あらすじ
子ども期の逆境体験、ACE(=Adverse Childhood Experience)は、その後の人生での病気・低学歴・失業・貧困・孤立など様々な困難と関連することがわかってきた。自分の子どもを不適切に養育する傾向もあり、その影響が次世代に及ぶ可能性も見えてきた。本書では、データを基に実態を明らかにし、彼らが生きやすく、不利にならない社会にするためにはどうしたらいいかを提起する。
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Posted by ブクログ
独身未婚中年男性の自分が読んでみました。
非常に良い本でした。著者のいうように、ACEサバイバーに関する入門書だと思いました。
以下、本書から自分なりに気になった点をピックアップしますが、著者の三谷先生も本書中で指摘するように、ACEサバイバーすべてにあてはまるということではなく、こういう傾向があるという内容で、差別につながらないように意識する必要がある点は、自分も最初に注意しておこうと思いました。
・「逆境を累積させたACEサバイバーは、未婚になる可能性が高く、結婚しても離婚に至る可能性が高い」(p107)
・「「レジリエンス」が注目を浴びれば浴びるほど、逆境を乗り越えることが「自己責任」だとみなされてしまう」ことに注意が必要(p131)
・レジリエンスを高める要因として、「「少なくとも片方の親との密接な関係」」(p133)
自分自身は、本書の例に挙げられている方のような壮絶な人生は送っていないものの、ちょっとACEサバイバー的な傾向はある気がしました。そのことは、昔務めていた職場の女性の先輩が気づかせてくれたのですが、「ACE」の定義は、本人が思うかどうかにかかわらず、客観的にそう捉える、ということだそうです。これに近いものとして(あまり使いたくない言葉ですが)「毒親」は、主に子が親に対して使い、子が親から虐待的なものを受けたと自覚している場合の言葉です。これに対し「ACE」は、本人にその自覚がなくても、そうした条件にあてはまると思われる場合、そう分類できるという、客観的な指標なようです。だとすれば、自分も少しそこにあてはまりそうです(やや強権的な父親と、その保護ベースとしての母親という両親)。
自分の場合、父親が実力暴力をふるうことはなかったですし、母親が精神的支柱になってくれたので、グレずに済んだのですが、上記だと、「少なくとも片方の親との密接な関係」は築けました。しかしながら、男の子の場合、やはり男親がロールモデルにならないと、「まっとうに」育つのは難しいと思いました。「強くなれ」と父親は私に厳しくしましたし、その呪縛は今でもあります。
こうしたものは、家族以外に助けてくれる人がいればいい部分もありますが、そうした支援者もしょせんは他人ですし、その他人には家族がいるわけです。パートナーがいないと、頼れる人が親しかいなくなります。その、パートナーに甘えることが許される関係を、そもそもサバイバーは築けないのではないでしょうか(自分にはその傾向がある)。
この本では、これからACEをどのように防ぐか、という点で非常に重要な研究ですが、一方、特に日本では、就職氷河期世代のACEサバイバー(女性も男性も)がもう救われず、絶望するしかないことを突きつけられているような気分にもなります。
事例としてライフヒストリーに挙げられていたのは、いずれも医療系を生業とする女性2人でした。精神疾患からの回復をテーマとしたコミックエッセイ等で時々みられる、「理解のある彼氏」がいる場合もあるでしょう。そう考えると、また、同じ状況の困難を抱える男性がそこからこぼれ落ちる危険性がありそうな気がしました。
事例の1人の方は、カウンセラーに受け止めてもらえない感があったそうです。自分もそういうことがあったときもありましたし(男性カウンセラー)、受け止めてもらえることもありました(女性カウンセラー)。
おそらくこの本で三谷先生が最も訴えたいのは、「ACEサバイバーが被る多大な不利は、その事実を見ようとせず、対応をしてこなかった「社会の怠慢の産物」」(p193)という点だと思われました。
自分は、家庭の問題の半分は社会の問題だと思っています。三谷先生が挙げられていた社会の問題として、「現代社会のストレスの多さや、不安定雇用の増加」、「母親への家事・育児負担の偏り」、「出産前に子どもと関わったことのない親の増加」などがありました(p193)。これって、ストレス、不安定雇用、母親の家事育児負担は、いずれも親に余裕がないことになります。自分は体力がないので、フルタイム勤務をしていたら子育てできないと、子育てを諦めました。子どもと関わるという点では、若い子たちが年少者と関わる機会がないですし、今となっては、自分は独身男性なので、そもそも社会(母親)からは子どもに対する危険分子としかみなされていません。社会が抱える問題は多そうです。
基本的に、親に経済的・精神的余裕ができれば解決しそうな問題でもあります。
この本にはありませんが、自分は、本来、「親になる資格」などなく、誰でもなんとなく親になれるしゃかいでないといけないと思っています。昔は親になる覚悟なんてなくてもなんとかなったわけで、そうでないと少子化はさらに進むでしょう。
いずれにしても、この本をきっかけに、不適切養育などが少しでも減って、親子家庭も、単身の方も、みんなが幸せに生きられる日本や世界ができていくことを願いつつ、自分は低所得などの困難を日々身に染みながら、世間の迷惑にならぬよう、一歩一歩生活をしていきます。