あらすじ
AIが人の仕事を作る世界。
超高速で拡大する「ギグワーク」の最暗部をえぐる渾身のルポルタージュ。
Amazon、Google、Microsoft、Uber。
大企業が提供する自動化(オートメーション)された
サービスの裏側に潜む、数えきれない「見えない労働者」の
存在と実情とは。
【文化人類学者×コンピューター社会学者】
が新しい局面へと突入した、「労働」の変化をリアルに伝える。
アメリカ人の推定8パーセントが「ゴーストワーク」で少なくとも一度は働いたことが
あり、その数はますます増え続けている。
彼らは通常、これまでの「仕事」において法で定められている最低収入よりも少なく、
健康上の利点はなく、理由を問わずいつでも解雇されてしまう。この種の「仕事」を管理
する労働法はまだなく、これらの末日の組立ラインは、驚くほど多様な範囲の労働者を引
き込んでいる――お金に急いている若いシングルマザー、早期退職を余儀なくされた専門
家、就職に失敗したものたち。彼らは過労と過少賃金に日々苦しんでいる。
情報化が進み機械化が進むにつれて増大が予想される「見えない労働者」をどう考える
か。雇用主、労働者、そして社会がこの新しい種類の仕事とそれに携わる人々についてで
きることとは何か。
【目次】
序 機械の中の幽霊
第1部:自動化のラストマイルのパラドックス
第1章:ループ(作業工程)の中の人間たち
第2章:出来高払いの仕事からアウトソーシングへ
――自動化のラストマイルの略史
第2部:苛酷な仕事
第3章:アルゴリズムの残虐とゴーストワークの隠れたコスト
第4章:お金(以上のもの)のために熱心に働く
第3部:ロボットにやり返す
第5章:見ず知らずの人の優しさと協同の力
第6章:ダブルボトムライン
結論:目下の課題
謝辞
方法に関する付録
註一覧
解説:彼らは幽霊じゃない 成田悠輔
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
拡張されたサービスの背後で行われるヒューマンコンビュテーション、コンピュータの処理を補う機械的な仕事。収入は少なく、いつでも解雇され、法に守られない、見えない労働者。アルゴリズムにより無慈悲に切り捨てられる末端ではなく、人間的な協働
AIができるようになったらゴーストワークが減るのではなく、また新たなゴーストワークが生まれる。人間の労働そのものがゴーストワーク化していくように思いました。
Posted by ブクログ
AIが人の仕事を奪っていくのではないかという話はかなり以前からされていたが、どんなにAIが発達しても、ラストマイルは人が補完しなければならないということを知って驚いた。しかし、それは現時点では喜ぶべきことではなく、進行形でゴーストワークという形で断片的な作業を格安の賃金で引き受けてくれている人達の労働によって成り立っているのだということも知らなかった。そしてそれは将来、おそらく他人ごとではない話になる。解決案はいくつか示されているが、まだ現実的なものとは言えない。今は事実を認識し、他人ごとではないこととして自分も考え続ける必要がある。
Posted by ブクログ
編集中
本書に関しては成田先生のTwitterで紹介されていたのを見て、購読するに至った。
私自身システムエンジニアとして働いている身でAIについては一般の方よりは多少詳しいと自負していたが、アメリカやインドでの実像については本書でかなり勉強になった。
思想としては社会学的な要素が多く、解決策として協同することの意義を推している印象を感じた。
私個人としてはオンデマンドワークの良いところには目がいっていたが、生活基盤的な補償の観点は大きく見過ごしていたと理解した。
これからの働き方にはオンデマンドワークは必要になってくることは世の中の少子高齢化や格差社会などの流れ的にも想像できそうだと感じた。
本書で提示された解決策はその前に語られているフィールドワークによるワーカーの事例に基づいて提案されており、現在の課題の洗い出しとその対応策としての理想として面白く感じる。
本書でも事実として解決策のような手を打つプラットフォーム企業や人はいないといっており、本当にこれからの課題なのがわかる。
そういう意味では、日本も何年か後にぶち当たる課題かもしれないし、日本的文化がそれを阻むのかもしれないと考えさせられた。
この本で成田先生が書いている解説の通り、AIは人と共同でき、AIが仕事を奪うという勘違いをする人間こそ真の敵であるという考えには同意する。
そして、暗黒面への課題を一般化する意味でも本書は良書であると私は感じました。
ただ、読む人を選ぶ気もするし、好みも分かれそうな気がする…
Posted by ブクログ
いわゆるギグワーカーの実態を書いた本。自動化のラストマイルのパラドックスという提唱が印象的。テック企業のギグワーカーの取材が多めだが、他の業界にも通ずるとろこがあり、現代のテックがもたらす深刻な格差社会の拡大の一因となっているギグワーカーへの関心を集めるという点では素晴らしい本だ。