あらすじ
12世紀の中東。
聖者たちの伝記記録編纂を志す詩人のファリードは、伝説の聖者の教派につらなるという男を訪ねる。
男が語ったのは、アリーという若き行者の《物語》──姿を顕さぬ導師と四人の修行者だけが住まう《山》の、
閉ざされた穹盧(きゆうろ)の中で起きた連続殺人だった!
未だかつて誰も目にしたことのない鮮麗な本格世界を展開する、第17回メフィスト賞受賞作がついに文庫化。
解説:佳多山大地
感情タグBEST3
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終盤になるにつれ、夢中で読んだ。素晴らしい読書体験であった。また、詩人ファリードやその他の人物が実在、あるいは宗教的に存在していると知って、ますます驚いた。メフィスト賞受賞作は個人的に好きな作品ばかりだと、改めて思った。
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物語は十二世紀の中東。聖者たちの伝記録編纂を志す詩人のファリードが語り手となる。伝説の聖者の教派であるウワイス派に繋がる男を訪ねる。その男が語ったのはアリーという語り手と同じ名前の修行者の物語。
その物語は、アリーが修行者だけが住う山の閉ざされた穹盧に赴き、遭遇した連続殺人の物語であった。
イスラム教の神秘主義をモチーフに描かれている作品ではあるが,イスラム教や神秘主義などを知らなくても、作中で解説してくれるので理解できる。また、修行中に起きた殺人事件の解決が中心の話にはなっているが、この殺人自体も修行の一環としてアリーが紡ぎ出した物語にすぎないのではないか、とファリードが結論づけているのも面白かった。さらには、最後のファリードが、これらの物語と思しき物語はファリードのために紡がれた物語ではあったが、火蛾になれず、俗世に戻っていくしかない悲しさを受けつつも生きていくところも良かった。
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20年ぶりの再読。内容はすっかり忘れていた。
12世紀の中東イスラム世界が舞台で、修行のため山に入った行者の周囲で殺人事件が起こる。密室や奇怪な殺され方など謎めいているが、事件よりもイスラム教の内容や修行の方向性、目的などがメインで面白かった。
以前読んだ時はかなり難解だった記憶があるが、今回はわりとスラスラ読めたのは年の功か。
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専門的なイスラム教知識が大量に並んでいるにもかかわらず、文章が異常に読みやすい
語り手アリーが見つめる蝋燭のゆらめき、イスラム世界の風をまざまざと感じられた
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中学のとき1回手に取った。世界史Bをやる前だったからマジでイスラム教についての知識が無くて、ちんぷんかんぷんのまま途中で読むのを辞めた記憶がある。諦めずに読んでたら、世界史の点数もう少し伸びたのだろうか。
第17回メフィスト賞受賞作とだけあって、メフィスト賞の始祖、京極夏彦の作品を意識したような(特に「鉄鼠の檻」)、宗教とミステリの幸福なブレンド。始まり方、流れ、オチ、全部綺麗にまとまってて好きでした。大地くんとかにオススメ。
余談だけど講談社文庫って文字がデカイからか、ケレン味溢れる内容が特に映えるんだよな、スピリチュアル教義書ぽいからかな。
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ずーっと読みたかった『火我』、まさかの文庫化!
本屋さんで見つけた時に、びっくりしすぎてリアルに声が漏れちゃいました
イスラム教と殺人事件の融合
読みながら、こんな世界観に密室殺人とか登場させて大丈夫なの?なんて思っていたのだけど、そこは流石の一言
アリーの過去の宗教との決別と絡めて、何の違和感もない仕上がりになってました
基本的に作中で自作解説をし過ぎる作品て苦手なんですけど、この本の「第七章・詩人ファリード」はめちゃくちゃありがたかったです
自分の脳にはもう深い考察をするだけの力は残っていなかったもので……
冒頭から神秘的な描写や文体でお話が進んでいく中、第三章の冒頭で
「男の語る物語はいよいよその内容からして、夢がたりめいてきた。いかに神秘主義的な聖者譚とはいえ、にわかに受け容れがたい話である」
なんて書かれていてちょっとフフッとなってしまった
同じこと考えながら読んでたよ!って(笑)
ちょっと幻想的に過ぎるかな……と思ってたタイミングでのまさにそれ!な文章で、その後を落ち着いた気持ちで読み切る事が出来ました
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ミステリであって幻想小説でもある、しかしどちらでもない中間の……といった雰囲気で今までに読んだことの無いタイプの小説だった。
あらすじをまとめることは出来るが、無意味な気がしてならない。前情報は入れず、何も考えずにあるがまま読んで欲しいな、と思った。
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『アラビアの夜の種族』ばりのエキゾチックで素敵な雰囲気を醸しながら物語を語りはじめ、しかし人がしっかり殺されて犯人は誰だ?みたいな話をはじめるのでちょっと笑ってしまう。
信仰とはなにかという問いに対して示される「言語の届かぬもの」というヒントが、やがては「本格ミステリ」自体をも解体していく。なぜ犯人は見つけられねばならぬのか、なぜ理路整然とした謎解きが必要とされるのか、なぜ人は殺されてはいけないのか。そういった根源的な問いを詰めていくとやがて「そもそも誰が殺されたのか? 殺されるとはどういうことなのか?」という問いに行き着く。
新本格という枠組みを使いながら、読者を、信仰のうちがわ、言語と非言語の狭間へ連れていく秀作。
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イスラム教についての知識が全然ないので、読む前から不安はあったものの、この話に必要な部分の知識はちゃんと教えてくれるのでわかりにくいとか難しいとかあまり思うことなく、楽しく読むことができた。
もっと小難しい文章なのかと思ってたけど、文章自体も読みやすかった。
ミステリ…ではあるけど本格ではないし…なんて言ったらいいんだこれ…という感じがあって、メフィスト賞受賞ということに納得した。
いろいろあって最後に『ウワイスは、きっと、死んでもいない人間の教えなど聴く気になれなかったのだ』というところにもっていくのがとても良かった。
火蛾というタイトルも、初めてみたときはなんだこれ?と思ったけど、最高のタイトルでした。
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イスラム教についてまったく知らないので、単語の意味がわからなくて何度も見返した(;ↀ⌓ↀ)
後半になると謎解きがおもしろくて引き込まれます。でもやっと理解できたのは、聞き手である詩人ファリードの見解を読んでからでした。
表現が高度過ぎて読み込めない所が多々ありました꙳⋆(lllᵔ⩌ᵔlll)౨♪
宗教と謎解きの本は初めてでしたがなかなか興味深かったです。イスラム教について詳しければもっと楽しめたのかもしれません。
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第17回メフィスト賞受賞作として2000年に刊行。2001年版本格ミステリ・ベスト10第2位。当時、話題になっているのは気づいていたが、手に取ることはなかった。
著者の古泉迦十氏の第2作が出ないまま23年が経過し、本作『火蛾』が文庫化された。解説によると、2017年に電子書籍化されている。どうにか読み終えて思う。電子書籍で読んでいたら、最後まで読み通せなかったのではないか?
これは手強い…。読み始めてすぐに覚悟する。苦手な苦手な宗教ネタなのだから。イスラームにシーア派とスンニ派があることくらいは知っているが、神秘主義などもちろん知らない。文章は平易だが、すっと頭に入ってくるかは別問題だ。
かなりざっくり言うと、師に従い修業の旅に出た行者が、殺人事件に遭遇する話である。現場の不可解さに一抹の本格らしさを感じるものの、正直地味。時代設定は西暦1100年代後半らしいので、そもそも本格という概念が存在しないのだが。
ハウダニットとしてはパッとしない。フーダニットとしては意味がない(内容を素直に受け取るなら)。ホワイダニットとして価値を見出せるかどうか。本ミス第2位なのだから業界人受けはよかったのだろうが、一般向け娯楽作品とは対極にある。
身も蓋もない言い方をすると、これは「夢オチ」の一種だ。一読者に過ぎない自分が、信仰心が薄い人間であることを差し引いても。これほどまでにイスラームに造詣が深い古泉迦十氏。信仰心の持ち主でなければ、こんな作品は書けないはずだ。
本作に描かれた信仰の究極形の凄まじさは、一読に値するだろう。世俗に塗れた我々はもちろん、メッカへの巡礼者も、カトリックもプロテスタントも、あらゆる宗教の信者たちも、このような境地に達することは決してないのだから。
古泉迦十氏の第2作が、近々星海社より刊行されるそうである。また宗教を背景にした作品なのだろうか。手を出すべきかどうか悩ましい。