【感想・ネタバレ】日本語を翻訳するということ 失われるもの、残るもののレビュー

あらすじ

「古池や蛙飛び込む水の音」芭蕉のこの俳句を英語で説明するとき、「蛙」をa frogとfrogsのどちらで訳すべきだろうか。単数か複数かを決めないまま翻訳することは英語では許されない。ほかにも「ちらちら」「どんどん」などの擬音・擬態語、「雨ニモ負ケズ」の漢字カタカナ交じりの表記、「顔が能面のようだ」といった比喩など、翻訳困難な日本語表現を紹介。夏目漱石も村上春樹も登場する、海を越えた日本語論。

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Posted by ブクログ

めちゃくちゃ面白い

ひとつだけ気になったのは、翻訳によって、失われるものと残るものは何か、という問いだ

私はこれは片手落ちと思う

翻訳によって、失われるものと残るものに加えて、得るものは何か、を考えたい

この本のしている考察は、まさに得るもののひとつであるし、例えば、「古池や 蛙飛び込む 水の音」の蛙が、英訳されたときに単数形か複数形かを選ばざるを得ないことで失われる曖昧さは確かにある。
あるのだが、それは画一的な見方であり、単数を獲得してるともいえる。
翻訳は、失ったばかりでなく、何かを得ている。というか、何も失わないように翻訳するのが無理なように、何も得ないように翻訳することも不可能だろう。

そこで得てしまうものは正しいものではないのか?

意味や価値の領域で正しさというものを問うてしまっている時点で、この質問自体が失敗している

つまり翻訳は、何かを失い、何かが残り、何かが加えられる

それは正しいか正しくないかではなく、原理的にそうなるので、そのことをどう用いるか、にしか問いの意味が生まれ得ない

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2021年07月26日

Posted by ブクログ

 「古池や 蛙飛び込む 水の音」について、ふと思ったこと。
 この俳句の世界では、蛙は日本語で「ぽちゃん」と音を立てるのか?「ぼちゃん」と音を立てるのか?蛙が水に飛び込むまで、周りは静かだったのか?周りの環境も考えると、どんな訳が良いだろう?
 いろいろな疑問が浮かびます。

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2024年06月16日

Posted by ブクログ

日本語を英訳することの難しさを様々な事例を用いて紹介してあります

【こんな人におすすめ】
翻訳に興味がある人

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2023年06月08日

Posted by ブクログ

今までにも言語について少し学んでいたが、初めて知ることもあっておもしろかった!!
言語そのものについて学ぶと、外国語を学ぶのも文学を読むのも音楽を聴くのももっと楽しくなるだろうなと思えた

日本語と英語を行き来することで、「認知的な視点」の違いを明らかにできる。英訳された、あるいは英語の詩を読むのもいいな。

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2023年03月19日

Posted by ブクログ

日本語を英語に翻訳することについて書かれた本なので、日本語の勉強にも英語の勉強にもなり学びの多い本でした。英語と日本語で省略・反復する部分が違う、文化の違いで比喩が機能しなくなるといった話は意識するといった話など、言語という身近なテーマだけに確かにそうだなと思える部分が多く、知的好奇心を満たす面白さがありました。特に日本語の特性について意識してなかった指摘が多く、このあたりを意識すると日本語の使い方が上手くなる気がします。

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2019年11月10日

Posted by ブクログ

ただ英語を勉強して、ただ留学をするだけでは短歌や和歌を翻訳するということはできない。英語を日本語に翻訳するということは日本語を人並み以上理解する必要があり日本語の素晴らしさ、美しさを再確認できる本だった。

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2019年01月03日

Posted by ブクログ

日本語での文章では時制をあまり意識していない感じだが,英語では厳密に現在形,過去形,過去完了形などを使い分けている.第4章でその辺りが議論されている.さらに受動文と能動文を考察している第7章も面白かった.序文にもあったが,あまり意識しないで使っている日本語を見直すきっかけになる著作だ.参照されている例文の選択が非常に広範で,素晴らしかった.それに付随している英文も洗練されたものが多いと感じた.

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2018年09月09日

Posted by ブクログ

「すべての翻訳には失われるものがあり、同時に失われずに残るものがある」ことを軸に、展開されていく。

第2章ではひらがな、カタカナ、漢字の持つウチソト、ジェンダーの含みを。
第3章では比喩表現、第4章では時制、第6章では常体と敬体について扱っている。

自分の扱っている所で特に面白かったのは、第7章の「受動文の多い日本語、能動文の多い英語」だった。

「ペアの動詞群はaku/akeru、shimaru/shime-ru、tasukaru/tasukeruのように、共通する語幹の次に来る母音が替わります。ところが、大事な例外があります。語幹が共通でないのにペアになっている『なる』と『する』のような例です。この2つの動詞はまさに『自発』対『人為』の対立です。次の節でも説明しますが、私は『思う』と『考える』という大事な動詞も自発動詞対非自発動詞のペアだと考えるべきだと思います。」

助動詞る、らる、ゆ、らゆの自発を扱いながら、最後は「出来る」を人為か自然(出で来る)かまで見ていく。
うわあ、面白い!

ちなみに、反復についての例えで、ふと疑問が。

「(桑太郎という老人が街角の占い師と話している場面)
占い師:おじいさん、いくつ?
桑太郎:七十六。
占い師:七十六、ううん。それでどういう相談事が?」
を翻訳すると、

「Fortune teller:How old are you,gran'pa?
Kuwataro:Seventy six.
Fortune teller:Seventy six.And what do you wanna talk ask me about?」
になるらしい。

「占い師が「七十六」を繰り返した理由は76歳の老人が将来を占ってもらいに来たことへの驚きを表現しています。それと同時に、76歳で本当に占い師に話したいことがあるのかという確認も表現しています。まるでカトリックの神父に懺悔をする信者のような関係が占い師と桑太郎との間にできあがっています。反復の生み出す意味合いを探るのはなかなか複雑です。」
と結ばれている。

まるで、からの部分がどちらを指すのか私には不明瞭なのだけど、これは最早、表記のあるなしの問題ではなく、ニュアンス、つまり「読み」に関わってくる部分だと思う。

対応する文法や言葉がないのではなく、当てはまる文化や社会的慣例がないのでもなく、対応させても更に「読み」の問題が待っているということか。
じゃあ英語圏の方は、このSeventy sixをどう読むのだろうかと、気になった。

夏目漱石や村上春樹といった例文も挙げながら、翻訳の難しさと魅力を挙げていく。
良い刺激を受けた一冊だった。

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2018年07月01日

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