あらすじ
逆転劇なるか!? カンニングから始まったその作戦は、クラスメイトを巻き込み、思いもよらぬ結末を迎える(逆ソクラテス)。足の速さだけが正義……ではない? 運動音痴の少年は、運動会のリレー選手にくじ引きで選ばれてしまうが(スロウではない)。最後のミニバス大会。五人は、あと一歩のところで、“敵”に負けてしまった。アンハッピー。でも、戦いはまだ続いているかも(アンスポーツマンライク)。など短編全5編の主人公はすべて小学生。デビュー20年目の新境地ともいえる本作は、伊坂幸太郎史上、最高の読後感! 2021年本屋大賞第4位。柴田錬三郎賞受賞作品。
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Posted by ブクログ
伊坂さんが十年前から構想してた子供達が主役の作品。子供から見た小さな世界の表現力、言葉遣いなどにも意識を向けないといけない為に作成するのに膨大な時間がかかったらしい。その難しさが伝わらない程いつもの伊坂ワールドを発揮していて、かつ読みやすかった。無知を知ることが大事だと唱えたソクラテスに対し、自分は知っていると勘違いしている先生を逆ソクラテスと表現し、その先生に対し、先入観を壊す為に子供達が奮闘する。自分にもどこかしら先入観や主観的な意見で答えがないものでも自分と違う意見だと否定してしまっている場面があったからこそ、自分の先入観を一旦消してみて受け入れる。自分の意見があるならそれを周りに合わせない。「そうは思わない」と言う魔法の言葉を使おうと思う。磯憲や久保先生の指導、謙介のお母さんの子育ては自分を見直すきっかけになった。過去のことについて追求し、非難するのではなく今に向き合うこと、向き合い方を自分の目で見て判断すること、評判の大事さ、何も持たない我々への心の持ち方の大切さ。1テーマごとに人生の教訓のようなものを持ち合わせていて過去にない伊坂作品だった。桜の木を切ったワシントンの話を正直者は報われる信念と結びつけたり、アンスポーツマンシップをリスタートの機会と結びつけたり、ドンコルレオーネのゴッドファーザーを勇気の源として結びつけたり、伊坂ワールドと教訓の融合も見ていて飽きなかった。
Posted by ブクログ
Audibleにて拝聴しました。
伊坂幸太郎さんの凄さを改めて実感した1冊でした。
どれも美しい短編でしたが、「アンスポーツマンライク」が私は1番好きです。歩くんが1歩を踏み出すシーンが本当に印象的でした。そしてその「アンスポーツマンライク」のその後を、「逆ワシントン」で更に強めるサプライズ。非の打ち所がない傑作短編集です。
Posted by ブクログ
「先入観」がテーマになっているので、「なるほどなぁ」「たしかに」とハッとさせられる部分がちょこちょこあった。
個人的に好きだったのは「スロウではない」「アンスポーツマンライク」。
「スロウではない」の展開は、私自身も先入観で騙された。
もし大人になってから仲良くなった人や結婚を考えている相手が、昔いじめをしていた人だったら。そのいじめによって相手が命を落としてしまっていたとしたら。たとえ本人が改心してその後は真っ当に生きていたとしても、自分は許せるだろうか?と答えの出ない問いをしばらくグルグル考えてしまった。
「アンスポーツマンライク」はシンプルに胸熱展開だったな、と。子どもの頃に言われた何気ない一言が呪いになってこびりつく気持ちはよくわかるので、歩君がリベンジのような形でカッコいい一歩を踏み出せて良かった。