あらすじ
怪獣パニック×本格ミステリ!!
怪獣の襲来が「日常」になった世界で起こる、三つの謎めいた殺人事件。
『名探偵コナン』、『ウルトラマン』シリーズの脚本も手がける大倉崇裕の最新作!
正体不明の巨大生物「怪獣」の度重なる出現に対抗すべく、専門省庁「怪獣省」が置かれ、発見・予報・殲滅の撃退プロセスを確立させた日本。怪獣の進行方向や攻撃方法を分析する予報官の岩戸正美は任務中、奇妙な事件に遭遇する。風力発電所の停止命令が届かなかった町で、瓦礫の下から見つかった死体。音響統制が敷かれた静寂の中で鳴り響いた一発の銃声。怪獣が生息していると噂される湖で失踪した調査官――そして、怪獣にまつわる事件には必ず、年季の入ったコートをなびかせた一人の中年男が現れる。警察庁特別捜査室の船村と名乗った男のことを、正美は噂で知っていた。怪獣に関連した特殊な事件を扱う「特別捜査官」。正美は、怪獣を巡る奇妙な事件の捜査に巻き込まれていく……。
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Posted by ブクログ
初めて怪獣が現れたのは1954年のこと。日本領海だった。以来、世界は度重なる怪獣襲来に悩まされる事態となった。特に四方を海に囲まれた日本の被害は深刻だ。
そこで日本は怪獣対策のため1970年に「怪獣庁」を設立し、さらに2000年に「怪獣省」に昇格させ、防衛力を強化した。
こうして日本は、他国の追随を許さない対怪獣防御システムを誇るまでになっていた。
これは怪獣襲来に際し、その進路および迎撃方法を分析し決定する怪獣予報官と、怪獣絡みの犯罪を捜査する怪獣捜査官の活躍を描いた物語である。
◇
太平洋沖の日本領海に突如現れた怪獣。怪獣省第1予報官の岩戸正美は特徴を分析し、対象をグランギラスと特定した。
グランギラスについては1971年に襲来したときのデータがある。
体長 53㍍、体重 2.3万㌧。水陸両棲で、全身を覆う硬い鱗には物理的な攻撃は通用しない。
この鱗は体内の水分が蒸発するのを防ぐ役目もしているが、逆に言えばグランギラスは乾燥に弱いということだ。
熱攻撃兵器を沿岸部に設置して迎撃すると決定した岩戸は、続いてグランギラスの上陸予定地を静岡市清水と割り出した。
ただ岩戸には懸念があった。
グランギラスは大きな動きを見せるものに興味を示す習性がある。そして、清水区沿岸には風力発電用に多数の風車が設置されている。このままではグランギラスは風車目がけて上陸する。そして沿岸部の殲滅特区に熱攻撃兵器を設置するには風車が邪魔になる。
岩戸はすぐさま、第3予報官の橋本に命じて静岡県の管理機関に風車停止を要請した。
だがグランギラスが間近に迫っても、なぜか風車は回転を止めず……。( 第1話「風車は止まらなかった」) ※全3話。
* * * * *
物語は怪獣省チーフ予報官である岩戸正美の視点で描かれるのですが、彼女は狂言回しの役割です。
真の主人公は船村秀治という警察庁から特権を与えられた怪獣捜査官でした。この船村が魅力的なのです。
風采の上がらぬ見た目。穏やかで言動はとぼけていても、頭脳のキレは抜群で格闘技の達人でもあるという人物像は、『死神刑事』の儀藤堅忍とほぼ重なります。
そんな船村が岩戸を相棒にして、硬軟使い分けた捜査で事件を解決していく過程は非常に読み応えがありました。
ただし船村が扱うのは、怪獣絡みで人間が起こした事件です。そう、物語のメインは怪獣との戦いではないのです。
そして事件の謎を解いた船村に追い詰められていく犯人の、動機も含めた人間臭さにはリアリティーを感じます。
だから本作は、パニックファンタジーと言うよりも、できのよいミステリーとして出色でした。大倉崇裕さんの、そんな巧者ぶりも窺えておもしろかったです。
怪獣に対しては有効な対策を構築できた日本ですが、人間が身勝手な欲望から起こす犯罪を防ぐ手立てはありません。ますます巧妙になる犯行の手口。
「怪獣は怖い。だけどね、人も怖いよ。私にとっては、怪獣なんて比べ物にならないくらい、怖い」
岩戸に向かって、つぶやくように言った船村のことばが印象的でした。
Posted by ブクログ
抜群のエンタメ性。おもしろかった。お役所怪獣防衛x刑事ドラマ。まだでてこないタイプの怪獣いるし、ぜひ続編と、MM9みたいなかんじで実写ドラマ化期待!
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怪獣とミステリー? どんな感じ?
題名からも難しそうな気がして読む前から思案…
読むと一気読み! 面白い! 読み進めるうち怪獣の姿が 眼の前に浮かびます!特に3話目は唸る 続編も読みたいです
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怪獣が現れそれを殲滅している世界。
主人公の正美が予報官という役職で日本を守っている。
怪獣=人間の方が逃げ惑うというイメージだったが、対抗できるという設定が面白い。
船村の怪獣防災に関する権限が強くてある意味最強。
怪獣より人間の欲望の方が怖い。
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これは、怪獣の話ではなく、特殊設定ミステリー。
普通に怪獣(ゴジラみたいなヤツ。でも種類が多くそれぞれ特徴あり)がでてくる世界線のお話なんだけど、テーマは殺人事件なんですよ。だから、トリックも特殊。面白い。メインの登場人物は2人。怪獣殲滅時に指令トップの任にある岩戸正美と、警察の船村秀治。部署の全く違う2人が、事件で交わりお互いのスキル生かして謎を解きます。
この世界に浸ったり、登場人物をイメージするのがやや困難だったけど、3章読み進めるうちに登場人物と世界観に入り込めました!3章が一番面白かった。怪獣も生き物なので、心臓の場所や特徴で殲滅方法変わったりとか、予想外の動きから殲滅の後にその理由調べたりとか。
船村が冴えない風貌と描写されているのにめちゃくちゃヤル男なので、もしも映像化されたら、意外とイケメンになりそう。受ける印象はコロンボっぽいけどね。
かなり読める子じゃないとこの世界に入り込めないかなぁ。怪獣好きだと内容に肩透かしくいそうだし。中学校以上かなー。読みたがったら小学生でも、これを読めるならまあ、よし。殺人や、死体の描写あり。
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怪獣を題材にした3つの連作短編集。
新聞でいちおしミステリーとして紹介されていたので読んでみました。
怪獣が台風災害のように発生する世界観。SF作品かと思いきや、リアリティのある設定に引き込まれた。スリリングな怪獣撃退と殺人事件が絡み合い、予想外の展開にハラハラドキドキでした。
それにしても船村さん、かっこよすぎるかな〜
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大倉さんらしい、怪獣×ミステリーでした。
始めは特撮?と思ってましたが、まさかのミステリーで驚きました。
怪獣予報官の岩戸正美と公安の船村のコンビも、水と油っぽいですが中々良いコンビに思えました。
シリーズ化希望です。
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怪獣対策として、怪獣省が置かれ、索敵・予報・殲滅の班が怪獣撃退を担う。
予報班の正美と、警察庁特別捜査室の船村の取り合わせも良い。
正美とのバディも良いが、他の索敵・殲滅班の活躍も読んでみたい
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怪獣xミステリ。新鮮!
怪獣による被害がある世界、だからこそ起こる事件。わくわくですね。
「殲滅特区」って言葉がもうぐっとくるわ。
3編収録。続編あるかなあ。
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怪獣とミステリ?特異設定モノだとしてもどんな融合をするのか…『屍人荘の殺人』のような感じかなとか色々想像して読み始めたのですが…面白い!!予報・殲滅のくだりだけで既にワクワク。そんな中で事件が起きてからの本格ミステリ的な展開…最高でした。
2人の活躍をもっと読みたい!是非シリーズ化(特撮映像化も!)をお願いします!!
新年早々素晴らしい作品に出会いました。
Posted by ブクログ
著者は1968年生まれ。「ウルトラマン•マックス」や「名探偵コナン」等の脚本にも参加している。なるほどね。
物語の舞台は怪獣が普通に襲来する日本。怪獣庁予報官•岩戸正美は怪獣の進行方向を予測したり誘導したりする『第一予報官』だ。そんな岩戸が警察庁怪獣防災法専任捜査官•船村秀治とバディを組んで捜査をする。特殊な設定に基づいた"犯罪捜査もの"だ。
「風車は止まらなかった」「殲滅特区の静寂」「工神湖殺人事件」の3話構成。
"日本が最初の怪獣災害に見舞われたのは1954年"とか、"岩戸は1999年に京都駅の崩壊で家族を失っている"とか、怪獣好きには「あぁ、あの時か!」的な小ネタもいっぱい。
ただ、『捜査もの』としてはちょっと無理筋が多いと感じたので⭐︎3つ。
Posted by ブクログ
怪獣をモチーフにしたミステリーですよね。
怪獣という要素が無ければ面白くない内容でした。
SFかミステリーか微妙ですが面白ければそれでいいのかな。
次もありそうですね。
Posted by ブクログ
怪獣が台風のように襲ってくる世界の日本が舞台の、怪獣の特定や対策を指示する予報官が主人公のミステリー短編集です。
どの作品も怪獣と事件が密接に絡んでいたり、探偵役はまた違うキャラ(タイトルの怪獣捜査官)だったりと結構面白い作りでした。映像作品の脚本も手掛けられている方だからか、絵映えしそうなシーンもたくさんあり、そこも読みどころでした。
Posted by ブクログ
怪獣が存在するパラレルワールドが舞台のミステリ短編集。
怪獣の発見、行動分析、殲滅のプロセスを専門に行う「怪獣省」で働く予報官が、任務中に奇妙な事件に遭遇する。怪獣の襲来や迎撃の様子はこの著者らしく力の入ったものだが、結局は怪獣より人間が怖いという感想。
世界観が面白いし、主人公二人も魅力的なので続編を期待したい。