あらすじ
類縁原理の直観的認識を方法論に生物社会の構成原理を《棲み分け》にみる今西生物学の「棲み分け理論」、ダーウィン来の自然淘汰説を越える独自の進化論の構想を、思想的自画像風に描くユニークな文化論。科学文明の危機に際し生態学への関心が強い折、その基本書としても必読。
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Posted by ブクログ
機械論的ダーウィン進化論に対して新たな視角を提供した著者の論理展開は、読んでいて非常に良い頭の体操となるものであった。同時に、人間の審美眼をくすぐるような蝶の美しさや貝殻の模様の微細さ等、目的論的に捉えないで自然淘汰の論法に一辺倒した場合には、ナンセンスとなりうる事象が、今日の自然科学では垣間見ることができるのも事実だと感じた。
社会科学に携わることが今後多いだろうと思われる自分にとって、構造的解釈に囚われすぎずに目的論的解釈の意義を見直す余地が生まれたことは大きな収穫であったと言ってよいだろう。
Posted by ブクログ
単なる生物学の本というより哲学の本として読んでいました。この世界にあるもの全てが違っていて、全てがどこか似通っている。世界のつながりを考えさせてくれる本です。
Posted by ブクログ
久しぶりに「生物学」関係の本を手にとってみました。著者は「棲み分け理論」で有名な今西錦司氏です。
現在では、本書で提唱されている今西氏の棲み分け理論や生態学的進化論は広く支持されている学説ではないとのことですが、生物社会学ともいうべき科学哲学的著作としてはユニークで、なかなか興味深いものではありました。
加えて、「序」にて語られる今西氏の本書執筆への思いは特に印象に残ります。それは、拡大する戦火を前に、いつ果てるとも知らぬ自らの足跡の今を書き留めておきたいとの強烈な意志でした。
Posted by ブクログ
★3.5。
ただ戦前に書かれた奇跡に敬意を表して★4つ。
解説にて哲学云々と解説されているように、生物学の話というよりは科学者としての立ち位置・決意表明と理解すべきだろう。
そうであれば時代が古い云々という議論はナンセンス、科学的態度の本質というものは今も昔も何も変わらない。
この本は間違いなく一級品、★が5つでは無い理由は単純に当方の理解力不足によりこの本に完全には追いつけない、ただそれだけです。