【感想・ネタバレ】聖職の碑のレビュー

あらすじ

伊那駒ケ岳稜線上に聳え立つ遭難記念碑は何を語るか……大正2年8月26日、伊那駒ケ岳登山中の中箕輪尋常高等小学校生徒ら37名は、突如襲った台風に遭難、11名の死者を出した。信濃教育界に台頭する理想主義教育と実践主義教育との狭間に、深い哀しみと問題を残した惨劇の実相を著者自ら登攀取材した長篇小説。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

大正三年におきた中箕輪尋常高等小学校の修学登山事故を洗い直し、新田次郎の手によってドキュメンタリー風に書き出された山岳小説である。
初版は昭和五十一年。構成は三部立てとなっており、第一章は登山という行事がどのような教育理念の下に行われるのかを当時の状況を以って示し、第二章で事故のあらましがドキュメント風に描かれる。最後の第三章では、事故後の人々の対応と、現代まで登山行事が長野で行われる理由が明かされている。

本書にあるように、私の母校も戦後から毎年修学登山を行っており、私自身も経験していたが、まさかこのような背景があるとは知らず、もっと早く知っておけばよかったと思った。
山国である信州において、山の体験を学習の場と考えるのは赤羽校長のみならず、現在の教育現場も同様であるように思える。彼らの理念を引き継ぎ、どの学校もいまだに実行し続けていることはすばらしいと思う。しかし、その志は果たして子どもたちに伝わっているだろうか。(私自身はしんどいとしか思わなかった。)
さらに言えば、この理念を貫いた結果、誰が幸せになっただろう。長い目で見れば、という声はもちろんあるだろう。だが、赤羽校長や清水・有賀先生等の意思に感動する方があれば問いたい。教育者の妻として責任を問われ続けた赤羽つぎの道を、自分の妻に歩ませる神経を持ち合わせているか。唐沢可作の枷をはずす手立てはあるのか。
私には、そんな覚悟はない。

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2012年02月20日

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