【感想・ネタバレ】静かな大地のレビュー

あらすじ

短い繁栄の後で没落した先祖たちのことを小説にするのは、彼らの物語を聞いて育ったぼくの夢だった--明治初年、淡路島から北海道の静内に入植した宗形三郎と志郎。牧場を開いた宗形兄弟と、アイヌの人々の努力と敗退をえがく壮大な叙事詩。著者自身の先祖の物語であり、同時に日本の近代が捨てた価値観を複眼でみつめる、構想10年の歴史小説。第3回親鸞賞受賞作。〔解説・高橋源一郎〕

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Posted by ブクログ

ネタバレ

北海道ツーリング中に読んだ一冊。
内地を追われた侍による、アイヌ迫害・馬やジャガイモを使った開墾の歴史が伺える。

熊送りは北方民族資料館(網走)によれば北方民族共通の習慣だという。

足るを知っていたアイヌの生活の基盤を和人が奪っていく中、アイヌへの憧れから彼らとの共存、むしろ飢饉時にジャガイモをアイヌに配るなど、和人を裏切る側にたち、力尽きて妻子を追ってアイヌ装束で自害した一人の才人の物語。

幕府の近視眼的な政策(奴隷ですら資産だったのに)やシャクシャインの乱での和人のだまし討ち、榎本武揚がオランダを模して独立しようとしたという解釈など、教科書からは知れない解釈も随所に。

文字を持たないながら独特の言葉を作り上げた文化の記録は貴重なんだろう。
目黒「静内」にまた行こうと思う。

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2017年09月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

幕末、明治から大正にかけて時代は巡るが、概要は明治における北海道、アイヌに関わった三郎の物語を姪である由良が語るというもの。内容は非常に美しく、儚い。物語は複数の語り部が存在しており、章ごとに異なる。そのため、語り部の感情が物語へ反映されることとなっている。
史実を取り入れたフィクション、となっているのが特徴で、北海道開拓やアイヌの歴史、考えなどが様々に取り込まれている。その中を物語の主人公である三郎が駆け抜けていく姿は非常に心地よい。だが、常にどこか暗い何かが物語を覆っているのは、その後のアイヌ、そして三郎に何らかの不幸が訪れることが語り部は知っており、読者も感じているからだろう
物語は語り部を通してとなるので、読みやすい。だが三郎の気持ちが終盤から語られず、第三者からみた三郎の姿のみが語られている。それが非常に痛々しく、読み進めるのが辛くなってくる
アイヌ文化、歴史については、ここで記するのはやめておくが、日本とは、日本人とは一体何かということも考えさせられたとだけ記す。これは別の本を読みながら考えていこうと思う

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2017年11月12日

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