【感想・ネタバレ】火蛾のレビュー

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Posted by ブクログ

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わー、好みが分かれそうな…。いかにもメフィスト賞受賞作って感じ。
読書家の方が絶賛していたので読んだらすごかった。なにがなんやらわからんのに次のページ次のページと読み進めさせられる。ストーリーをまとめろと言われてもまとめることが出来ない。そもそもジャンルもわからない。
この感覚、アラビアの夜の種族を思い出しました。やれと言われても絶対真似が出来ない、暗闇の中の乏しい明かりの中ぐるんぐるん掻き回されてるような。
私は大好きです。
いつもなら「物語が始まるきっかけもう少し早くしろよ」とか言うんですけど、これに関してはなんかもう、何を文句つけてものれんに腕押し、仕方ないと思ってしまった。そもそも物語の始まりってどこだよ、物語なのかこれは、と口を閉じるしかない。
面白い面白くないとかの次元でもなく読まされてしまって今ボーッとしてます。イスラム教やゾロアスター教のことをもっと知っていれば考察も出来たのかもしれないけど、それも不粋な気もする。

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2023年07月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

物語は十二世紀の中東。聖者たちの伝記録編纂を志す詩人のファリードが語り手となる。伝説の聖者の教派であるウワイス派に繋がる男を訪ねる。その男が語ったのはアリーという語り手と同じ名前の修行者の物語。

その物語は、アリーが修行者だけが住う山の閉ざされた穹盧に赴き、遭遇した連続殺人の物語であった。

イスラム教の神秘主義をモチーフに描かれている作品ではあるが,イスラム教や神秘主義などを知らなくても、作中で解説してくれるので理解できる。また、修行中に起きた殺人事件の解決が中心の話にはなっているが、この殺人自体も修行の一環としてアリーが紡ぎ出した物語にすぎないのではないか、とファリードが結論づけているのも面白かった。さらには、最後のファリードが、これらの物語と思しき物語はファリードのために紡がれた物語ではあったが、火蛾になれず、俗世に戻っていくしかない悲しさを受けつつも生きていくところも良かった。

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2023年06月09日

Posted by ブクログ

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ずーっと読みたかった『火我』、まさかの文庫化!
本屋さんで見つけた時に、びっくりしすぎてリアルに声が漏れちゃいました

イスラム教と殺人事件の融合
読みながら、こんな世界観に密室殺人とか登場させて大丈夫なの?なんて思っていたのだけど、そこは流石の一言
アリーの過去の宗教との決別と絡めて、何の違和感もない仕上がりになってました

基本的に作中で自作解説をし過ぎる作品て苦手なんですけど、この本の「第七章・詩人ファリード」はめちゃくちゃありがたかったです
自分の脳にはもう深い考察をするだけの力は残っていなかったもので……

冒頭から神秘的な描写や文体でお話が進んでいく中、第三章の冒頭で
「男の語る物語はいよいよその内容からして、夢がたりめいてきた。いかに神秘主義的な聖者譚とはいえ、にわかに受け容れがたい話である」
なんて書かれていてちょっとフフッとなってしまった
同じこと考えながら読んでたよ!って(笑)
ちょっと幻想的に過ぎるかな……と思ってたタイミングでのまさにそれ!な文章で、その後を落ち着いた気持ちで読み切る事が出来ました

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2023年09月14日

Posted by ブクログ

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イスラム教についての知識が全然ないので、読む前から不安はあったものの、この話に必要な部分の知識はちゃんと教えてくれるのでわかりにくいとか難しいとかあまり思うことなく、楽しく読むことができた。
もっと小難しい文章なのかと思ってたけど、文章自体も読みやすかった。

ミステリ…ではあるけど本格ではないし…なんて言ったらいいんだこれ…という感じがあって、メフィスト賞受賞ということに納得した。

いろいろあって最後に『ウワイスは、きっと、死んでもいない人間の教えなど聴く気になれなかったのだ』というところにもっていくのがとても良かった。
火蛾というタイトルも、初めてみたときはなんだこれ?と思ったけど、最高のタイトルでした。

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2023年05月31日

Posted by ブクログ

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 第17回メフィスト賞受賞作として2000年に刊行。2001年版本格ミステリ・ベスト10第2位。当時、話題になっているのは気づいていたが、手に取ることはなかった。

 著者の古泉迦十氏の第2作が出ないまま23年が経過し、本作『火蛾』が文庫化された。解説によると、2017年に電子書籍化されている。どうにか読み終えて思う。電子書籍で読んでいたら、最後まで読み通せなかったのではないか?

 これは手強い…。読み始めてすぐに覚悟する。苦手な苦手な宗教ネタなのだから。イスラームにシーア派とスンニ派があることくらいは知っているが、神秘主義などもちろん知らない。文章は平易だが、すっと頭に入ってくるかは別問題だ。

 かなりざっくり言うと、師に従い修業の旅に出た行者が、殺人事件に遭遇する話である。現場の不可解さに一抹の本格らしさを感じるものの、正直地味。時代設定は西暦1100年代後半らしいので、そもそも本格という概念が存在しないのだが。

 ハウダニットとしてはパッとしない。フーダニットとしては意味がない(内容を素直に受け取るなら)。ホワイダニットとして価値を見出せるかどうか。本ミス第2位なのだから業界人受けはよかったのだろうが、一般向け娯楽作品とは対極にある。

 身も蓋もない言い方をすると、これは「夢オチ」の一種だ。一読者に過ぎない自分が、信仰心が薄い人間であることを差し引いても。これほどまでにイスラームに造詣が深い古泉迦十氏。信仰心の持ち主でなければ、こんな作品は書けないはずだ。

 本作に描かれた信仰の究極形の凄まじさは、一読に値するだろう。世俗に塗れた我々はもちろん、メッカへの巡礼者も、カトリックもプロテスタントも、あらゆる宗教の信者たちも、このような境地に達することは決してないのだから。

 古泉迦十氏の第2作が、近々星海社より刊行されるそうである。また宗教を背景にした作品なのだろうか。手を出すべきかどうか悩ましい。

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2023年05月23日

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