【感想・ネタバレ】FUTONのレビュー

あらすじ

日系の学生エミを追いかけて、東京で行われた学会に出席した花袋研究家のデイブ・マッコーリー。エミの祖父の店「ラブウェイ・鶉町店」で待ち伏せするうちに、曾祖父のウメキチを介護する画家のイズミと知り合う。彼女はウメキチの体験を絵にできるのか。近代日本の百年を凝縮した、ユーモア溢れる長編小説。付録として、田山花袋作『蒲団』(青空文庫)を収録した。

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Posted by ブクログ

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これがデビュー作だとは!中島京子恐るべし。
花袋の「蒲団」と対をなす「蒲団の打ち直し」(デイブ・マッコーリー)が実に秀逸である。作中作と主人公をめぐるよしなしごとをラップさせての進行が良い。何より,複層構造とした本作の中で核となる東京大空襲や第二次世界大戦にまつわるウメキチの話が何ともせつなくって,良いね。文句なし!

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2011年12月07日

Posted by ブクログ

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自然主義文学の「布団」を本歌として、その妻の心情を描いている。それを布団の打ち直しと言っている。洒落ている。

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2015年12月15日

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ネタバレ

友人に勧められて。ゼミで『蒲団』を扱ったのでパロディを十分味わえた。

「蒲団の打ち直し」というタイトル付けが見事。ストーリーの改変、時雄が焦がれた蒲団の再利用、二つを掛け合わせるプロット構成に思わずニヤリ。ウメキチの若い頃のエピソードでは『白痴』も意識してると思えてさらにニヤリ。主人公の戸惑いぶりも読んでいて微笑ましい。

原作の『蒲団』では妻目線での語りがない。だから、妻からの視点で『蒲団』というテクストを読めるのは新鮮。さらに『蒲団』のあらすじも分かってしまう。なので、一粒で二度美味しい作品になってる。

『蒲団』と現代とのリンクが感じられて、「文学史が今に続いてる!」と謎の感動。作品はそれ一つで閉じたものなのではなく、他の作品にも関わると歴史の中で活き活きしたものになるんだなー、と同時代間を感じられる。
最後の911テロの報道場面はやや唐突で、何だか浮いてる印象。けれど、全体的に『蒲団』への愛情がにじみ出ている傑作。自然主義文学を読んだら是非これも。

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2013年03月20日

Posted by ブクログ

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田山花袋の「布団」いつだったか、もう40年くらい前に読んでると思うのだが、ほとんど記憶なし。本作はその「布団」をリスペクトして書かれた長編小説。

現代を生きるアメリカ人日本文学研究者、寿命尽きんとしている90代老人の戦中時代、新解釈「布団のうちなおし」に出てくる本家「布団」の主人公でもある幸雄。この3人の中年男が実に情けない。その情けなさが腹立たしい。

腹立たしい思いは、おそらく今その歳になっている俺だからこそ。自分の中に彼ら的な情けなさを飼っているのが分かるからなんやけど…。

なんぼ自分が若いつもりでも、最近の若モンより立派な男やと勘違いしてても、実は全然大したことないって客観的に認めないと…。

若い女性、いやどの世代の異性でも、いやいやどこのだれであっても、勘違い甚だしいおっさんの姿は、見苦しくて滑稽で哀れみを感じるもんなんだということ。

俺も哀れな中年じじい。せめて勘違いだけは少なめにしときたいもんである。

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2021年05月04日

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