あらすじ
「服を見ればすべてがわかる」と、噂されるほどの鋭い洞察力を持つ服飾ブローカー・桐ヶ谷京介に新たな事件解決の依頼があった。依頼主は警察と京介の橋渡し役を担う南雲警部。南雲は12年前、勤務中に捨て子を発見した。その子は施設で育ち、少年になったいま、南雲に母親探しを頼んできたのだ。南雲は発見当時にその子が身につけていた大人もののTシャツを京介に預ける。京介の神懸かった推理が始まった……。「ゆりかごの行方」/など、仕立屋探偵が6つの事件を解決する、傑作クライム・ミステリー!
「ゆりかごの行方」
12年前の捨て子が少年になり、発見者である南雲警部に母親探し依頼。手掛かりは発見時に身につけていた大人もののTシャツだけだった。
「緑色の誘惑」
15年前、65歳の独居女性が殺された。被害者の女性は、身につけるものすべてが緑色という、そうとう変わった生活行動をとっていた。
「ルーティンの痕跡」
京介のバディー役・水森小春の下着が盗まれた。代わりにベランダに残されていたのは男モノのトランクス。京介と小春の推理は……!?
「攻撃のSOS」
駅の近くで、女子中学生グループの中の1人の服から、京介は虐待の痕跡を見つける。気になって同じ電車に乗り込んで追いかけると……。
「キラーファブリック」
17年前、食べ物アレルギーの主婦が自宅で遺体となって見つかった。死因はアナフィラキシーショック。警察は事故と見立てたが……。
「美しさの定義」
10年前の刺殺事件。被害者は服飾学校に通う学生で、死後1週間して自宅のアパートで発見された。凶器のハサミは刺されたままで……。
感情タグBEST3
クローゼットファイル
未解決事件を見事に警察とは違った部分から掘り下げ、見事に解決してしまう…本当に警察官になってくれたら良いのに…と誰もが思ってしまう。面白くて一気読みしましま。小春さんのキャラが最高!
Posted by ブクログ
川瀬七緒『クローゼットファイル 仕立屋探偵 桐ケ谷京介』講談社文庫。
シリーズの第2弾は6編から成る連作短編形式だった。
服や生地、加工方法、人体の骨格などを手掛かりに様々な事件を推理する涙もろいアパレル・ブローカーの桐ヶ谷京介とヴィンテージショップで働く水森小春のコンビが今回も活躍する。
面白い探偵小説だと思う。服飾関係に造詣の深いアパレル・ブローカーとヴィンテージ関係とゲームに詳しい2人を探偵役に据えたのは大正解だろう。異色の2人だからこそ、予想外の推理が展開されるのだ。
『ゆりかごの行方』。冒頭の描写は伏線であったか。古いТシャツからこれだけの手掛かりを見付けるとは、やはり桐ヶ谷京介は只者ではない。12年前に南雲警部が発見した捨て子が少年に成長し、自分の母親を探して欲しいと頼んで来た。困り果てた南雲警部は発見当時身に付けていた子供服にリメイクした大人用のТシャツを携え、桐ヶ谷京介に母親の居場所を探して欲しいと依頼する。
『緑色の誘惑』。桐ヶ谷京介が南雲警部から依頼された15年前に65歳の独居女性が絞殺された事件の再捜査。犯人と見られる人物の監視カメラの映像から警察は犯人は女性と断定していたが、桐ヶ谷は男性であると主張する。また、桐ヶ谷は被害者女性の服飾類から真犯人にまで辿り着いてしまうのだ。
『ルーティンの痕跡』。まさかの下着から解き明かされる人物像。水森小春の下着が2階のベランダから盗まれる。不思議なことに盗まれた下着の代わりにベランダには男物のトランクスが残されていた。この謎に桐ヶ谷京介に代わり、水森小春がヴィンテージの知識を活かして挑む。
『攻撃のSOS』。親が親らしく子供に接することが出来たのは今や昔話になってしまったのだろうか。親による子供の虐待のニュースを耳にする度に社会全体が悪い方向に向かっているように感じる。駅の近くで桐ヶ谷京介は、女子中学生グループの中の1人の服から虐待の痕跡を見付ける。気になった京介は同じ電車に乗り込んで追い掛けると、警察に通報されてしまう。
『キラー・ファブリック』。まさかの推理が16年前の事件の真相を見抜くという面白さ。16年前に蕎麦アレルギーを持つ主婦が自宅で遺体となって発見される。死因はアナフィラキシーショックで、亡くなった主婦はエピペンを携帯していたにも関わらず、使用した形跡が無かった。警察は事故か事件か判断を付けぬままに時間だけが経過していた。南雲警部はそんな事件の捜査協力を桐ヶ谷京介と水森小春に持ち掛ける。
『美しさの定義』。今回も桐ヶ谷京介の推理が光る。まさかの犯人像に驚いたが、僅かな手掛かりからよくぞ犯人に辿り着いたものだ。南雲警部が桐ヶ谷京介と水森小春に捜査協力を依頼したのは10年前に起きた服飾学校に通う生徒が自宅アパートでハサミで刺殺された事件だった。
本体価格820円
★★★★★
Posted by ブクログ
仕立屋探偵 桐ヶ谷京介の2作目。短編6作でそれぞれの事件を服や生地やシワなどから解決の糸口を見つけていく。個性の強いキャラクターが揃い、プロならではの視点で指摘していく過程が斬新で面白い。続編を期待したい。
Posted by ブクログ
「服を見ればすべてがわかる」服飾ブローカー・桐ヶ谷さんが"正式に”?警察の捜査協力者に。「服を見ればすべてがわかる」服飾ブローカー桐ヶ谷さんが人の複雑な心情が絡む事件の謎を自分の専門知識を駆使して解く過程が面白い。未解決事件の遺族の心情は想像するだけで辛くなる。他にも代理殺人計画の話とアナフィラキシーショックのお話が特に印象に残った。
Posted by ブクログ
一作目はとても重いテーマで読んでいてしんどかったが、今回は短編集なので息をつける話もあり、休まず読めた。
とはいえ、児童虐待や無慈悲にも命を落とした話は胸が痛い。
目を背けたくなるような話は続くが、服の皺や小さな事象から紡いでいく主人公の推理力や洞察力は、あまりにも神がかり過ぎているようにも見えるが、全てに理があり、それを積み重ねた結果に納得できる。
一作目から信用はできると思っていたが、ますます彼に対する信頼度が上がってしまった。
今回は残された遺族にも目が向けられており、10年以上も取り残された彼等には事件解決は少しは救いになるのだろうか。
たくさんの「何故」が少しはわかって、区切りにはなるのかな。
あと、虐待にあっている子供達が、まずは避難できてよかった。
まだまだ先が長い話になると思うが、少しは呼吸ができるようになったのではないかと思う。
前作では浮いているように見えたが、明るさのカケラも無い酷い事件には、小春のキレた言動が救いになるのだなと今回はつくづく感じた。
まだ未解決はたくさんあるようだから、続編がありそうで楽しみだ。
2024/11/15 20:58
Posted by ブクログ
「仕立屋探偵 桐ヶ谷京介」の2冊目。
警察業務の民間委託って、一部の仕事では実際にあるようだが、捜査まで委託するのはかなりハードルが高そうね。
お話の中では、一足先に“捜査業務の一部民間委託依頼”が成立。『日本の法の隙間で苦しんでいる子どもを見つけ次第、行動に移せるコネがほしい』という桐ヶ谷と迷宮入りの事案を数多抱える未解決事件専従捜査対策室の利害が一致したところで、南雲警部が持ち込む6つの事件の顛末が描かれる。
相変わらずに持ち前の服飾技術や美術解剖学の知識からバッサバッサと事件解決へ辿り着くが、特異な能力から炙り出される事実はちょっと生々しくて重たい。で、ひと月も穿いたまま洗っていない男物のトランクスがずらりと並んでいる話を読まされるのはきついなあ。
謎解きに関してはまったく手が出ないので、話の展開により面白さも変わるのだが、それから言うと4話目の「攻撃のSOS」が一番。
桐ヶ谷が、すれ違った女子中学生の服から虐待の痕跡を見つけ、気になって同じ電車に乗り込んで追いかける、という展開だが、警察と関係が出来たとはいえ、おいそれと手を出すことができない事案にどう絡んでいくのかという筋立てが、このシリーズが特に訴えたいところに響いて面白く読めた。
『どんな場面であれかまわず空気をぐだぐだにできる』とか『あなたがいると実にばかばかしくて気が休まる』と評される小春が相変わらず良い味。
太鼓腹を何とかしようと腹筋に勤しむ南雲が、『やみくもに腹筋してるせいで腰と首に負担がきている』とか『腹筋よりも大腰筋と腸骨筋を鍛えるのが先』とか言われているのを読むと、私も桐ヶ谷に是非とも見てもらいたいものだと思う。