あらすじ
本書所収のエッセイ「林檎の味」では感覚の本質、「数学とは何か」では公理主義と抽象化、「四色の地図」は集合論、数学基礎論、位置解析学と展開して四色問題に及ぶ。日常の何気ない生活のなかにこそ数学の抽象的な概念は生起し、そこに数学の影を認めることができると著者は説く。影の裡にある無限の広がりと深さを縦横無尽かつ軽妙に綴った数学エッセイ。第1回日本エッセイスト・クラブ賞受賞。
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Posted by ブクログ
もとは1952年刊。あのロングセラー『零の発見』の著者のエッセイ集。第1回日本エッセイスト・クラブ賞受賞。
1932年から52年に書かれたエッセイ、大小とりまぜて、49篇。書名から数学エッセイを連想するが、数学ネタは3分の1弱。「数学を怖がる話」「数学と日本語」「算術以前」など、内容は一般向け。「アランと数学」「アンリ・ポワンカレ」は留学先だったフランス絡み。「行列」という1篇があるが、これは数学とは関係のない、本物の行列の話題。
どのエッセイも目のつけどころが秀逸。たとえば、「林檎の味」はいまでいうcross-modal interaction。「暑さずれ・寒さずれ」は温度感覚と環境と順応の話、いまでも研究のトピックになるかも。
My favoriteは「動く地球、動かぬ地球」。地動説が正しいというけれど、そんな証拠がどこにある? 直感的には、どうしたって天動説。どうしたら、この直感をひっくり返せるか。まわりのいろんな専門家にも聞いて回る。「追記」でパスカルが出てくるあたりが、いかにもアカデミック。
Posted by ブクログ
「零の発見」で有名な吉田先生のエッセイ。吉田先生の本は、「零の発見」以外は、「函数論」「ルベグ積分入門」のいわゆる専門書を読んだことがある。
どれも丁寧にわかりやすく書かれており、初学者が道に迷うことのない配慮がなされている名著たちである。
そんな吉田先生のエッセイを初めて読んだ。驚いたのが、中谷宇吉郎や寺田寅彦が存命中の時代の人ということ。
短い文ばかりだけど、どれも古臭くなくて読みやすい。特に、一対一対応について触れられているいくつかの文は、大学の講義でしてもらうと抽象的な世界からずいぶん救われる気がする。
「動く地球、動かぬ地球」などは、数学や物理を学ぶ人はぜひ一読しておくべきだと思う。
数学の専門書ではないけれど、核のようなものがそこかしこに表現されていて、数学は苦手だけど、数学の本質に触れてみたいという人にもおすすめ。
寅彦の文には物理学がしみわたっていると書いておられるけど、このエッセイには数学がしみわたっている。