あらすじ
本土よりもずっと早く<観光>を主要産業化せざるをえなかった戦後沖縄。観光研究としては、従来分かりやすい沖縄イメージを用いた表象研究が多いなか、新たに風俗産業資料等を数多く発掘し光を当て、1972年沖縄返還と75年沖縄海洋博前後からの風俗観光産業に従事する経営者や特に女性従事者の「本音」を資料に語らせつつ、本土やアメリカへの迎合と従属への反発や抵抗をリアルに読み解く、戦後沖縄研究の新境地。図版多数。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
【海の青さと深い闇】
本土から沖縄を訪れる観光客は年間七百万人。リピーターは八割超。米軍基地問題を知らない人はこの中にはほとんど居ないだろうが、しかしそれが問題だと認められない、解決すべきものと認識されない、この認知のねじれが基地問題の難しいところである。
本書では観光が基地問題を不可視化する作用が説明されている。少女暴行事件で揺れていた時期に「癒しの島」イメージが成立していた点や港川外人住宅街「レトロアメリカン」イメージをあげ、沖縄イメージと基地問題が切り離され、都合良く消費されてきた点を指摘している。この観光客と観光地による共犯関係が基地問題解決への大きな障害であるが、観光地が魅力的なほど共犯関係が強まるだろう点がさらに厄介で、観光の隆盛も単純には喜べない。
沖縄観光をめぐる視点の変遷がダイナミックで面白かったが、だがその経緯を見ると他の選択肢が無く観光に期待するしかなかった立場の弱さが伺われる。性消費される女性と観光消費される沖縄の対比という切り口もあり、本土男性の私にはもやもやした読後感が残った。後ろめたさなく観光を楽しめる世の中に早く変えたいと思う。(ササキ@本土に沖縄の米軍基地を引き取る福岡の会)