あらすじ
「小さな黒いノート」に記録された実生活の断片
『分解する』『ほとんど記憶のない女』につづく、「アメリカ文学の静かな巨人」の3作目の短編集。内容もジャンルも形式も長さも何もかもが多様なまま自在に紡がれることばたちは、軽やかに、鋭敏に「小説」の結構を越えていく。作家が触れた本から生まれたミニマルな表題作「サミュエル・ジョンソンが怒っている」をはじめ、肌身離さず作家が持ち歩くという「小さな黒いノート」から立ち現れたとおぼしき作品など、鋭くも愛おしい56篇を収録。
「それらはいわば、彼女という人の「自分観察日誌」だ。[…]結晶となった言葉は硬く乾いてひんやりとして、元の感情からは慎重に隔てられているように見えて、目を凝らしてみると、行間から血のしたたるような感情が、生の痕跡が、透けて見える」(「訳者あとがき」より)。強靭な知性に支えられた作家の本領を味わえる1冊。
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Posted by ブクログ
たった一行にも満たないものから数十ページになるもの、物語というよりは断片としか形容できないものや、特殊な形式のものまで、作者が『短編小説である』と断ずるこの作品集には一見どうやって読めばいいのか戸惑ってしまうような短編が多数収録されている。
正直自分の知識と感性の未熟さで楽しみきれなかったものもあるけれど、全体としてすごくスリリングで、こちらが読もうとすればするほど冷静で淡々とした文章の奥から物語がとめどなく溢れてくるすごい本だった。
比較的長めの作品なら、執拗なまでに細かい描写と事実を淡々と書き連ねた文章を追う内に胸が痛くなるほどの激しい感情が湧き上がってくるし、極端に短い作品ならば、そのたった数十から数百字に込められた意味を見つけようとする内に思いがけない場所へ辿りついて驚きと喜びにおそわれることになる。
本を読むのって楽し〜〜〜を実感させてもらった。