【感想・ネタバレ】ACEサバイバー ──子ども期の逆境に苦しむ人々のレビュー

あらすじ

子ども期の逆境体験、ACE(=Adverse Childhood Experience)は、その後の人生での病気・低学歴・失業・貧困・孤立など様々な困難と関連することがわかってきた。自分の子どもを不適切に養育する傾向もあり、その影響が次世代に及ぶ可能性も見えてきた。本書では、データを基に実態を明らかにし、彼らが生きやすく、不利にならない社会にするためにはどうしたらいいかを提起する。

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Posted by ブクログ

ACE(Adverse Childhood Experience)=子ども期の逆境体験は、当事者の人生全体が被る不利な影響を及ぼす。そしてACE自体が社会の怠惰による産物であることを指摘している本書。
関連するテーマの「毒親」や「アダルトチルドレン」等を扱った(これまで流通していたような多くの)書籍は、心理学やカウンセリングの知見をベースに書かれており当事者目線のケアには有用であったが、
一方で親も含めた彼らを取り囲む環境全体を見直すための分析には不十分だと感じていた。
その欠けていた視点が、本書を読むことで補完されたように思う。

ACEサバイバーにふりかかりがちな自己責任論を著者は明確に否定しながら、医学と疫学成果を踏まえ、社会学的な立場から機能不全のある家庭や子ども期の逆境についての解決策や提言を示している。
そのため、行政や医療やケアに従事する職業人だけではなく、子どもたちが埋め込まれている環境について考えたいすべての人におすすめできる一冊だと感じた。

また現在、逆境および子ども時代の逆境の影響に苦しんでいる当事者にとっては、「第4章 ACEによる悪影響を断ち切るには」の「レジリエンス」「保護要因・促進要因」といったキーワードの理解が役に立つと思われる。

個人的には、母親として「逆境の連鎖」を断ち切り、マルトリートメントを予防していく方策を具体的に調べていきたいという課題感が掴めたので、とても良い読書体験になった。

補足:
・子どもの教育環境の改善策として、包括的性教育についても触れられている。日本ではなかなか包括的性教育の例を聞かなかったので、大阪市立田島南小学校・中学校の例には驚いた。
本校のカリキュラムをモデルに、全国の小中学校で展開すると良いのではないかと感じた。
・他者が「おそらく何らかのトラウマを抱えているけれど、どう応答/アプローチしたらいいかわからない」という状況にこれまで何度か遭遇しては立ち往生してきたので、TIC(trauma informed care)についても今後勉強してできることを探りたいと思った。

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2025年02月26日

Posted by ブクログ

ACEという言葉が、日本において殆ど浸透していない現状にも関わらず、アメリカおける逆境体験の研究結果や支援の在り方について生物学的見地を含め、わかりやすく丁寧に説明されている。
まだまだ心身の病は自己責任という日本社会の思い込みを、そう簡単に払拭できない現状が歯がゆい。
このような状況において、『ACEサバイバー』というちょっと衝撃的なネーミングが、日本に浸透するにはどれくらいの時間が必要なのだろうか。親ガチャでも、複雑性PTSDからレジリエンスを信じて生きていける支援の在り方を確実に浸透させていきたい。今一度児童憲章を確認し、子どもたちが安心して過ごせる世の中になるよう切に願う。

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2025年11月11日

Posted by ブクログ

データに基づいた記述がなされており、出典も明記されているので、ACEの資料および入門書として参考にしやすい内容である。海外だけでなく国内の動向についても触れられており、いくつかのプロジェクトがあることがわかった。
一方で、これだけ膨大なデータがあるにも関わらず、現状でできることがTICによる関わりとなると少し心許ない気もするし、あまり好ましいデータもないので、サバイバーの不安を煽ることにならないか心配である。そう考えると、ACEの指標が単なるスクリーニングのために作られたものなのか、それとも他に何か別の意図があるのかがわからなくなってきた。使い方を間違えると、差別のための指標ともなりかねない危うさがあるなと思った。

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2023年07月31日

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