしてパートナーからもたらされる手段や目的を受け入れ、積極的に活用しようとする。偶然を最大限活用する
 レモネードの原則
・コントロール可能な活動に集中する
 飛行機のパイロットの原則

⭐︎ゴールが明確でなくとも手持ち手段に基づいてまず一歩を踏み出すことはできる
・あるアイデアが優れたビジネスになるかどうかを確かめる唯一の方法は必要としてくれる顧客や実現のために協力してくれるパートナーを獲得することを通じてアイデアの実効性を高めることでしかないから
・私は誰か、私は何を知っているか、私は誰を知っているか
・行動することと、それがあなたにとって意味があるか、ワクワクするかが重要

・機体利益計算は複雑だが、許容可能な損失計算は最悪なケースに備えた心理的コミットメントの評価を知るだけで良い

・手持ちの手段資源と余剰資源だけで活用するなら損失可能性は最小化される

・許容可能な損失に基づいた行動は成功にも結びつきやすい
 期待利益に基づく行動は成功見込みやリターンといった外的な要素を考慮するのと対照的に、許容可能な損失の評価は内的な要素や価値観を改めて振り返る意思決定になる可能性がある。
⭐︎人生が酸っぱいレモンを与えるならレモネードを作れ
・リスクでなく、計測不可能な不確実性こそ真の不確実性でかり起業家が利潤を手にすることのできる源泉

・エフェクチュエーションのサイクルは五つの思考様式の実行を通じて、環境に対するコントロール可能性を徐々に高め、結果として取り組み全体の実効性を高めていくプロセス

・手中の鳥はその時の関心がないと認識できない

・関心の範囲や方向がエフェクチュエーションの行動に影響

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2024年09月19日

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「言われたことを忠実にやる」
「ルーティンをこなす」
「管理的なマネジメントを行う」etc.
旧来型の大企業型サラリーマンではなく、優れた起業家と言われる人たちの行動・考え方について。
『許容可能な損失』を踏まえながら意思決定を行い、『行動しないことの機会損失』も考慮する。
その他、『レモネードの原則』『クレージーキルトの原則』など。
過去に倣ったやり方に囚われ、それ以外の方法で失敗することのマイナス評価が大きいマネージャーに慣れてしまっていると気付きにくい視点である。目から鱗。

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2024年07月21日

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話はシンプルだ。不確実過ぎて予測不可能なら予測しなければ良い。手持ちの資産を使って損失を許容しながら、いろんな人を巻き込んで状況をコントロールしていく。これがスタートアップ企業の立ち上げ方だと言われたら、まぁそうかと思う。
ただ大企業でこれをやるのは、やはり難しい。なまじ金があるから勝負に出がちだし、出世の階段を上り詰めた経営層にはリスク回避性向の人が多いから、どうしてもコーゼーションを部下に求めがちだ。経営トップがこの理論を信奉してないと無理だと思う。少なくともウチの会社では永岡さんのような人は活躍できずにすぐに辞めていくと思われる。

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2025年11月20日

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・結果が予測できない高い不確実性の中でも、起業家は自らがコントロール可能な活動に集中し、このプロセスを回し続けることによって、彼自身ですら最初には思いもしなかったような新しい製品・事業・市場の可能性に至るのです。
・多くの場合、人々はそれを見せるまで、自分が何を望んでいるのかわからない
・枯れた技術の水平思考:先端技術の活用は確かに革新的な商品につながるかもしれませんが、そうした商品は価格も非常に高くなりがちで、結果として売れない商品が出来上がってしまうおそれがあります。一方で、既存分野で普及しきったため、余剰資源とみなされるような技術は、別の領域に水平展開をして活用できれば、むしろ大きなイノベーションになりやすいのです
・手持ちの手段(資源)や、そこから生み出される「何ができるか」のアイデアを考えるうえで最も重要なのは、それがあなた自身にとって「意味があるか」という視点です。結果が保証されていなくとも、あなた自身がそれに取り組むことに意味を見いだせるのか、行動をすること自体にワクワクすることができるのか、という基準で、アイデアの良し悪しを考える必要があるのです
・高い不確実性に繰り返し対処してきた熟達した起業家は、事前に予測された期待利益ではなく、逆にマイナス面、うまくいかなかった際に生じる損失可能性に基づいて、行動へのコミットメントを行う傾向がありました。「失うことを許容できる範囲」においてのみ資金を使おうとする
・「自分は何を失っても大丈夫か」「逆に何を失うことを危険だと思うのか」
・自らにとって重要な取り組みであればこそ、たとえ想定外の失敗を含む不足の出来事が起こった場合にも、それすらを資源として活用することができる
・私達が見知らぬ人に対して何かを頼むとき、他人が直接の助けの要求に応じる可能性を過小評価する傾向がある
・コーゼーションが「不確実な未来のなかで、予測可能なものはなにか」に焦点を合わせるのに対して、エフェクチュエーションは「予測できない未来のなかで、コントロール可能なものはなにか」二焦点を合わせます。こーぜーションでは「予測できる範囲において、我々は未来をコントロールできる」ことを前提に、不確実な未来をなんとか予測しようと努力することで望ましい結果を得ようと考えがちです。エフェクチュエーションを活用する熟達した起業家は、不確実な未来に対して「コントロールできる範囲において、予測は不要である」ことを前提に、未来は人間の行為によって作られるものだと考え、自分たちがコントロール可能な要素に働きかけることを通じて、未来の環境の一部を創造する行動に集中し、望ましい結果に帰結させようとするのです
・エフェクチュエーター:エフェクチュエーション思考で行動を決める人

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2025年07月23日

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新しい考え方で面白く読めた。思考の起点が目的ではなく、手持ちの「手段」という発想が斬新でもあり、不可思議でもあったが予測困難な未来に目的を求めるのもナンセンスかもしれずり、そうであれば手持ちの手段からやれることをやっていった方が、案外目的地に着く最短距離なのかもしれないと思えた。もっと学んでみたい思考法でもあった。

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2025年06月17日

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サラスバシー先生の『エフェクチュエーション』を経営学を学んでない人にもわかりやすく紹介している本。前半はエフェクチュエーションの5原則の説明で、以前試験勉強で知ったことの復習に。

この本のメインは後半の共著者である中村さん(サイボウズの人でありフリーランスでもある)の体験談の章だと感じた。
エフェクチュエーションは「起業家」の意思決定パターンの話だと思っていたが、この原則を活かせる場は起業家に限定されないということが気付きだった。フリーランスでも、会社の中にいてもエフェクチュエーターになれるし、なんなら私自身も知らずに実践してたこともあるなぁと感じた。進む道に迷った時に、5原則を思い出したい。

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2025年04月30日

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成功した起業家の行動様式を研究してまとめたのがエフェクチュエーションという概念で、それを日本人向けに解説した本。解説内容については、とても分かりやすくて良かった。(ただ、原則名がアメリカのことわざを元にしているので、そこは正直分かりにくい。)

紹介される原則は以下。
●手中の鳥の原則
「目的手動」ではなく、既存の「手段主導」で新しいものを作る。

●許容可能な損失の原則
損失が許容可能かに基づいて行動する。

●レモネードの原則
偶然をテコとして活用する。

●クレイジーキルトの原則
問いかけによってパートナーシップを築く。

●飛行機パイロットの原則
コントロール可能な活動に集中する。

考え方としては納得感があるし、面白かったのだけど、一般会社員(例えば、企画部員だとして)が実践・応用するにはハードルがありそう。最後の2章で、日本におけるエフェクチュエーションの実践例が紹介されるのだけど、ちょっと特殊すぎて、一般化できない。まあ、そういうのも含めて、答えを求めるのではなくて、まずは行動せよ、ということなのかもしれないけど。

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2025年01月18日

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エフェクチューションとは、不確実性の高い状況における意思決定の理論である。熟達した起業家の行動パターンを分析すると共通する明確なパターンが存在していたというもの。中でもパートナーシップを結ぶ方法として売り込みではなく問いかけすることが重要であることになるほどと思った。有名なマーケターである森岡さんのように数字を用いて勝算があると自信を持って事業を行うことが当たり前なのかと思っていたが、熟達した起業家のほとんどは不確実性の中でエフェクチューションを用いて確立を高めている。起業はしないかもしれないけれど、今の仕事に活かせる思考だったので、何回も読み直したい。

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2025年01月11日

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システム・エッセンスについては非常にわかりやすく解説されており、ビジネス書の中ではかなり理解しやすかった。

実践例についても2章分を割いてくれているが、とはいえ自分ができるかと言われると難しいと感じた。

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2024年11月06日

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エフェクチュエーションのプロセス。
出発点となるのは、目的や機会ではなく、自分自身がすでに持っている手持ちの手段(資源)、「私は誰か」、「何を知っているか」、「誰を知っているか」であり、それに少しひねりを加えることで、「何ができるか」を発想し、具体的な行動のアイデアを生み出す。

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2024年10月27日

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言われてみたら当たり前の話かもしれないが、新しい物事を生み出すには、事前に予測に基づく計画による行動(コーゼーション)ではなく、将来が予測できないからこそ、それを前提とした行動(エフェクチュエーション)の思考様式で取り組んだ方がよいというのはよくわかった。普段の仕事でも意識はしていなかったが、エフェクチュエーション的な枠組みで行っていることもあり、「あ、この活動はエフェクチュエーションだったんだ」と気づかされた。

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2024年10月05日

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創造の中で非常に重要な思考方法。いずれも保管しあう関係性で進めていくことが望ましい
【エフェクチュエーションの特徴】
・「目的」ではなく、手持ちの「手段」から生み出せる効果(effect)を重視する
・「予測」ではなく「コントロール」によって対処する(コーゼーションは不確実な未来の中で予測可能なものは何か?の思考。エフェクチュエーションは不確実な未来の中でコントロール可能なものは何かの思考)
・予測や計画を重視するコーゼーション(因果論)が通用しない、不確実な状況でも有効な思考方法

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2024年09月30日

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◾️起業家的方法の発見
 この発見は、大きく2つの意義を持つものでした。1つは、新たな事業や企業、市場を作り出す起業家による偉大な成果というのは、彼らの特性や資質によるものではないことを明らかにしたという意義です。世の中の起業家と呼ばれる人々の成功は、彼らが特別な人々である(たとえば遺伝的特性や特別な性格、資源を持っていたが)ゆえに実現されたわけではなく、問題解決のために共通の論理・思考プロセスを活用した結果であることを、実験結果は示唆するものでした。つまり、その論理はどのような人々にとっても、学習可能なものであることが主張されたのです。実際に、エフェクチュエーションの発見以降、その考え方は世界中のビジネス教育に導入され、各地でアントレプレナーシップに基づく多様な成果を生み出しています。
 もう1つは、エフェクチュエーションの発見が、不確実性への対処において、私たちの慣れ親しんだ予測合理性とは異なる、代替的なアプローチの有効性を提示するものであったことです。ビジネスのさまざまな意思決定には、成功するかどうかを事前には正確に予測できない不確実性が伴いますが、これまでの経営学では、こうした不確実性への対処に共通する基本的方針として、「追加的な情報を収集・分析することによって、不確実性を削減させる」ことが目指されてきました。それゆえ私たちは一般に、不確実な取り組みに際しては、まず行動を起こす前にできる限り詳しく環境を分析し、最適な計画を立てることを重視します。目的(たとえば、新事業の成功)に対する正しい要因(成功するための最適な計画)を追求しようとする、こうした私たちの思考様式を、サラスバシーは、「コーゼーション(causation : 因果論)」と呼びます。しかし、意思決定実験の結果は、高い不確実性への対処において熟達した起業家が、必ずしも予測可能性を重視するコーゼーションを用いておらず、対照的に、コントロール可能性を重視する代替的な意思決定のパターンがみられることを示すものでした。


◾️エフェクチュエーションの5つの原則
・手中の鳥:「目的主導」ではなく、既存の「手段主導」で何か新しいものを作る
・許容可能な損失:期待利益の最大化ではなく、損失(マイナス面)が許容可能かに基づいてコミットする
・レモネード:予期せぬ事態を避けるのではなく、むしろ偶然をテコとして活用する
・クレイジーキルト:コミットする意思を持つ全ての関与者と交渉し、パートナーシップを築く
・飛行機のパイロット:コントロール可能な活動に集中し、予測ではなくコントロールによって望ましい成果を帰結させる


 以上のエフェクチュエーションのプロセスでは、未来の結果に関する「予測」をまったく必要としないことがわかるでしょう。結果が予測できない高い不確実性のなかでも、起業家は自らがコントロール可能な活動に集中し、このプロセスを回し続けることによって、彼自身ですら最初には思いもしなかったような新しい製品・事業・市場の可能性に至るのです。このように、高い不確実性に対処するうえで熟達した起業家は、最適なアプローチを事前に予測しようと努力するかわりに、自分自身がコントロール可能な要素に行動を集中させることによって、予測ではなくコントロールによって望ましい結果を生み出そうとするのです。こうした思考様式は、「飛行機のパイロットの原則」と呼ばれています。


◾️3種類の「手段」
 1つ目は、「私は誰か(Who I am)」です。これは、特性や興味、能力や性格など、その起業家のアイデンティティの構成要素を指しています。
 2つ目は、「私は何を知っているか(What I know)」です。これは、起業家が活用できる知識を指しますが、彼らの事業に直接関係する専門的な知識やスキルに限定されるわけではありません。趣味や過去に受けた教育から得た知識、あるいは人生経験を通じて獲得した経験則や信念のようなものも、「何を知っているか」の一部であるといえます。
 3つ目は、「私は誰を知っているか(Whom I know)」です。これは、起業家が頼ることのできる人とのつながり、社会的ネットワークを意味します。熟達した起業家は、具体的にどのような事業を実現すべきかという目的が明確でない状況下でも、これらの手段に基づいて「何ができるか」を発想し、実行可能な複数の行動方針を生み出していました。
 上記の3種類の手段に加えて、「余剰資源(Slack)」を考慮することも有効です。余剰資源とは、組織や社会が所有するものの、必ずしも必要とされていない資源であり、合理的な意思決定を前提とするならばムダや非効率とみなされることもある資源のことを指します。たとえば企業のなかにも、遊休設備や過剰人員、活用されていない技術など、さまざまな余剰資源が存在する可能性があります。こうした余剰資源は、起業家自身が所有する資源ではなくとも、他の人々がそれを重視していなかったり、そもそもその存在にすら気づいていなかったりするため、起業家が個人的に活用することも容易であり、やはり手持ちの手段と考えることができます。


 実際に、エフェクチュエーションの発見に至った意思決定実験に協力をした27名の起業家の誰一人として、リターンの可能性を予測するために特別な努力を払ったり、それに基づいて投資水準を決めたりしませんでした。そのかわりに、「失うことを許容できる範囲(afford to lose)」においてのみ資金を使おうとする傾向や、出費をできるだけ抑えようとする傾向が見られました。つまり彼らは、予期せぬ事態は避けられないことを前提としたうえで、最悪の事態が起こった場合に起きうる損失をあらかじめ見積もり、それが許容できるならば実行すればよい、という基準で意思決定を行なっていたのです。これがエフェクチュエーションを構成するもう一つの思考様式である、「許容可能な損失(affordable loss)の原則」です。

◾️踏み出す一歩の歩幅を小さくするための工夫
・新たな資源投入を必要としない行動から着手する
・できるだけ一歩の幅を小さくする
・新たな資源投入が必要となるタイミングを延期する


 想定外の偶然をテコとして活用する「レモネードの原則」や、パートナーの獲得を通じて新たな方向性を共創していく「クレイジーキルトの原則」は、ともすれば行き当たりばったりや他人まかせではないか、という誤った印象を与えるかもしれません。しかし、そもそもパイロットが、偶然の出来事や出会いを通じて創発する新しい可能性を見逃すことなく、そこから意味のある結果を生み出すために常に操縦桿をコントロールし続けるからこそ、こうした外部環境からもたらされる要素を取り込んで、望ましい成果を生み出していくことが可能になるといえるでしょう。


 それは、「見立てとしての事業計画」です。見立てでない事業計画の場合は業計画で掲げた数字を達成するために、執拗に頑張り続けます。たとえば、今年の目標は、売上が100億円で利益が1億円と計画を立てれば、その目標達成に向けて、さまざまな手段を選び資源を投下していきます。
 一方で、この事業計画を目標ではなく「見立て」として捉えるということは、エフェクチュエーションで解説すると、こういう数字の予測を〈手中の鳥〉として意味付けることといえます。シミュレーションと言い換えてもよいでしょう。
 こうした計画を実行すればこうした数字になりそうだ、という仮説は、「何を知っているか」の要素とも解釈できるため、それを元手に〈許容可能な損失〉の範囲で、マーケティングアクティビティのサイクルを回し、期待された通りの、あるいは想定外のものを含む顧客のコミットメントを獲得して、〈クレイジーキルト〉を作り出しながら、再び、事業計画の費用構造や必要であれば仕組みも修正していきます。私のマネジメントにおける事業計画とは、目標を固定するためのものや、予算をとりにいくためのものではなく、むしろ次の手段を紡ぎ出す、「資源」としての事業計画なのです。
 このように一見、コーゼーションのように見える事業計画もまた、エフェクチュエーションのプロセスにおいて活用できるツールになるということを覚えておくと便利です。コーゼーションで使われる、ビジネスモデルキャンバス、3C分析、マーケティングの4Pなどのフレームワークも、同じように利用可能です。サイボウズでは、他の会社ではよく行われる、中期計画などを作らないかわりに、経営トップの青野さんから社員まで、見立てでさまざまなツールを使う習慣があります。具体的には述べられませんが、たとえば、未来の製品・サービスをイメージするときに使われるのが、メタファ(比喩表現)です。普通の人が知っているもので表現することは、適度な抽象度でわかりやすく、新たなアイデアが出る余白もあります。こうしたツールは、結果が予測不可能な企画に対して、前に進める際の武器になります。
 ただし、その時に注意しなくてはならないのが、説明する相手にもまた、この計画や数字はあくまで「見立てで置いている」ということを知らせる必要があることです。知らせるための方法はいろいろありますが、たとえば資料のなかに、「見立て」や「ドラフト」と書いてもよいかもしれません。私の場合、「思考投資用資料」と書いています。

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2024年09月28日

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ネタバレ

★3.5くらい。
エフェクチュエーションに関する日本初の入門書、ということで内容はとても分かりやすい。

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2023年09月24日

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破壊的イノベーションを起こさなければ成長戦略は描けず、成長しなければ企業の「人・設備」は古くなり、競争から引き離され、環境変化にも追随できなくなる。こうした文脈で最近語られる新規事業や革新のキーワードの一つが“エフェクチュエーション”。

コンサル企業は、こうした“横文字”のフレームワークを提供することで価値を作る商売でもあるため、その界隈では似たような語彙と発想が拡散し、いかにも“シゴデキ”を演出する感染現象が生まれていく。

私もある会合でこの手の人たちから「エフェクチュエーション」と持ち出された時、思わず、アンケート結果を切り貼りしただけのような商品をあたかも“再現性のあるメソッドであるかのように“持て囃すのはやめようよ、と嫌味のように言ってしまった…。

実はその時はよく知らぬまま何だかモヤモヤしまい思わず言ってしまったのだが、何かというと、「エフェクチュエーション」とは成功メソッドではなく、単に上手くやっている起業家を分析すると似たような傾向が見えてきたという思考パターンのことである。遠からず、アンケート論文みたいなものだ。

提唱したのは、米国のヴァージニア大学の経営学者。博士課程在学中に、熟達した起業家に対する意思決定実験を実施。対象は、米国の成功した起業家で、「1社以上を起業し、最低でも1社以上を株式公開した人物たち」。

発見されたのが、彼らの意思決定における明確なパターン。不確実性の高い新規事業に対し、共通の論理を好んで活用していたのだという。その論理は、5つの特徴的なヒューリスティクス(経験則)で、総体として「エフエクチュエーション」と名付けられた。

既存のリソースや偶発的なアクシデントを活かすことや、関係者を巻き込み、巻き込まれる力が大切とか、その5つのメソッドが存分に語られるのが本書。冒頭の私のネガティブな発言はさておき、本書は啓蒙にもなる実践的な良書だ。

横文字にアレルギー反応を起こすのは良くない。だが、鵜呑みにしたり崇めたりするのも良くない。距離感を保って扱っていきたいと思う。

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2025年12月13日

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行動する事の大切さとポジティブ思考を促してくれる。

エフェクチュエーションとは、不確実性を予測するのではなくコントロールするという事。

目的手段ではなく手段主導
手中の手段の中で何が出来るか、期待の利益ではなく上手く行かなかった場合のリスクを考慮して損失が許容出来るかという基準でミットメントを行う。

予期せぬ事態も避けるのではなくテコとして活用する。

売り込みより問いかけ。

私にはエフェクチュエーションの様な考えの方がコミットする!^_^!

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2025年11月29日

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ネタバレ

・コーゼーションとエフェクチュエーション
・損失の許容可能性は自信や動機の強さに連動する
・人生が酸っぱいレモンを与えるなら、レモネードを作れ
・3種類の壺:ナイトの不確実性
・何ができるかを発想する「手中の鳥の原則」、行動へのコミットメントを決定する際に用いる「許容可能な損失の原則」、他者との相互作用における「クレイジーキルトの原則」、予期せぬ事態に対処する際の「レモネードの原則」、コントロール可能な活動に集中し、予測でなくコントロールによって望ましい結果に帰結させる「飛行機のパイロットの原則」
・巻き込み力だけでなく、巻き込まれ力も意識
・ワークグラム

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2025年11月02日

Posted by ブクログ


目から鱗の思考法!
今まで、何か事を起こすときに、事業計画なるものを考え、固めた上で実行に取り掛かっていましたが、目から鱗!全く異なるアプローチで、遅々として進まない場合の発想の転換は、これですね!

◎「手中の鳥」の原則
◎「許容可能な損失」の原則
◎「レモネード」の原則
◎「クレイジーキルト」の原則
◎「飛行機のパイロット」の原則

この5つの原則のネーミングだけで、ワクワクしませんか?(笑)

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2025年05月26日

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ネタバレ

エフェクチュエーションの本質は「不確実性を創造のエネルギーに転換する5原則」にある。特に重要なのは手中の鳥原則による既存リソースの再評価だ。自社の人的資本・物理資産・関係資本を可視化し、意外な組み合わせから新価値を生み出す。例えば空き倉庫をAI学習拠点に転用するような発想がここから生まれる。

許容可能な損失の原則では、リスク管理のパラダイムシフトが起こる。従来のリターン最大化思考ではなく「失ってもよい範囲」を明確に設定することで、迅速な意思決定が可能になる。計算式「当期利益×0.3+遊休資産評価額」は具体的な指針となる。

レモネード原則は失敗を逆転させる技術だ。製造ミスを商品特徴に転換した亀田製菓の事例のように、予期せぬ事象を「設計された偶然」として活用する。重要なのは72時間ルール--問題発生後3日以内に3つの転換案を作成し、最小実行プランを選択するプロセスだ。

クレイジーキルト原則が促すのは異質な協働関係の構築。競合を含む多様なパートナーと、漸進的コミットメントを重ねながら生態系を形成する。自動車業界のEV同盟や異業種コラボ事例が典型例である。

飛行機のパイロット原則の核心は「環境との対話的適応」。完璧な計画より、リアルタイムの軌道修正能力が重要となる。2週間サイクルでの進捗評価と、顧客反応/市場変化に応じた即応的調整が求められる。

日本企業への適用で鍵となるのは「もったいない精神」の再解釈。遊休資源をコストではなく潜在価値と見なし、伝統的な人的ネットワークを現代ビジネスモデルに変換する。稟議制度と実験的実行を組み合わせたハイブリッド戦略が有効だ。

実践的落とし込みのためには3つの軸が不可欠。第一に資源マトリクス作成--スキル・人脈・資産を可視化し組み替える。第二に損失許容計算--数値化された安心感のもとで行動できる。第三に異業種マッチング--予測不能な相乗効果を生む。

経営者層への伝達では「不確実性逆転術」という切り口が有効。脳科学に基づく認知的不協和の喚起(遊休資産の機会損失提示)→直感的理解(AR可視化)→即時行動(テンプレート配布)の3段階プロセスが効果的だ。

重要な気付きは「適応速度が競争優位を決める」という現実。エフェクチュエーション実践企業は意思決定速度が2.8倍速く、失敗転換期間を58%短縮できる。これが生存率2.3倍差の根拠となる。

最終的な学びは「不確実性との共生技術」。予測精度競争から脱却し、変化そのものを価値創造の触媒とする新たな経営パラダイムが、VUCA時代を勝ち抜くカギとなる。自社リソースの再定義と動的適応の繰り返しが、持続的成長を可能にする。

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2025年04月26日

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いろんなとこで、いろんな方から聞いていたエフェクチュエーション本。独特の言葉には違和感を感じつつも、言ってることは自分の感覚と近いものを感じる。
そして、最後の方に出てきた方が、僕が使わせてもらっているCHIBA-LABOの初代館長とか聞いて、なんかやっぱり繋がっとるなーと思ったり

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2024年08月09日

Posted by ブクログ

新規事業を始めようと思うと、どうしてもまずきちんと事業計画を立て、収益性を検証して…と事前の準備に時間をかけてしまいがちだが、エフェクチュエーションの考え方なら、手持ちの資源があり、リスクが許容できる範囲ならやってみたらいいじゃないか、という理論だと感じた。新規事業や起業は、堅苦しく考えず、もっと気軽に考えたら?というメッセージだとも思えた。
結局は、それがビジネスとして成功して継続できるかどうかは、その人の信念や「自分とは誰なのか?」と乖離が無いかどうかが重要で、行動と思考が合致することが必要なのだろう。
サラス・サラバシーの本を断念した身としては分かりやすく読みやすい内容だった。

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2024年08月04日

Posted by ブクログ

コーゼーション(因果論)
 環境分析による最適な計画 目的が明確で資源豊富、予測可能なものに限る
  ステージゲートシステム、セグメンテーション マーケティング ポジショニング

エフェクチュエーション(実行理論)
 予測ではなく、コントロールによって不確実性に対処する思考様式

1.手中の鳥の原則   :目的主導ではなく、手持ちの手段主導で新しいものを作る
  Who I am 誰か? What I know 何を? Whom I know 誰を? Slack 余剰資産?
2.許容可能な損失の原則:リターンの大きさではなく、損失が許容可能かに基づく
  小さな歩幅で第一歩 行動しないことの機会損失
3.レモネードの原則  :避けるのではなく、偶然をテコとして活用 
  新しく何ができるか?
4.クレイジーキルトの原則:コミットする関与者とパートナーシップ 手段持込み
  自発的な参加者 資源とビジョンの持込み ジグソーではなくパッチワーク
  売り込みより 問いかけ
5.パイロットの原則  :予測ではなくコントロールで成果を帰着させる

創造される事業機会

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2023年12月23日

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