あらすじ
《海は暗く深い女たちの血にみちている。私は身体の一部として海を感じている。……》 年上の男子生徒とのセックスの体験を鋭利な感覚で捉えて、身体の芯が震える程の鮮烈な感銘を与えた秀作。作家の出発を告げた群像新人賞受賞「海を感じる時」と、大学生となった、その後の性意識と体験を描き深めた野間文芸新人賞「水平線上にて」。力作2篇収録。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
『海を感じる時』 一回目(2021/12/09)
くだらないことをしたことがないからわからない
という母の言葉は先に死んでしまった父への憎しみや愛が行く先がないがゆえに、証明ができないがゆえにどす黒いものになってしまった、そこから生まれた言葉に思えた。自分の言葉で自分を正し、証明し、守ろうとしているように捉えた。
自分の純潔さは娘にも求めるものとなる。なんたってあの人と自分の子供であり、何より娘の不出来は自分にも影響があるから。
父が死んでから起こった親族とのいざこざで父に対する生前の愛は濁ったのだと思う。恨んでも何処にも吐口がないならそれはその血を持つ娘に行くのだろう。
もう死んでしまった人に対し愛情があったかも分からない。先に死にやがってって気持ちだって湧いてくる。自分で自分を守ることが正当にできない女ゆえの抵抗に苦しさを覚えた。強く、世間的に正しいとされるルートを辿るには難しいことが多い。
固執し続けるのはとても気持ちが悪いが分からなくもないから痛々しく思う。